4.雪のないスキー場にて
見知ったスキー場で、リフトは稼働しているのだが、季節は春だった。
私は下りのリフトに乗る。
それはリフトではなくアトラクションである。
降りるときは座席ごとラインから落下する。
地面にドサリと落ちるのを楽しむのだ。
私は終点間際を狙って落下した。
◇
地面に降り立った私が横からそのアトラクションを見ていると、落下できない人がリフトの終点に溜まりはじめた。
これではリフトに乗って再度上ることができない。
「歩くしかないか」
といって私と弟は斜面を上り始めた。
顔を上げるたびに、季節は草木の芽吹く春と、雪景色の冬を行き来した。
急な斜面に差し掛かった。
思いのほか角度がきつく、踏ん張っても滑り落ちそうだったので、私は木の枝をつかんで上った。
上の弟は私より先に行き、下の弟は私の少し下にいた。
私は休憩したい気持ちを抑え、下の弟に抜かれないために黙々と上った。
木の枝は腕ほどの太さがあったが、よくしなり、折れそうだった。
しなるなあ、と思った瞬間、枝はよりしなるようになった。
私の上体は斜面に背中がつくほど仰け反った。
そして、木が根から引き抜かれ、私は坂の下へ転落した。
下の弟にぶつかると思い、私は焦った。
そこで、目が覚めた。