3.道霞・刀鹿・矢残りの森
私は車のトランクに入り、町に潜入した。
ファミレスのトイレで大学の教授に会い、依頼を受けるが、すでに追手がトイレのドアの前に迫っていた。
私は教授に肩車してもらい、トイレの窓から外に出た。
◇
私は森の中をゆく集団の一員に加わった。
けもの道を進むが、後ろを振り返ると小道ができている。
「みちがすみだ」
と私が言った。
道霞は通った人を感知して道の幻影をつくるのだ、と私は知っていた。
道の幻影に迷わぬように進むと、一匹の鹿に出会った。
鹿と我々はすぐに仲良くなり、鹿の案内で村にたどり着いた。
しかし、鹿は最後の最後に道霞にのまれて見えなくなった。
村人は我々を歓迎してもてなした。
その村は、道に迷った人間たちと道霞の連鎖によって肥大化した幻影の村だった。
私の受けた依頼は、この村人を救出することだったのだ。
◇
私はずっと鹿が気になり、村と森の境界を歩いていた。
そして、人の目には見えなくなっていた鹿を見つけた。
私が駆け寄り手を伸ばすと、見えないバリアが砕け、鹿が戻ってきた。
私は鹿を抱きしめた。
「それは刀鹿ですな」
と村人の誰かが言った。
そうか、ここは矢残りの森。
鉄を通さない森なのだ。
すなわち、刀鹿はここから出られないのだ。
と私は瞬時に理解した。
ああ、かわいそうな刀鹿。
そこで、目が覚めた。