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~Before the chapter5~
雨は再び強くなった。
明るくなり始めていた空に、影が覆いかぶさる。
見上げる空は黒く染まり、ただ雨粒を降らせ続けている。
バシャ‼
どこかで車が水溜りの水を跳ね上げた。
その水は道端にある電柱を濡らした。
運転手は思った。
「良かった。そこに誰もいなくて」と。
車は再び走り出す。
雨は依然として強い。
黒く染まった空に、色の濃淡はない。
ただ黒く、ただ重く広がるのみだ。
バシャ‼
どこかで車が水溜りの水を跳ね上げた。
その水は雨の中、傘も持たずに走っていた少年を濡らした。
運転手は気付かなかった。
そこに少年がいたことに。
車は再び走り出し、
少年はただ走り続ける。