幕間 8
最近、何だか面白くない。
おばあちゃんは、あたしの相手をしてくれなくなった。
毎日どこかに出掛けたり、人と会ったり、部屋にこもって書き物をしたりと、何だか忙しそう。黒い服を着た男の人たちも、よく家に来るようになった。おばあちゃんは、あの人達を『ドウシ』と呼んでいる。
あたしは、あの人たちが嫌いだ。
調子のいいことばかり言ってるけど、目は全然笑ってないし――何を考えてるか、わからない。
何より腹が立つのが、おばあちゃんを『グランマ』って呼ぶこと。最初はちゃんと『ミセス・スチュワート』って呼んでたのに……。
なれなれしく、呼ぶな。
おばあちゃん(グランマ)は、あたしのおばあちゃん(グランマ)なんだ。
お前らのモノじゃない。
それなのに。
最近は、家の前の浜辺で海を見ていることが多い。海は好きだ。見ていると、心が休まる。この辺は工場ばっかりで遊べる所が少ないし――そもそも、一緒に遊ぶ友達がいない。
あたしは、一人だ。
首のロザリオを外し、目の前に掲げる。
ママが残した、唯一の形見だ。ママが、パパが生きていたら――こんな思いしなくて済んだのに。
本国の友達に会いたい。
ポリーに会いたい。
隙間を、埋めたい。
だけど、どうすることもできない。
あたしは潮騒に耳を傾けながら、浜辺で一人、膝を抱えていた。