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聖剣~プロローグ~  作者: 霜月音闇
9/20

英雄化

「にゃはっ」

 振り下ろす右爪の一撃が、スカルのヘルム表面をバターのように削り取った。

「っ」

 火花に赤い目を細め、右手にもった剣を振り抜く。その攻撃を紙一重でよけ、ワータイガーは距離をとった。

「うむ、英雄はそうでなくてはな」

 剣を振り下ろし、スカルは微かに笑った。

「おっさんも英雄にゃろ? さっさと、剣を抜けよ」

「?」

 困惑するスフィアを尻目にスカルは左手に剣を持つ。

「お前にはこれで十分だ」

「っ! 舐・め・る……にゃ!」

 地面を抉り飛ばし、ワータイガーは打ち出された玉の様にスカル目掛けて飛び出した。撃ち込まれる一撃を察知したスカルは剣を胸の前に構える。

 一撃。

 構えた剣を貫き、ワータイガーの拳がスカルの胸に突き刺さった。

 砕けて飛び散る剣の破片の向こうでスカルの赤い目が鈍く光る。

「再教育だ」

 その言葉の直後、ワータイガーは地面に叩きつけられた。自由になっていたスカルの右腕が無防備になっていたワータイガーの頭に降りおろされたのだ。

「にゃっ!」

 左手に掴んでいた剣の柄を投げ捨て、地に伏せるワータイガーの襟を掴み持ち上げる。そして、無言でワータイガーの顔を殴り飛ばした。

「にゃあ!」

 後頭部を地面に打ち付けたが、すぐに体勢を立て直し、両手両足で地面を捉える。滴る鼻血が地面に赤い点を作る。

「にゃぁ、にゃぁ、やってくれたにゃあ」

「だから、どうした?」

「殺す!」

 その瞬間、マナが殺気立つ。

「頭を下げろ!」

 スカルがスフィアに大声で指示を飛ばすと、反射的にスフィアはその指示に従った。

 次の瞬間、スフィアの頭をかすめて光の矢がワータイガーの肩に突き刺さった。

「にゃぁ?」

 何が起きたか分からず、一瞬間の抜けた声を出したが、すぐに激痛で我に帰る。

「にゃぁああああああああ!」

 肩を押さえ、もがき苦しむワータイガーを蹴り飛ばし、スカルはスフィアに言った。

「Jの後を追え」

「え?」

「奴は帝国軍を皆殺す。自分の手で奪い返したかったら、早く行け。お前は街を守る、英雄のはずだ」

 スフィアは唇を固く結び、古城の方へ走り出した。

「そう、英雄だ、お前もな」

 そう言ってスカルはワータイガーの方に向き変える。

 マナがざわめき、大気が揺れる。

 ワータイガーの聖剣が鈍く輝き、周囲にマナが溢れる。

「ぐ、ぐるるるるるるる」

 低く唸る声が地面を這い、マナがワータイガーを包み込んで変貌させていく。

 より、虎の姿へ。

 刹那。

 ワータイガーの姿が消え、スカルの脇腹に亀裂が走る。咄嗟に振り返ると、そこには六割が虎に変わった半人の獣が聖剣を口にくわえて、緑色に輝く目でスカルを睨みつけていた。

「英雄化か。逃がしちゃ、くれなそうだな」


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