私とわたしと自分
昔、私は絶望に囚われた。
私が自分であるという確信を失ってしまった。
現実には自分は何も失っていない。しかし、その確信を失った私は多くのモノを失った。
自分が私でなくなったら、私は自分の全てを失ってしまう。
自分の記憶が私のモノなのか疑わしい。
思い出し難いが確かに記憶はある。だけど、それは私の妄想ではないのか? 大切なはずの思い出がぼやけてよくみえない。
現実は何事もない。でも、心はバラバラ。
私は何も言わないから誰も気付かない。
言ったところで誰にもどうすることもできない。
心を病んだのではなく、壊れたのだから。自分以外に修理は出来ない。
誰かに任せたら私は自分に戻れなくなってしまう。だから私は誰かに相談することを許されていなかった。
私はどうしても自分に戻りたかったのだ。
新しい自分で私になればいい……というわけにもいかない。私は自分という肝心なところが壊れているのだから。
数年かけても修理は出来なかった。でも、かわりに”私はわたし”を作り上げることが出来た。
自分にある記憶でわたしを組み立てた。これにより、私は絶望から抜け出すことが出来た。
更に数年、わたしは修理を続けた。そして直った。
私には出来なかったけど、わたしには修理出来たのだ。
私は自分で、私はわたし、そしてわたしも自分。
私は自分に戻り、数年を経て今に至る。
時間をかけすぎてしまった……。
でも、だからこその今がある。今ある日々には、私の心を満たすものがある。
だから……これでよかったのだ。
楽しい時間を生きよう!