眠り
私は眠ることが好きです。
でも、少し昔は眠ることが怖かった。
眠ると意識の連続が途切れてしまう。
次に目が覚めたとき、眠る前に頑張ったことも、何もかも忘れてしまうのではないかと怯えた。
私が私であることを忘れてしまえば、それは私の死です。
普通ならそんなことはありえないと思うだろう。けれどあの頃は違った。
私は私を否定したかったわけじゃない。その逆だ……私は私で自分でありたかった。
曖昧になってしまう私を繋ぎ止めておくことに必死だった。
眠るのが怖くても眠らなければ生活に支障が出てしまう。眠っても曖昧な私は役立たずだけど。
屈辱だった。認め難いことだった。出来るはずなのに出来ない。悔しいから頑張った。
でも、眠ったら忘れてしまうかもしれない。
忘れてしまったら頑張ったその日の私はどうなる?
それよりも、その日の私とその前の日の私は同じ私なのか?
私が私であることを証明できる人は誰もいない。
精神的に一人というのはなかなか大変だ。
幸い、私は私を完全に忘れることは無かった。
今の私も、少し前の私も、それより前の私も、わたしの答えを持っている。
その答えは”自分だと思っているそれが私”単純なものです。
でも、大事なものです。それを失くしてしまった私は間抜けだった。
そのおかげで得たものは色々あった気もするけど。
少し前までの私は精神的に一人が当たり前で”それを望んでいた”。今の私と一番大きな違いはこれだ。
私はきっと弱くなった。でも、今の方がいいと思う。今の方がずっと楽しいし、生きてる気がする!
生きている気がする……死ぬことに恐怖心を感じるようになった理由の一つなのか?
今の私を続けていたいけど、現実は許さないだろう。きっといつか終わりが来てしまう。
今の私の日々を大切にしよう。望む時間を。
眠ると忘れたくない記憶も薄れてしまう。それはきっと私の夢に記憶を預けたからだろう。失くしたわけじゃない。
あの頃は記憶が薄れるだけで、私が消えてしまいそうだった。今よりもずっと弱かった……弱っていた。今はもう遠い日だ。
願わくば大切な日々が続きますように。