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その女の目は赤かった、

作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
掲載日:2026/08/05

静寂、予兆、そして突如訪れる恐怖——。

今回は、蒸し暑い夏の日に潜む、少し不気味で不可解な体験を描いた短編をお届けします。

日常がふっと揺らぎ、未知の恐怖へと引きずり込まれる感覚を、どうぞ音や気配と共にお楽しみください。

セミの合唱がぴたりと止んだ。蒸し暑い熱気の中、静寂だけが耳に痛い。

シュル、シュル。風もないのに、庭の風鈴が不気味な音を立てて揺れた。金属の擦れ合う音は次第に甲高く響き、頭蓋骨を直接揺らすような雑音へと変わっていく。男が耳を塞いで蹲ると、背後から冷たい気配が立ちこめた。

ゆっくりと振り向くと、そこには夕闇に紛れて佇む女の影があった。暗がりの中で、こちらをじっと見つめる二つの光。

その女の目は赤かった。

女が血のような真っ赤な唇を開いた瞬間、耳を裂くような巨大な虫の羽音が部屋中に響き渡り、男の意識は黒い波の中に呑まれていった。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

蒸し暑い夏の日、ふとした瞬間に日常が歪むような怖さを感じていただけたでしょうか。

目に見えない気配や音の違和感は、もしかするとあなたのすぐ後ろにも潜んでいるかもしれません。

少しでもひやりとする涼をお届けできたなら幸いです。

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