アビス・トリガー(Abyss Trigger)〜内藤メアは悪夢憑き〜
五年前――理由もなく眠り続け、二度と目覚めない者が増え始めた。
医学でも心理学でも説明のつかないその症状は“睡眠不全症”と呼ばれ、人々の生活を静かに、しかし確実に蝕んでいった。
国は対策として〈SOMNI〉を導入した。
腕に巻くだけで睡眠状態を監視し、異常があれば自動で対処する――そう説明された装置だ。
真相は誰も知らない。それでも、SOMNIが全国民に義務化されてから、眠ったまま帰らない人間は嘘のように減った。
……それでも、わたしの不安は消えなかった。
内藤メア。
普通の高校生。
普通の教室で、普通の毎日を過ごしている……はずだった。
けれど、わたしには“夜”だけが異常に長い。目を閉じるたび、胸の奥で何かがざわつく。暗闇の奥で、誰かがわたしを呼んでいる気さえする。
SOMNIの黒い画面に触れると、時々、脈のように光が瞬いた。
その光は、まるでわたしに「もうすぐだ」と告げているようだった。
ある夜、白い閃光が視界を覆い、わたしは“黒い森”へ落ちた。
そこには、形の壊れた化物が蠢いていた。
逃げられない死の気配――その瞬間、ひとりの青年がわたしを抱き寄せ、影を断ち切った。
「戻れ。長くいたら、夢に喰われる」
名前も知らない青年。
でも、その瞳を見たとき、胸の奥がひどく痛んだ。
思い出すはずのない誰かを、思い出しそうになった。
――わたしは、これから悪夢に堕ちていくのだろうか。
それとも、すでに始まっているのだろうか。
その時、SOMNIがまた脈打った。
黒い森の底で
2025/11/17 00:00
(改)
夢の声
2025/11/17 00:10
(改)
白昼のざわめきと、墜ちていく音
2025/11/17 01:00
(改)
黒の底
2025/11/20 10:34
(改)
罪悪感
2025/11/17 07:00
潜夢局
2025/11/17 07:30
理由
2025/11/17 08:00
(改)
悪夢の歩き方
2025/11/18 00:00
監視対象
2025/11/18 06:00
銀の墓場
2025/11/18 09:42
暖かいココアとバッティングセンター
2025/11/18 19:04
夕焼けと邂逅
2025/11/19 00:00
桎梏(しっこく)
2025/11/19 06:00
ヒカリの憂鬱
2025/11/20 00:00
微熱のようなざわめき
2025/11/20 06:00
侵食の始まり
2025/11/21 00:00
檻と蛇
2025/11/21 06:00