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第1話 妊娠⁉

私の名前は雛宮さゆり。

友達からは、よく「さゆ」って呼ばれている。


今年で16歳の高校1年生だ。


私は勉強が苦手で、運動もあまり得意じゃない。


好きなものは甘いお菓子、嫌いなものは面倒くさいこと。


普通な人っていうのは私みたいな人を指していると思う。


大した理想も、信念もない。楽に生きていきたいだけ。


もし親がお金持ちだったら、私は絶対にニートになっていたと思う。


でも、私は普通な人生が嫌いじゃない。


少なくとも私には自由がある。

目標がないのは今の生活に満足している証拠だと思う。


今日もいつも通り起きて、身を整えて、今は学校に向かっているところ。


……なんか、今日は妙に気分が悪い。


さっきも朝ごはんを食べる気にならなかった。

これ、何かの病気かな。


もしこれで午後の体育を休めたらいいのに。

でも体育の剛田先生は、生理の時ですら見学させてくれない人だから、おそらく無理だろう。


マジで死ねよ、あのクソ教師。

教育委員会とかに訴えてやたら、多分勝てる。

でも、面倒くさそうだな。


仕方ない。どうしても無理だったら、途中で帰ろう。


「さゆ、おはよう」


後ろから聞き慣れた声がした。振り返ると、そこには金髪パーマのギャルがいた。


「かれんか。おはよう」


天海かれん。私の親友だ。

親友と言っても、私にはかれん以外の友達がいない

けどね。

昔から私が仲良くできるのはかれんだけなんだよな。

まあ、その代わりに私とかれんはレズと勘違いされるほど仲がいい。


「なんか顔色悪いよ。大丈夫?」


「ちょっと気分が悪くて」


「気分が悪いなら休んだほうがいいよ。後でノート貸すから」


「ありがとう。多分大丈夫。本当に無理だったら休むよ」


「無理しないでね。何かあったら、いつでも私に言っていいよ」


「うん、ありがとう」


かれんは基本的に優しいから、頼めばなんでも聞いてくれる。

ガキの頃からの付き合いだけど、私は昔から依存体質だから、ついかれんに頼りがちなんだよな。


かれんは見た目ギャルっぽいけど、真面目なので、成績かなりいい。

かれんが勉強を教えてくれなかったら、おそらく同じ高校に入れなかったと思う。


そして、かれんは絶対に私が言ったことを別の人に言ったりはしないから、何でも相談できる。


あと、かれんは料理が得意で、いつも手作りのお菓子とかくれる。


まじでかれんだけが私の唯一の癒やし。

私はかれんに会うために学校に行ってると言っても過言ではない。


「かれんって、いつ見てもかわいいな」

さゆりはかれんの腕に抱きついて、こう言った。


「それ、毎日言ってるんだよな」


「だって、本当にかわいいんだもん」


「ありがとう、さゆもとてもかわいいよ」


かれんを見てるだけで、なんか体調が良くなった気がします。


暇話をしながら、私たちは学校へ向かった。


―――――


「ダメだ、全然授業が頭に入ってこない」

……まあ、普段も同じだけど。


「やっぱり休んだほうがいいって、しかもよりによって、保健室の先生今日休みなんて」


「休んだら、お母さんに怒られるかもしれない」


「さすがにそこまで鬼じゃないと思うけど、どうしても心配だったら、お医者さんに診断書を書いてもらえばいいじゃん。無理するのは良くないよ。」


「確かに無理するのは良くないよな……分かった、帰る」


「うん、。先生には私が伝えておくから、さゆはこのまま帰っていいよ。」


「ごめん、ありがとう。」


かれんお礼を言って、私はひとまず学校近くにある病院に行くことにした。


ーーーーーー


「先生、何の病気なんですか」


病院で検査受けた後、私は先生にこう尋ねた。


「おそらく妊娠ですね」


「……は?」


「すでに八週ほどでしょう」


……は?


いきなり医者に、わけのわからないことを言われた。


「あの――」


「まあ、他人の私がどうこう言うべきじゃないが……。私も若い頃はたくさん過ちを犯して、色々失敗してきた。だから若い時のことは仕方ないと思うよ」


「いや、あの――」


「これからは辛いことも多いだろうが、歳を取って振り返ればきっと良い思い出になる。まずは冷静になって、親御さんや彼氏さんと相談して決めるといい」


……いやいやいや。

彼氏なんて今まで一度もできたことないんですけど。


どういうこと?

私が妊娠? ありえない。

今まで男と手をつないだことすらないのに。


でも、医者の顔も話す口調もめちゃくちゃ真剣で、嘘をついているようには見えない。


どういうこと?


想像妊娠? 催眠?

それとも、知らないうちに薬でも盛られた?


そういえば、隣の席の中本がいつもいやらしい目で胸とか太ももとか見てくる。

最悪。催眠だったら絶対アイツだろ。


あんなキモいデブの子を孕むくらいなら、死んだほうがまだマシだ。


……待て、落ち着け。

催眠なんてあるはずがない。まだ「薬を盛られた」ほうが現実的だ。


でも、私が二人っきりになる相手なんてかれんしかいない。


薬盛られるなんてありえないと思う。


じゃ、なんでこんなことになったの?


さゆりは完全にパニックになって、先生からのなんとなく返事して、病院をあとにした。

ーーーーーー

気づいたら、私は家近くの公園にいた。


私のお母さんはとても厳しい人で、己の価値観を子供に押し付けることを悪だと思わない人だから。


妊娠のことお母さんに言ったら、どうなるのか、想像すらしたくない。


絶対面倒くさいことになる。


ひょっとしたら殴られるかもしれない。


ここから私はどうしたらいいんだろう。



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