そして3週目へ①
見慣れた天井を眺めながら
「自衛隊に殺されても駄目なのかよ」
と一人でぼやく。
普通に朝起きるのと、タイムリープして起きるのは感覚が違う。
前日の自分と今日の自分が違う違和感がある。
こんな発見をしたのは多分俺だけだな。
なんて自嘲しながら身を起こす。
さぁ、どうしよう。
現実で現実逃避してみたが、現実に引き戻された。
半年経つか、死ぬことでタイムリープするのが確定なら何でも出来る気がするが、そんなことよりゲーマーとしての魂が攻略しろと叫んでいる。
つい先日まで可愛い彼女たちに囲まれて最高の思いをしたのだ。これから出るマンガもゲームもほとんど読んでるし、やっている。
つまり、興味のあるやりたいことはもうない。暇だ。
暇だから、死にに行こう。
どのみち何度も死ぬのだ。
回数制限があるかもしれない。
それは絶望でもあり、希望だ。
やれるだけやろう。
トライ&エラーはゲーマーの基本だ。
さて、何をしよう。
1.戦う力を手に入れる。
とりあえず戦えないと何も始まらない。
2.情報を集める。
いつ、どこで、何が起きているのか知らないと対処が出来ない。
3.仲間を作る。
一人でどうにかなる問題ではない。
まぁ、分析するまでもなく分かっていた。
2週目でも色々なことがあった。
とりあえず全部手に入れられそうな自衛隊に入ってみよう。
2週目で謎の体験キャンペーンをコマーシャルでやっていたのだ。
もしかしたら1週目でもやってたかもしれない。
実銃が撃てる!なんて元の世界線では絶対にないイベントだ。
なんであれ実銃の経験は役に立つはずだ。
とりあえずコマーシャルを見にリビングへ行くか。
「あんたもう間に合わんよ」
母さんが呆れた声で迎えてくれた。
「今日は行く気がないから」
「学校には自分で電話しんさいね」
そう言って仕事の準備を始めた。
「いただきまーす」
用意された目玉焼きのせトーストにかぶりつく。
テレビから都合よくコマーシャルが始まる。
「自衛隊はキミの入隊をまっている!今なら体験入隊で実銃が打てるチャンス!体験は明日から!」
「ねぇ母さん、俺この体験入隊行ってみたいんだけど」
「あんたも?なんか父さんも興味もっとったよ。たまには仲良く行ってみんさい」
父さんが?あまりイメージにない。
「なんで父さんが?」
「知らんよぉ、自分で聞きんさいや。母さんもう行ってくるけーね」
バタバタと出ていく音がする。
まぁ、父さんも行きたいならアシの心配はなさそうだ。
バイクの免許を取らないと不便なことは2週目で味わっていた。
余裕があれば今回は免許を取っておきたい。
とりあえず今後のためにも筋トレだ。
筋肉は裏切らない。あれは嘘だった。
あんなに育ててやったのに、無情にもいなくなってしまった。
スタミナと筋肉は一日にしてならず。
基礎トレーニングだけで一日が終ってしまった。
そして晩御飯の時
「父さん、自衛隊の体験入隊キャンペーン行ってみたいんだけど」
「はぁ?お前学校は?」
「休んで行くよ。自衛隊の体験入隊するなら問題はないでしょ」
「あんな危険なところは駄目だ!」
「いやいや危険なわけないじゃん、それに父さんも行くんだろう?母さんから聞いたよ?」
チッと舌打ちしながら母さんを見る。
慌てて目を反らして台所へ消えていく母さん。
「はぁー。わかった。明日連れてってやる」
「本当!ありがとう!」
何とか了承も貰えたし、あとは家の流儀としてちゃんと連れていって貰う努力をするだけだな。
晩御飯を終えた後、今日のところはさっさとシャワーを浴びて就寝することにした。