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侵略される世界にて②

向かった先には大量のアリがいた。

さらに遠くには空高く飛ぶ何かが見える。

怖気が走る。


しかし、関係ない。やると決めたのだ。

とにかくまずは一匹。

最高難易度というからには、きっとレベルも大量に上がって楽になるに違いない。


遠くで爆発音も聞こえる。

自衛隊が戦っているのかもしれない。

弱った個体がいないか、バイクで爆発音のなる方へ慎重に向かう。

辺りをうかがっている時に、フッと影が降りた。

反射的に上を見ると、黒いアリが足をバタバタさせながら空を飛んでいた。

どうやら吹き飛ばされたようだ。

なぜか重力が働いてないかのように、少しゆっくりと吹き飛んでいる。

足が動いてることから、生きているのだろう。

逡巡したがチャンスだと判断し着地点とおぼしき場所へバイクを走らせる。


着地点には先に着いた。

バールを持ち軽く素振りをする。

この一振に半年かけて鍛えてきたのだ。

上を見るとゆっくりとこちらに落ちてくるアリが見える。

不思議と落ち着いており、集中出来ている。

落下してくる巨大なアリにあわせて大きく振りかぶる。

着地狩りに全てをかける!


アリが着地すると同時に、全力でバールを叩きつける。

「ガイーーーン」

金属同士がぶつかったような凄い音がなった。

アリは何もなかったかのようにあちこち動き始めた。

ダメだったか。バールでは役にたたないらしい。

痺れて腕が動かないが、襲われる前にバイクへ向かい、違う武器を調達しよう。

そう思いチラッと腕を見る。


信じられない角度で曲がっていた。

「うわぁーーーーー!!!」

激痛が走る。汗が吹き出す。

パニックになり、その場でへたりこんでしまった。

フッと影で暗くなり、顔をあげると黒いものが見えた瞬間に意識が途切れた。




目が覚めると知っている天井だった。

ガバッ!

飛び起きて自分の体を見る。

あれほど鍛えた体は、元の情けない腕に戻っており、足も頼りない太さになっている。

汗で気持ちが悪いので、とりあえず洗面所へ向かう。


「あれ?起きたんね。早いねぇ」

後ろから母さんが声をかけてくる。

「うん。調子悪くて、学校休む」

「ほんまじゃ。汗びっしょりじゃね」

本当はシャワーを浴びたいが、顔だけ洗いついでに体も拭く。

「そんなとこ親子で似んでもいいのに」

ぼやく声が聞こえてきた。


その後、まっすぐ部屋に戻った。

夢ではない。それは間違いない。

とりあえず腕立て伏せをしながら考える。

すぐに筋肉が悲鳴をあげる。

侵略者はアリだったのだ。

それも、家ほどもある巨大なアリだ。


バールでは駄目だった。

むしろ刃物だろうが、鈍器だろうがあんなサイズの生き物は無理ではないか?

必然的に重火器に意識が向く。

ここは平和な日本だ、簡単には手に入らない。

しかもハンドガンではあのサイズには意味がないだろう。


いや、そんなことより今のこの状況はなんだ。

これではループ系の話ではないか。

正解ルートを選ばない限り、延々と同じポイントから始まるアレだ。

そう考えてハッとする。


「困難ヲ乗リ越エラレル能力ヲプレゼント!」


たしか、あの時白い部屋で最後に聞いたのはそんな言葉だった。

まさか手に入れた能力って…

コンティニュー…?


いやいや、あの時見たアリは10匹程度ではないのだ。

ビル郡が蠢いてるかのようだった。

あんなのを一人でどうにか出来るわけがない。

何度繰り返しても、それだけ死ぬんだ。

やってられるか。



翌日から普通に学校へ通い、彼女を作り、デートをし、青春を謳歌した。

3ヶ月経った頃、彼女は3人になった。

自力でハーレムを作っているのだ。

中身は社会人なんだから、高校生なんて単純だ。

どうせ失敗しても、学校を辞めればいい。


そんな考えで3人と同時にデートして、ハーレム気分を味わっていた。

調子にのっていた俺は、学校でいきがった奴らに絡まれたが、何度か殴ればもう絡んで来なかった。

そうそう、転生俺ツエーってこんな感じだよな!

そう思い新たな青春を楽しんでいた。


しばらく経ち、4人目の彼女を口説き落とし、5人でパーティーをしている時にそれは起こった。


遠くで叫び声と爆発音が聞こえる。

窓へ近づき外を見ると、何度も夢にみた黒く蠢く姿が見える。

「ついに来たか」

音楽のボリュームを上げ、彼女たちと再びお楽しみだ。

外の声が聞こえないように。

忘れられるように。


そうしてしばらく楽しんでいると、突然家が爆発した。

映画で聞いたことのある戦車のキャタピラ音が聞こえてくる。

そして轟音。

それが最後の記憶だった。

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