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実は転移だったらしい②

部屋に戻り、まず教科書を開く。

今どこを勉強しているのかわからない。

遠い昔に見た記憶はある。

どこまでめくっても見覚えがある。

とりあえず数学の後半のページに取り組む。


数学なんて何年もやってないので、解き方を忘れていたが、教科書を見て思い出す。

確実にやったことがあると確信した。

ノートと照らし合わせてまだやってない範囲なことを確認して勉強道具をしまった。

部屋にあるマンガとゲームを一通りチェックして懐かしい気分を味わってから再びリビングへ向かった。


つけっぱなしのテレビから朝の情報バラエティーが流れている。

なんとなく眺めながら再び考えはじめる。

やはり経験しているのは事実だろう。

であれば、やはり転移して過去に戻ったのではないか?

それはタイムスリップな気もするが、ここが『侵略される世界』であれば転移なのだろう。

そもそも問題は転移かどうかではない。


あの夢が本当だったとするならば、ここは『最高難易度』の『侵略される世界』なのだ。

具体的には何も分からないが、ヤバそうなことだけは分かる。

対策出来ることとしては、体を鍛えることと、情報を集めることかな。

武器になりそうなものを探しておくことも大切かもしれない。


そして、侵略してくるモノは何だろう。

『侵略される世界』というからには地球の外からきて欲しい。

やはり宇宙人だろうか。

それならUFOで来るのか?

なんだか、個人の力ではどうしようも無さそうな気がする。


とりあえず体力は必要だろうと走り込みに行くことを決め、自衛隊のコマーシャルなんて珍しいモノを見ながら準備を済ませた。


外に出て春の日差しを感じた。

実家にはカレンダーがないので、今何月か分からない。

テレビで見てたかもしれないが、気にしていなかった。それどころではなかったのだ。

一応、ノートの進み具合でまだ3年生になったばかりであることは分かっている。

母さんの言葉から不登校な世界線にいないことも推測できる。


そんなことを考えながらジョギングを始める。

侵略されることを考えながら近所を走っていると色々と目につく。

バットのある家庭や工事現場の工具、ホームセンターもあった。

とりあえずバールの様なモノが真っ先に思い付き、そのままホームセンターに入る。

平日の昼間に高校生らしき若い男が入ってきたせいか、店員にジロジロと見られる。


そんな視線は気にもせずバールを求めてフラフラと歩き回る。

ヘルメットや安全靴などを見ながら歩いていると、目当てのモノを見つけた。

初めてバールを生で見て触れてみた。

こんなもので殴ったりすれば大概のモノは壊れるに違いない。

そう確信出来る手触りだった。

人生で触れたことのない暴力の気配を感じながら、金を持ってない事に気がついた。


電子決済に慣れきっていたので忘れていたが、そもそもまだ高校生の俺はスマホすら買って貰っていないのだ。

必要なものがたくさんあるなと思いながらホームセンターを後にする。


駐車場で車に乗れる事に気がついた。

免許は無いが技能はある。

ついでにバイクにも乗れた方が良いかもしれない。

そんな事を考えながら改めて街を見ると車とバイクに溢れている。

ただの乗り物が兵器に見えてくるから不思議だ。


ジョギングを終えて、むしろ短距離を鍛えるべきだったかと反省をしつつシャワーを浴びる。

しかし、何も起こらないな。

だいたいこういうのって準備する暇もなく襲撃されて何とか乗り越えながら強くなっていくものではないのか。


リビングでお茶を飲みながらテレビをつける。

夕方のニュースで芸能人のスキャンダルが流れている。

芸能界に詳しくないので、知識と照合が出来ない。

うーん。緊急ニュースも流れない。

やはり夢だったのではという気持ちが出てくる。


「ただいまー」

母さんの声が聞こえてきた。

パートを終えて帰ってきたようだ。

「おかえりー」

玄関まで出迎えてみる。

「なんよ?出迎えまでしてからに」

言葉のわりに嬉しそうな笑顔である。

「別にいいだろ」

と素っ気なく返しリビングに戻る。

そして母さんの顔を見て確信した。


やはりアレが夢のわけがない。

『侵略される世界』であることを前提に出来る事をやっていこう。

そう誓った。

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