真っ白な部屋 再び①
緑のディスクが光となって消えたかと思ったら、突然ファンファーレが鳴り響いた。
辺りを見回すと、いつぞやの真っ白な部屋だった。
今回はスロットも浮かんでおらず、本当に何もない、ただ白のみが存在する部屋だった。
境界のない世界に足元も不安になり、ぐっと足に力を込めながら
「説明してくれ!いるんだろう!?」
と叫んだ。
「説明します」
と後ろから声が聞こえた。
驚いて振り替えると、そこには美少女がいた。
彫刻のように整った顔。白のワンピースからのぞく、ワンピースよりも白い肌。
触れるだけで折れてしまいそうな儚い印象を与えるシルエット。
あまりの美しさに思わず見とれていると
「何の説明を求めますか?」
と聞いてきた。
何の説明?逆に難しい質問だ。全部教えて欲しい。
「全部教えてくれ」
考えている間に口から出ていた。
「承知しました。およそ2百年ほどかかりますがよろしいでしょうか?」
「まてまて、悪かった。よろしくない」
さて、どうしたものか…
「まず、そうだな…今なぜこの部屋にいる?」
「ハジメ様は目標を達成しましたので、報酬受け取りのためにこの部屋へ召喚されました」
「報酬とはなんだ?何が貰える?」
「報酬とは、モンスターを退治した際に落とされるディスクによって得られる報酬です。今回は緑色のディスクですので、装備品が得られます」
なにやら気になる言葉がたくさん出てきたぞ。
「装備品は選べるのか?」
「いいえ。難易度及びモンスターを倒した時の脅威度によってランダムに与えられます。受けとりますか?」
「いや、まだだ」
せっかくの説明チャンスと美少女を逃してなるものか。
「ディスクにはどんな種類がある?」
「この世界で用意されたディスクは3種類です。緑、装備品を取得。赤、体力の増加。白、取得時に体力の回復。が可能です」
「ディスクの入手方法は?」
「モンスターを倒した際にランダムでドロップします。種類もランダムです。ディスクに触れると取得したとみなされ消失します」
なるほど、やはり強くなるにはモンスターを倒すしかないようだな。
いちいちディスクを持ち運ばなくていいのはありがたい。
「レベルの概念はあるのか?」
「この世界ではありません」
「ディスクは時間で消えたりするか?」
「いいえ、ハジメ様とサブ様が触る以外では消失しません」
…?突然の情報に思考が止まる。
「なぜそこで父さんの名前がでてくる?」
「サブ様はハジメ様のサポーターとして登録されており、同期しています」
「サポーター?」
声がかすれる。
「はい。サポーターとは同じ運命をたどり、常に同じ世界線にいることで、目標を達成する手助けを行う者です」
「具体的にどんなことが出来るんだ?」
「ディスクの恩恵を受けることが可能です。世界線をまたいでも記憶が継続されます。また、ハジメ様サブ様のお二人は互いを蘇生しあうことが可能です」
「蘇生?」
「はい。どちらかが力尽きてしまった際に10秒ほど魂に触れることで蘇生が可能です。二人とも力尽きてしまった場合は世界が巻き戻ります」
情報が多すぎて訳が分からなくなってきた。
「つまり、一週目の世界、二週目の世界でも父さんは生きてきた記憶があり、今回の世界にも持ち越しているということか」
「はい。その通りです」
父さんの色々な行動に説明がつきそうな気がした。
おそらく以前の世界で体験入隊を一人ですませたのだ。
「今、父さんはどうしている?」
「サブ様は世界と共に時が止まっております。」
ふむ。情報の共有はあちらでしか出来ないということか?
「父さんをここに召喚することは可能か?」
「実行します。エラー。失敗しました」
「失敗の原因は?」
「不明。権限の不足と予想します」
「権限?あなたには上位者がいるのか?」
「はい。私はこの世界線の管理を任された末端の存在です」
「では、この場に上位者を呼ぶことは可能か?」
「恐れ多くも呼ぶことは致しかねます」
「呼ぶことは可能か?」
「致しかねます」
「可能か?」
「可能です」
「では、一度でいいから試してくれ」
「恐れ多くも…」
「試してくれ」
真っ直ぐに目を見つめてお願いをする。
あまりにもきれいな顔にドキドキする。
「はい。実行します」