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プロローグ

めちゃくちゃアホな話書きたくなって発作的に始めました。

頭空っぽで読むやつです。

正味、ちゃんと考えられてる話じゃないので、勢いに任せて作者が飽きる前に書き切る所存です。

ですのでそんな長いお話にはならないと思いますが、読んでくださるのであればどうぞお付き合いください。

 ——世界はやがて、暴食の神によって崩壊するであろう。



 それはこの寒冷の地に伝わる、ある種の予言である。

幼い子供すら、その文言を知らぬものはいない。


 所詮は迷信と笑う者、暴食の神とは現在到来している氷河期のことでありそれによる不作を表したものだと考察する者。

どちらにせよ、この言葉をそのままの真実として受け入れる者はほとんど居なかった。


 人々は叫ぶ。


『我々は暴食の神を克服した!』


『ミカド因子と万能錠剤、これさえあればこの冬が永久に続いたとしても生き延びることが出来る』


と。


 だが、それは弱者にとっては苦しみの歴史の始まりでしかなかった。

一部の拳力者に食物は集中し、人々はミカド因子による遺伝子組み換えによって異常なまでに成長する様になった農作物の栽培を強いられる。


 万能錠剤という、最低保障。

たった一粒の安価な錠剤で十分な食事と同等の栄養を持つそれが、拳力者たちに踏み越えてはならない境界を越えさせてしまったのだ。


 食の独占。

食の喜びを失った人々は、ただその曇り空を精気の無い瞳で見上げるばかりだ。

決して忘れることの出来ぬ食への渇望を抱えたまま。



 乾いた風が吹き荒ぶ小さな農村。

ジェネレーターの熱も十分に届かない居住区の外れ。

少年は育て上げた作物を愛でていた。


 ミカド因子を持たない、正真正銘のジャガイモ。

その小さなジャガイモはその少年の愛情深い両手に包まれていた。


 ほとんど凍った大地からジャガイモを掘り出した、冷えた手。

その手で愛しいジャガイモを撫でながら、少年は立ち上がった。


「やった! ついにやったんだ! ミカド因子がないと作物は育たないって、そう馬鹿にされてきたけど・・・・・・ついにオレは成し遂げたんだ!」


 少年は小さな、本当に小さなジャガイモを握りしめて家へ駆ける。


「じーちゃんに見せてやらないと! きっと驚くぞ!」


 しかし、家に近づくにつれ、少年の歩みは遅くなっていった。

それは“あいつら”の姿を見つけたからだ。


「あいつら・・・・・・また・・・・・・」


 少年は表情を曇らせる。

その瞳に映るのは、地に額を擦り付け育て上げたミカドタマネギを差し出す祖父と、そしてそれを受け取る拳力者とその取り巻きだった。


「ご苦労、いいタマネギだ。この枯れた地でまだこの品質のものを育て上げるとは・・・・・・貴殿の技量の賜物か、はたまたミカド因子の力か。どちらにせよ良い仕事をした」


 農作業の過酷さなどまるで知らないであろう綺麗な手で、高貴な身なりの男は直径が4メートルはあろうかというタマネギを撫でる。

その様子に、少年は眉を顰めた。


 今日こそは、と少年はその男の前に駆け出す。

そしてその整った顔を睨みつけた。


「おい! それはじーちゃんが育てたタマネギだぞ! 今年こそはオレたちで食べるって、そう話してたんだ! もうお前たちになんか渡さないぞ!」

「ああ、よしなさい! 高貴な身分の方であるぞ! ・・・・・・へへ、すみません・・・・・・まだガキなもんで、大目に見てやってください」

「じーちゃん!? くそ・・・・・・じーちゃんもじーちゃんだ! なんでこんなやつの言いなりになるんだ! それはオレたちのタマネギだぞ! 返せ! 返せよ!」

「すみません、すみません・・・・・・!!」


 祖父は少年の頭を押さえつけ、何度も頭を下げさせようとする。

少年はそれに抗おうとするが、農作業に鍛えられた祖父の腕力には到底及ばない。

しまいには少年もその祖父と同じように平伏の姿勢を強いられてしまった。


 タマネギを撫でていた男はそれを見て笑う。


「いや、構わないさ。まだ子供なんだ、多少の無礼は許そう。貴殿の血が流れているのであれば、その腕前も確かなものであるはずだ。その様な芽をここで摘んでしまうつもりはない。さぁ、頭を上げて。万能錠剤を受け取りたまえ」

「あ、ありがとうございます・・・・・・!」


 祖父は尚も深々と頭を下げ、男に感謝の言葉を述べる。


「じーちゃん・・・・・・」


 その姿を見る少年の目は、冷めていた。


 祖父は男の取り巻きから大量の錠剤が入った袋を受け取り、去ろうとする彼らの背に頭を下げ続ける。


 しかし、男はまだこの場を去らなかった。


「・・・・・・まて。その小僧が手に持っているものはなんだ?」

「・・・・・・!」


 男の鋭い視線に、少年は握ったままのジャガイモを咄嗟に背に隠す。

しかしその動作が、何かを持っているという確信を男に与えたようだった。


「こら! 隠してないで出しなさい!」

「い、いやだ・・・・・・!」


 祖父が少年の細い腕を強く掴む。

しかし、少年はこればかりは意地でも譲れなかった。


 膠着状態。

そこに歩み寄る男。


「さぁ、私にそれを見せたまえ」


 男は祖父を急かす。

焦った祖父は、とうとう力一杯少年の腕を背後から引っ張り出した。


「くっ・・・・・・!」


 少年が祖父を睨みつける。

祖父はそれに芽を逸らした。


 少年の手に握られる、ジャガイモ。

ミカド種とは比べ物にならない小さな作物。

だが男はそのジャガイモに目を輝かせた。


「これは・・・・・・素晴らしい! この枯れた地で通常の品種を育て上げたというのか!? 貴殿、この小僧の畑はどこだ!?」

「そ、それは・・・・・・! この村の外れの・・・・・・」

「じーちゃん・・・・・・!!」

「黙らんか! お前のくだらん遊びをお褒めに預かったのだぞ! ならば全て差し出すのが我らの務め、我らの至上の幸いではないか!」


 イモを奪われ叫ぶ少年を、祖父は怒鳴りつける。

それでも少年は男の手に渡ったジャガイモに手を伸ばすが、それが届くことはなかった。


「ふむ、小僧・・・・・・良い仕事だ。このジャガイモはありがたく頂戴させてもらおう! くく・・・・・・ふふ、ふはははは・・・・・・!!」

「やめろ! 俺の! 俺のジャガイモだ!」


 少年は少年の畑に向かうその男たちに向かって叫び続ける。

その背に追い縋ろうとするが、祖父がそれを許さない。


 地面に押し付けられて、身動きのとれないまま、ただ小さくなっていくその背中を見ていることしか出来ない。


「やめろ・・・・・・!」


 少年の瞳から、涙が溢れる。

祖父の拘束から抜け出そうと地を掻くその指には血液が滲む。


「やめろ! やめろぉぉぉぉぉ!!」


 魂からの叫びは届かない。

無情にも、ただ受け入れるしかない。


 全てを奪われてから、祖父は立ち上がる。

少年はその顔を睨みつけた。

祖父はそれに首を横に振る。


「大人になれ」


 少年は、空虚な気持ちで涙を流し続けた。

だが、やがてその心に怒りの炎が灯る。


『絶対にあいつらを許さない』


『必ずオレはオレの食いたいものを食い尽くしてやる』


と。



 長い旅路の休憩地点。

立ち寄った農村の宿で目を覚ます。

頬に伝うのは、一筋の涙。


「はっ・・・・・・とうに枯れたと思ってたよ」


 またこの夢だ。

忌わしい過去の記憶。


 復讐の鬼と化したオレに、もはや涙など似合わない。


 鏡の前に立って、過剰な鍛錬によって真っ白に染まった髪を掻き上げる。

その鏡の中に、過去の弱いオレは居ない。


「さて、ここでは・・・・・・いったい何が食える?」


 牙を剥くように笑う。

真っ黒な上着を羽織って、村外れの宿を後にした。

続きます。

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