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不思議な世界の日常的なお話

考古学者の謎の旅

作者: nite

 私の名前は進藤俊哉(しんどうしゅんや)。考古学者である。

 考古学者が、どうやってお金を稼いでいるのか不思議に思う人もいるだろう。私も、私の妻も、とある大学で教授をしていて、そこで研究をしながら生徒たちに授業をして収入を得ている。

 稼ぎが多いとは言えないので、妻にも子にも苦労をかけているが、私の親から繋がってきた考古学の血は、どうしても私を考古学の道に引きずり込んだ。


 そんな私は、現在とある山に来ている。

 この山には、冬には雪に閉ざされるような過酷な環境でありながらも、古代の人々が生活していたとされる遺跡がある。僕は、考古学者としてここに一人で来ているのであった。

 まあまあ遠い距離だったけど…それ以上の成果を得たいところ。


 地図によると、登山道をされているところを途中で曲がる…


「ここ、だろうか…」


 …これは崖と言うのではないだろうか。

 地図に示されている場所はここだが、パッと見、四十度くらいの角度はあるように見える。舗装もされていないので、足を踏み外したら間違いなく滑り落ちてしまうだろう。


 とはいえここで引き返すわけにもいかない。私は、手元・足元両方を注意しながら崖を下りた。


「ふむ、この穴か?」


 地図には場所しか記されていないので、何があるのかは分からない。だが、山を下りた先にあったものが洞穴であれば、ここであると言っているようなものだ。

 大きさも、人が横に並んでも三人くらいは通れそうであり、高さも二メートルはありそうだ。一応持っている測量器具で長さを測ってみると、二メートル二十センチの高さがあった。

 自然にできるには大きすぎるし、動物もここまでの大きさの穴は作らない。私は、ライトを持って洞穴へと入った。


「ほう…」


 壁を見て、感嘆する。

 どうして現在になってもこの大きさで穴が残っているのか、その片鱗が見られる。やたらと頑丈なのだ。もしかしたら、今までに観測されていないような文明が発見されるかもしれない。

 私はそう思うと、どうしても心が躍ってしまう。こういうのは学者の性であろう。


「それにしても広いな」


 正確な測量は、それに精通している者が行うが、私の体感ではもう百メートルくらいは進んでいる。途中で曲がったせいで、入口の光は既にここまで届いていない。

 その先に、扉を見つけた。木らしきもので作られた扉だ。


 日本における縄文時代、今のところ扉が存在したという確認はとれていない。弥生時代の中期くらいから増えてきたとされている。

 このように横穴を掘る作りは、なんとなく古い年代を思わせるが、この扉が閂でもなく端の上下が固定されているところを見ると、それなりに近代に近い遺跡かもしれない。


「お、普通に開くな」


 特に引っかかりもなく、扉は開いた。

 こういう古いものは、大抵の場合土が詰まっているとか、植物が絡まっているとかで開きにくいものなのだが…この場所を発見した人が、先に進んでいたのだろうか。

 扉の先は、坂だった。しかも、まるでボーリングのレーンのようにツルツルだ。


「これを…当時の文明が…?それとも誰かがここに…考えても分からないな。しかし、この道を進むのならばとても慎重に進まねば」


 僕はバッグの中からフックを取り出し、地面に刺した。見た目以上に堅い地面だったが、なんとか固定すると、そのフックに紐を取り付け僕の体に巻き付けた。安全ロープである。

 僕が足を踏み出すと、やはりとても滑る。


「僕はトレジャーハンターじゃないんだけど…っね!」


 意を決して降りる。

 僕の体は滑り落ち、ロープが張った。どれくらい深いのかは、僕のライトでは分からないが、もしこのロープの全長よりも長いのであれば、それこそ救急隊のような人々に任せるしかないだろう。


 慎重に坂を滑る。既に僕が開いた扉は見えない。

 やっと地面が見えた…と、僕は油断してしまった。手が滑り、ロープから手が離れる。そのせいで一気にロープは伸び、僕は地面にぶつかった。


「いったぁ…」


 ロープが切れてはいないが、僕の腕は擦り切れてしまった。

 バッグの中から消毒液と絆創膏を取り出し、手当をする。このような、先人によって作られたとされる遺跡には、現代にはいない病原菌がいることもあるのだ。消毒をしなければ命に関わることもある。


 ロープを体から外し、テープで固定する。戻る時はこれを上る必要があるが、まあそれくらいは大丈夫だろう。


「さて、ここは…」


 僕は目の前を照らした。すると、そこには大きな扉があったのだ。

 まるで城の入口にあるような大きな扉である。流石にここまで大きな扉というのは、弥生時代にも存在していないと思うのだが…


「開かない、か」


 重いからか、引っかかっているからか分からないが、扉は押しても開かなかった。掴めるところがないので、引いて開けるものではないだろう。

 この大きさの扉となると、時代は一気に室町時代付近まで飛ぶことになる。でも、地上の部分からしてそんなに最近のものではないと思うんだよなぁ…それに、こんな地底にここまで大きな扉を作るのは、相当な技術が必要だ。


「材質は、石か?木材や土には見えないが、しかし、一般的に使われる石ではない…」


 ブツブツ言いながら扉を観察していると、何か書いてることに気が付いた。


木は森に、鍵は鍵に


「なんだ、この文章」


 知らない言語なのだが、なぜか読めた。こういう意味なのだろうということが、見ただけで分かったのだ。

 その文章の隣には、何やら歪な形の窪みがあった。何かを填められそうだが、こんな形のものは生憎と何も持っていない。


 しかし書いてある内容は謎だ。なんせ、木は森の中に隠せということわざは、千九百年代の小説から広まったとされているからだ。となると、この洞穴ができたのはその後ということになるのだが…


 周囲を見ても、石ころばかりで鍵らしきものはない。やはり、ここの鍵は誰か別の人が持っているということだろうか。

 この扉は、窪みに何かを填めたところで開くようになるとは思えないが、どのみちそれがなければ実験することもできまい。


「仕方ない、戻るか」


 僕はすぐそこにあるロープで地上に戻ろうとした。その時、僕は石を蹴り飛ばした。


 折角なのでこの石も観察するか。岩石成分の含有率によって、どの年代のものなのか分かるはずだ。まあ僕は地質調査の専門家ではないので、限界はあるけど。


 うーむ、変な形だな。まるで扉の枠のような…まさかね。

 僕は持った石を、先ほどの扉に嵌める。すると、きっちり嵌ったのである。


『縺ゅ↑縺溘?雉??シ繧呈戟縺」縺ヲ縺?↑縺』

「ぐわっ」


 頭の中に、謎の音が流れる。



 気が付いたら、僕は外にいた。

 ここは先ほど僕が洞窟に入った場所である。しかし、振り返ってもそこには何もない。


「白昼夢…?」


 僕はバッグの中を見る。そこには、ここに来るときにはあったロープがない。先ほど洞窟の中で使ったからだ。

 となると、やはり先ほどの洞窟は存在したことになる。しかし、その答えを僕は持ち合わせていないのだった。

中途半端に終わってますが、理由もあります


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