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第64話 奪取と作戦

ロッド達は、王城の地下牢から奪取したジュリアン達の父親である辺境伯=アルフレッドを連れ、一旦王都の辺境伯邸まで〔瞬間移動(テレポート)〕して戻って来ていた。


あのまま牢にいると看守の交代要員が来て、いずれ騒ぎになるからである。


一瞬で辺境伯邸まで移動した事に驚愕するアルフレッドであったが、その後ジュリアン、ジョアンナ、リーンステア、ローモンドから様々な説明を受け、現状を理解していった。


アルフレッドが要請した王都への旅路で、ジュリアンが暗殺されそうになったところをロッド達に助けられ、護衛を雇って辺境伯領に引き返したが、数日後に領都が吸血鬼の君主(ヴァンパイアロード)の軍勢に襲われた事、その後に国境の砦に帝国軍の襲来があった事など、これ迄に起こった内容を共有する。


特にローモンドは、辺境伯を謀反の罪に追い落とす案の立案者である事を、その動機と共に告白し、自らの罪を詫びたのである。


全ての事情を知ったアルフレッドが話す。


「まずは、ロッド殿とお連れの方々に感謝を。ジュリアンとジョアンナ、我が領の者達を救ってくれた事、そしてジュリアンの目を治療してくれた事、本当に感謝する」


アルフレッドはロッドに向け、腰を折って頭を下げた。

少しして、頭を上げ再度話し始める。


「そして、ローモンド。君や騎士団長はブランドル伯爵に利用されただけだと思う。ティファニーの死についても済まなかった。君が色々と手を尽くしてくれたと言うのにな……」


アルフレッドが続けて語る。


「私はやはり辺境伯を継ぐべきでは無かったのかもしれない……

私が辺境伯としての業務に嫌気が差して、気分転換に避暑地になど行かなければジュリアンが熱病にかかる事もなかったし、ティファニーを失う事も無かったはずだ。そうすればローモンドもブランドル伯爵などに利用される事は無かったはずだ。全てが私の自業自得と言えるだろう……」


「お父様……」

ジョアンナがアルフレッドを慰めようとして寄り添う。


沈んだ様子のアルフレッドは、ジョアンナに礼を言うように少しだけ微笑むと、皆にこれまでの辺境伯家の後継者問題、ブランドル伯爵家との因縁を語って聞かせるのであった。


ーー


アルフレッドから辺境伯家とブランドル伯爵家の関係を聞いて、静まり返る一行。


「つまりブランドル伯爵家は、過去の後継者問題で辺境伯家を恨んでいるという事か」

ロッドが誰に言うでもなく、皆に聞こえるように呟いた。


「恐らくそうなんだろう。本来なら私の従兄(じゅうけい)が後継者となるはずだったのに、二代続けての不審死だ。こちらの関与も疑っていたのかもしれない。だが、私が子供の頃の現ブランドル伯爵は物静かで穏やかな男だった。だから私の父も後継者問題で無茶が出来たんだ。最近はどうも様子が異なる様にも思えるが……」

アルフレッドが頷き、ブランドル伯爵について補足した。


「私は昔のブランドル伯爵を知らないのですが、私に復讐しないかと持ち掛けて来たブランドルは、既に今の様な妙に邪悪な感じを漂わせていました」

ローモンドも自分の感じた違和感を話した。


「ブランドル伯爵の人格が入れ代わったという事か。帝国では大悪魔(アークデビル)が丞相に成り代わっていた例もある。アイリス、どう思う?」

ロッドがアイリスに尋ねる。


「はい。その人物の記憶もという事であれば、姿似の悪魔(ドッペルゲンガー)という上位の悪魔が成り代わっている可能性が高いと考えられます。この悪魔は姿や記憶までも元の人間から完全に引き継ぎ、本人に成り代わって人心を惑わすと言われています。帝国の大悪魔(アークデビル)の件といい、人間社会を混乱させようとする何者かの壮大な意志が感じられます」

アイリスが該当しそうな悪魔の説明をしてくれる。


「なるほど、そんな悪魔がいるとはな。しかし仮にその姿似の悪魔(ドッペルゲンガー)だとして、どうやって正体を暴こう。上級貴族を問答無用で殺すわけにはいかないだろう?」

ロッドが皆に相談する。


「ロッド様、姿を偽装していても私の魔力感知マジックパーセプションで魔力の流れを見れば、悪魔かどうかの判別は可能です。また、ミーアの魔歌(マジック・ソング)の力を使えば、悪魔の正体を暴くことも可能だと考えられます」

アイリスがロッドに向けて対応策を説明した。



以前ミーアの舞踏で獣人全体にバフと再生効果が発現した件で、アイリスにミーアを鑑定をしてもらった結果、ミーアに〈半神の従者〉〈神の巫女〉のギフトと魔歌(マジック・ソング)魔舞踊(マジック・ダンス)という特殊能力がある事が分かった。


アイリスの推測では恐らく潜在的に保持していたギフトやスキルが、ロッドの従者となった時にイクティス神により有効化されたのではないか?との事であった。


=============== 《魔歌(マジック・ソング)

歌に自らの魔力を乗せ、敵や味方に様々な魔法的効果を発揮させる能力である。

音が伝達できる範囲内の全ての者に影響を及ぼし、術者の認識により効果を及ぼす対象を特定出来る。

「音波が届く」事が重要であり、耳を塞いだりして実際には音が聞こえない場合でも効果は発揮される。

効果時間は歌の種類により異なるが、発動効果がある程度持続する物と、歌っている間のみ効果を発揮する物とに別れる。

==============================


=============== 《魔舞踊(マジック・ダンス)

舞踊に自らの魔力を乗せ、主に味方に対して様々な魔法的効果を発揮させる能力である。

一定の範囲内の全ての者に影響を及ぼすが、これも術者の認識により効果を及ぼす対象を特定出来る。

魔歌(マジック・ソング)よりも効果範囲は小さく、自分に位置が近いほど効果が強力になる。

舞踊の種類により異なるが、発動効果がある程度持続する物と、舞踊中のみ効果が発揮する物とに別れる。

==============================



ミーア自身は驚きもあったがそれを聞いて大層喜び、それ以降時間がある時はアイリスから魔歌(マジック・ソング)魔舞踊(マジック・ダンス)を習い、修練を積んでいたのである。


その為、ミーアは今ではすっかりアイリスの子分の様になってしまっているのだった。



「後は何とか国王の前に、ブランドル伯爵を引きずり出すしかないな」


ロッドがそう言うと、ジュリアンがそれを受けて親書が入っている懐に手を当てながら話す。


「僕が持っている帝国皇帝から国王陛下への親書で、辺境伯家の冤罪を晴らせると思います! これを持ってブランドル伯爵の陰謀だと国王陛下に直訴しましょう! そうすればブランドル伯爵を呼び出して、対決出来ると思います!」



アルフレッドはジュリアンからの提案に、内心では強く驚いていた。

(ジュリアン、いつの間にこんなに力強く……。ティファニー、君が残してくれた子供達は力強く、そして優しく育っているよ……)


ジョアンナ、リーンステアもジュリアンの提案に大きく頷いた。


「元々は私の計画した陰謀です。私もブランドル伯爵の関与を証言致しましょう!」

ローモンドも決意を固めた表情で宣言した。


「じゃあ、ジュリアンの案で国王に直訴(じきそ)しブランドル伯爵をおびき出し、アイリスに確認してもらった上でミーアの魔歌(マジック・ソング)で正体を暴く事にしよう。もし悪魔の(たぐい)であれば、その場で俺達が相手をしよう」

ロッドが作戦案を纏め、全員がロッドを見て真剣な顔で頷いた。


今回重要な役目があるミーアも、両腕に力拳(ちからこぶし)を作って力を入れるのであった。


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