第60話 選別と処刑
ロッドは貴族連合軍の貴族達の前に、ジュリアン達を含めた全員を集めていた。
「この者達が辺境伯領に進軍して来た貴族達だ。既に軍勢の者達は死ぬか、武装を解除して降伏している。中心人物の貴族と、村人の殺戮に関与した貴族は既に処刑したが、残りの貴族達の扱いを決めるために集まってもらった」
皆は頷き、ロッドが続けて話す。
「ジュリアン、悪いが話し合ってこの貴族達の処遇を決めてくれ。最低でも女性達や、進軍中の街や村に賠償する金は確保してほしい。ジョアンナとローモンド子爵はその辺りのサポートを頼む。俺は武装解除している者達をこれから選別してこよう。アイリスやリーンステアはここでジュリアン達の護衛を頼む。ミーアとハム美は待機してくれ。後はそうだな……ピーちゃん、俺を乗せて軍勢の上を飛んでくれないか?」
(『はいデス! ご主人様!』)
ロッドがそう言うとピーちゃんは答え、青白い光に包まれてユニークモンスターの姿になった。
ロッドはピーちゃんの背中に乗ると、大空に舞い上がるのであった。
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ロッドは貴族連合軍を閉じ込めていた〔サイコバリア〕の内側にさらに3つの〔サイコバリア〕を生成した。
それぞれ、死罪の者、死罪までいかないが罪ある者、無罪の者を選別するために用意した物である。
ロッドは超能力〔精神感応〕で武装解除している貴族連合軍に向け、メッセージを送信した。
「これからお前達を選別する! 青白い光が身体に触ると思うから逃げないようにしてくれ。選別は、1.街や村での略奪や殺戮を行った者、2.それには関与していないが認知していた者や、拉致された女性をそれと知っていて買うか凌辱した者、3.今言ったどれにも関与しない者、という3つに振り分ける。 それでは始めるぞ! 邪魔する者や暴れる者は直ちに処分するから気を付けてくれ!」
ロッドは一通り説明すると、ピーちゃんに軍勢の上をゆっくり低空飛行してもらい、空から複数展開した〔サイコハンド〕を接触させ、〔思考加速〕も併用して各人の罪の有無を判定し、振り分けた者を〔物質転送〕で3つのバリアに転送していった。
武装解除した者の振り分け結果は、下記の様になる。
■貴族連合軍内訳(罪状振り分け後)
・貴族及び従者……51(死者0、武装解除51(A:3、B:13、C:35))
・騎士……840(死者748、武装解除92(A:6、B:64、C:22))
・兵士……5,014 (死者3,351、武装解除1,663(A:55、B:526、C:1,082))
・民兵……982(死者271、武装解除711(A:6、B:12、C:693))
・冒険者……62(死者5、武装解除57(A:0、B:10、C:47))
・傭兵……211(死者90、武装解除121(A:0、B:56、C:65))
・ならず者……3,035(死者2,344、武装解除691(A:640、B:49、C:2))
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合計……10,195(死者6,809、武装解除3,386(A:710、B:730、C:1,946))
※グループA……罪ある者(死罪)
※グループB……罪ある者(非死罪)
※グループC……無なき者
ロッドは、まずグループAとして振り分けられた〔サイコバリア〕に赴くと、振り分けられた者達に告げる。
「お前達は罪ある者だ! 今まで弱き者達から奪い、殺すという事をしてきたはずだ! ここでお前達がいくら否定しても結果は変わらない! 俺がこれから罰を下す、犯した罪を後悔して死ね! サイコニードル・レイン!」
「ぎゃあああ!」
「うわぁ! 助けてくれ!」
「ひいぃ!」
「ぐがぁ!」
ロッドは説明を終えると、違う!とか、助けてくれ!と叫ぶ者達を無視して〔サイコニードル・レイン〕を発動し、全員を穴だらけにして処刑するのであった。
ーー
次にロッドはグループCに現れ、そこに振り分けられた者達に話した。
先程のグループが皆殺しにされているため、グループ内に緊張が走る。
「お前達は全員が無罪だ!」
ロッドの声が聞こえると、そこかしこから安堵の声が聞こえた。
極度の緊張が解けて、地面にへたり込む者もいる。
ロッドが続けて話す。
「この囲みは解除するが、大きい囲みはまだ解除出来ない。まだ生き残った貴族達の扱いが決まっていないからだ。但し、どのような結論になったとしても再度、罪を問う様な事はしないと約束しよう。おとなしく待っていてくれ」
グループCの者達は今度こそ安心して、皆コクコクと頷くのであった。
ーー
最後にロッドはグループBに現れた。
グループBの者達は自分達がどうなるのか、固唾を飲んで見守る。
ロッドが告げる。
「お前達は罪ある者だ!」
グループBの者達は悲鳴を上げ、騒然となった。
地面に手を付いて、腰が抜けている者もいる。
「ひい!」
「助けてっ!」
「きゃああっ!」
「あわわわっ!」
ロッドが続きを話す。
「黙って続きを聞け! 罪はあるが、死罪になる程ではない。 一人ひとり罪の重さは異なるが、ここは一律に同額の罰金刑とする!」
グループBの者達は殺されないと分かると、立ち上がって笑顔となった。
ロッドは地上に降りて、ピーちゃんに袋を一つ持たせて告げる。
「罰金は一人金貨5枚とする! これは全て、今回被害にあった者達への補償に充てられるだろう! 金貨5枚を持っている者は、そこの鳥のモンスターが抱えている袋に入れてくれ、すぐに放免しよう。金を持っていない者は、お前達の雇い主から一時的に徴収するとしよう。後ほど来る者に自分の名前と雇い主を告げるんだ。嘘を吐いてもすぐ分かるからな」
1/10程の者は即金を支払って放免され、残りの者は無罪となったグループCから、各貴族家の者達に聞き取らせ、記録していった。
聞き取りが終わった時点で、グループBの〔サイコバリア〕も解除して開放したのであった。
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ロッドは選別と処刑を終え、貴族とジュリアン達のところに来ていた。
貴族達はロッドの姿を見て怯えて、震えだす。
ロッドが構わずジュリアンに尋ねる。
「ジュリアン、話し合いの結果は出たのか?」
「はい。貴族連合軍は王都に引き揚げ、各貴族家から今回の進軍での被害者の補償で、一人あたり金貨5,000枚を賠償金として支払う事を合意しています」
ロッドが答える。
「なるほどな。だが死んだ貴族の分はどうする?」
「これは身代金という扱いですので、死んだ貴族からは徴収が難しく……」
ローモンドがジュリアンの代わりに答えた。
「そういう考え方もあるが、俺は当人が死んだからと言って賠償金の支払い義務が消えたとは思えない。徴収する方法が無いというのであれば、この貴族達に代理で支払わせるか、王国に支払わせるか、直接徴収に行くしかないな。俺はどれでも構わない」
ロッドが必ず支払わせると宣言した。
「では、一旦は各貴族家で負担してもらいましょう。ローモンド子爵、いくらになるかな?」
ジュリアンがローモンドに問う。
「はい。全7貴族家で金貨5,000枚ずつであれば全部で35,000枚になりますが、4貴族家のみでの支払になると、3家分の15,000枚をそれぞれが負担する事になりますので、8,750枚ずつになります」
ローモンドがすらすらと計算結果を答えた。
「じゃあそれでいこうか。後、軍勢の中で略奪や殺戮を犯した者は処刑したが、その他の罪を犯した者は一律金貨5枚の罰金刑とした。即支払えなかった者は雇った貴族家での立替としたから、その分の支払いもあるぞ。およそ金貨3,300枚ほどだ」
ロッドの言葉を聞き、貴族達は諦め顔で頷くのであった。




