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第51話 帝都と皇帝

ロッドは〔瞬間移動(テレポート)〕で砦の司令室に来ていた。


「ロッドさん! さきほど空で大爆発が!」

「ロッド殿! ミーア殿! それに……」

いきなり大人数で現れたロッドに驚くジュリアンとリーンステア。


「こ、ここは!」

「な、何が起こった! 何処なんだここは?」

帝国軍の参謀役と将軍の男は、いきなり知らない部屋に来た事に物凄く驚く。


「ああ。ここはお前達が攻撃している王国側の砦の司令室だ。ジュリアン、リーンステア、この者達は今攻めて来ている帝国軍の責任者だ」

ロッドが皆に今の状況を簡単に説明した。


「「「「 えっ! 」」」」


四人全員が驚愕してお互いを見合い、絶句する。


「悪いなジュリアン、さっきの大爆発は俺の魔法だ。俺はこれからミーアとアイリスを連れて帝国の帝都に(おもむ)き、皇帝に獣人の開放を宣言し、非人道的な領土拡大政策を止めるよう言って来るつもりだ。ジュリアン、お前達も来るか? 王国側の内通者を(あぶ)り出せるかもしれないぞ」


ロッドが帝国に行く事を宣言する。


「え! でもその間に帝国軍が砦に攻めてきたら……」

ジュリアンが心配そうに言う。


「帝国軍には停戦を命じてあるし、帝国軍の責任者も連れて行くから問題は無いと思うぞ。それに帝国軍にはピーちゃんを残して来た。もし俺の発した停戦命令を破れば、ここへ着くまでに全滅するだろう。ピーちゃんは範囲攻撃が得意だからな」

ロッドがジュリアンに、砦を留守にしても問題無い事を説明した。


「「 …… 」」

帝国軍の二人は何か言いたそうだが、言えないようであった。


「では僕も帝国に行きます!」

「わ、私もご一緒します!」

ジュリアンとリーンステアが答える。


「分かった。じゃあ後はアイリスを呼ぶか」

そう言うとロッドは〔精神感応(テレパシー)〕でアイリスに連絡する。


(アイリス、俺だ。これから捕獲した帝国軍の責任者を連れて帝都に向かう。ミーアとジュリアン、リーンステアも一緒だ。アイリスにも来てほしいんだが大丈夫か?

『はい。承知しました、ロッド様』

では今から呼び出すぞ)


物質取得(アポート)


ロッドは超能力で、辺境伯城からアイリスを呼び出した。

アイリスがロッドに向けてお辞儀をする。


「「なっ!」」

帝国軍の二人はいきなり人が現れた事にまた驚く。


「よし、これで揃ったな。では全員で帝都に飛ぶぞ!」

ロッドはそう宣言すると、〔瞬間移動(テレポート)〕で帝都に移動するのであった。



ーーーーー


ロッドはまたもや帝都に来ていた。


アイリス、ミーア、ハム美、ジュリアン、リーンステア、帝国軍の責任者の二人を引き連れている。


今度は獣人の救出ではなく、帝国の皇帝との話し合いを目的としていた。

獣人の開放を事後承諾させ、無理な領土拡大を止めさせるためである。


「げえ! 本当に帝都じゃないか! どうなってる! さっきまで戦場にいたんだぞ!」

「信じられません……先程から、悪い夢でも見ているようです……」

帝国軍の二人は一瞬で帝都に来た事に動揺していた。


「ジュリアン様、敵国にいると思うとなんだか緊張しますね……」

「うん、そうだね……」

ジュリアンとリーンステアは緊張している様子だ。


「皇帝は、帝都の何処に住んでいる?」

ロッドは帝国軍の責任者の二人に聞いてみた。


「……言えません」

「……」

二人は言おうとはしなかった。


ロッドは少し感心したが、参謀役の男の腕を(つか)み接触しての〔精神感応(テレパシー)〕にて思考を読み取った。


「なるほど、あの建物か」

ロッドが遠くに見える宮殿のような建物を指差した。


「なぜ分かるのです! 口には出していないのに!」

参謀役の男が驚愕して尋ねる。


「その質問に答える義務は無いな。企業秘密だ」

ロッドは適当に誤魔化(ごまか)すと、どうやってあそこまで行こうかと考える。


瞬間移動(テレポート)〕で行っても良いが、何度もすると面倒である。

少し考えた結果、〔サイコバリア〕に乗って空中を移動する事にした。


これだと万が一攻撃を受けたとしても防げるので、一石二鳥である。


ロッドは皆が立っている地面に沿って、床板(ゆかいた)状の〔サイコバリア〕を生成して宙に浮かせ、外側から少し大き目で楕円形(だえんけい)の〔サイコバリア〕で包み込んだ。


青白く輝く、見た感じはUFOのような乗り物となった。

ロッドはこれを乗り物にちなんで〔サイコバス〕と定義した。


「これはサイコバスという乗り物だ。これで宮殿まで飛んで行こう」

ロッドが説明し、〔サイコバス〕が〔念動力(テレキネシス)〕により空中を動き出すと皆が驚く。


「こ、こんな事が……」

「馬鹿な! 空を移動するだと……」

帝国軍の二人は、空を移動出来る事が信じられないようだ。


「さすがはロッド様! 凄い魔法ですね!」

「ロッドさんにはいつも驚かされます!」

「でも床が透けて下が見えると、少し怖いですね……」


ミーアとジュリアンは喜んでいるが、リーンステアは怖いようであった。

だが確かにリーンステアの言う通り、床が透けていると普通は怖いだろう。


サイコキネシスに着色が出来ないかな?と妙なところで悩むロッドであった。



ーーーーー


ロッドの超能力で運行する〔サイコバス〕は街の上空を移動する。


やがて宮殿上空に差し掛かると、ロッドは石造りの広い中庭のような場所に、ゆっくりと舞い降りた。


ロッド達が降りると同時に、多数の警備兵のような団体がやって来る。

ロッドは相手をするのが面倒なので、警備兵全員を〔サイコバリア〕で包み込み、無力化する。


「な、何だこれは!」

「宙に浮いているぞ!」

「出してくれ!」

「ひぃ~助けてくれ!」


警備兵達はビックリして口々に叫び、〔サイコバリア〕でふよふよと宙を(ただよ)う。


ロッドは手っ取り早くこの宮殿内にいる全ての人間を〔遠隔知覚(テレパス)〕で感知し、〔物質取得(アポート)〕で次々と集めた。


多少時間が掛かったが、数百人を集め終わったロッドは周りをサイコバリアで囲み逃げられないようにし、そのうち数人の思考を接触して〔精神感応(テレパシー)〕で読み取り、皇帝を特定した。


服装などからも間違いないだろう。


「お前が帝国の皇帝だな?」

ロッドが皇帝の近くによりに歩み寄り、確認する。



「無礼だぞ! 仮面を被った怪しい賊め!」

数人の護衛のような者が、皇帝を庇うように前に出て叫んだ。


「良い! 余がカーンマイル帝国、カーンマイル7世である。余は逃げも隠れもせん!」


壮年で、少しでっぷりとしているが、小綺麗で豪華な装いの男が名乗る。


この前ミーアを襲おうとした第一皇子に風貌は似ているが、皇子とは違い皇帝としての風格を漂わせていた。


「帝国の皇帝よ、俺は守護者という者だ。最初に言っておくが、俺はこの姿の時は、人間社会の身分制度に従うつもりは無い。これは帝国だろうと王国だろうと、どこの国相手でも全て同じだ」


皇帝の反応を見ながら、ロッドが続けて話す。


「まず、俺が帝国内の全ての街から獣人を開放し、王国内に移住させた事を宣言しよう。これは奴隷も含めた全ての獣人だ。但し、個人の意志で帝国に戻りたいと言う者がいれば、後で送り返すつもりだ」


「ふむ。獣人は帝国に長年従属しているのだ。そのような事は認めない。もしそれが本当ならば、余は獣人の里に討伐軍を送る事になるだろう」

皇帝がロッドに冷徹に返答する。


「明日には移住が終わるだろうから、討伐軍とやらが間に合うとは思えないな。まあそれは好きにすれば良い。ともかく宣言はしたからな。見れば分かると思うが、そこに獣人の里のミーア姫も居るだろう? これは全ての獣人の長老達の同意の上だと考えてくれ」

ロッドが皇帝に説明した。


「守護者様の(おっしゃ)る通りです。我ら獣人の里は、今後は我らをお救い下さった守護者様に、絶対の忠誠を誓っています」

ミーアがロッドの言を裏付けるように話した。


「ふむ。ミーア姫か。昨夜、第一皇子に大怪我を負わせたと報告があったが、何か申し開きはあるか?」

皇帝がミーアに問い質す。


「私は昨夜、その皇子に手籠(てご)めにされそうになったところを、守護者様に助けられたのです。言い訳する事などございません!」

ミーアが少し怒ったように答えた。


「話が()れたが続きを話そう。帝国の拡大政策についてだ。獣人に限らず近年、手近な小国を次々と征服し、征服した国の民を奴隷化したり、さらなる征服戦争の道具としている。これでは帝国は魔物と変わり映えしないのではないか。なぜそこまで勢力の拡大を目指す?」

ロッドは皇帝に問う。


下賎(げせん)な者に言っても分からぬ。帝国はどのような無理をしても領土を拡大していく必要があるのだ! (うっ)」

皇帝はそう答えると、軽い痛みがあったらしく、こめかみあたりを押さえた。


ロッドがさらに問答しようとした時、〔未来視(フォアサイト)〕で切り裂かれる未来が視えたため、〔サイコブレード〕を瞬時に生成し〔思考加速〕も用いて、高速で迫る斬撃を弾き返した。


(キンッ!)


「賊めっ!」

斬撃を放った男が激昂し、もの凄い速さで再度ロッドに迫る。


「おおっ! 近衛兵が来てくれたぞ!」

「近衛兵団長だ!」

「雷神が来てくれたぞ!」

「これで安心だわ!」


近衛兵団長が来た事で、皇帝の周りにいる者達が口々に叫んだ。


ロッドが見たところ、その者は握った剣と身体からパリパリとした黄色い稲妻の様な物を帯びており、何らかの魔法の力を纏っているようであった。


ロッドも〔サイコ纏い〕で少し身体強化を行い、青白い輝きを纏う。



(キンッ!) (ガン!) (ガギンッ!)


(キンッ!) (ガッ!)



高速での数度の剣戟(けんげき)の後、両者ともほぼ互角なのを認識すると、互いに少し距離を取るのであった。


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