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第27話 矜持と代償

「あんた達は金級(ゴールドランク)パーティーの冒険者だろう?こんな奴らに協力なんかしても良いのか?」

ロッドはならず者に雇われていると思われるリックとゴードンに尋ねた。


「いんだよ!これは単なる小遣い稼ぎだ。特にこれでお前に借りを返せるしな!昨日からずっとお前を探してたんだ。で、コイツらに因縁を付けさせた!ははっ。今は兄貴もいるんだ手足ぶち折って再起不能にしてやるぜ!覚悟しな!」

リックは片腕を吊っており昨日の怪我は治っていないようであったが、イキリ立ってロッドに答えた。


「ふん。俺はこんな小遣い稼ぎに興味は無い、やっているのは弟だけだ。だが弟を傷付けた事は許せん!ギルドでも恥をかかされたしな。それに俺は上下関係には煩いんだ。聞けばお前はFランクというではないか?礼儀を教えてやろうと思ってな。その過程で大怪我をしてもそれはそれで運が悪かったという事だろう?」

ゴードンは弟の怪我の報復をするつもりでいる様だった。


今までの会話から、リックは日常的に小遣い稼ぎとしてならず者達の用心棒をしている様だ。恐らく昨日ギルドで倒された事を根に持ってロッドを探し、商売をしているところを見つけたのでならず者達に丁度良いと因縁を付けさせたのだろう。そして自分達だけでは勝てない可能性を考慮し、Aランク冒険者で兄のゴードンに助っ人を頼んだというところだろう。兄は兄で自分の実力に自信があり過ぎて他者を下に見ており弟を傷付けた下位の者が許せないのだと思われた。


ロッドは一つ疑問に思った事をゴードンに聞いてみた。

「この事がギルドにバレても良いのか?あのカーラとかいう支部長はこういう事にはうるさそうだったが。それに他のパーティーメンバーも承知しているのか?」


「ふん。冒険者ギルドはここだけではない、あまり煩いようなら王都にでも拠点を移してしまえば良い。パーティーメンバーは俺の言う事には逆らわないから問題ない!」

ゴードンは律儀にロッドの問いに答えた。


「もう一度聞くが、お前は本当にそれでいいんだな?それがお前の矜持なのか?俺はこの前言ったはずだ次は手加減しないと。こんな事でAランクまで上り詰めた冒険者としての人生を終わらせてしまっても悔いは無いのか?」

ロッドは最後の確認をする。


「ごちゃごちゃ言ってんじゃねえ!おい!もう全員でやっちまえ!」

リックはもう待ち切れないようで用心棒であるはずなのに、ならず者達にロッドに襲いかかるよう指示した。


「やれ!」「おう!」「やるぞ!」「半殺しだ!」

「骨でも折ってやれ!」「舐めやがって!」

ならず者達は口々に怒声をあげながらロッドに襲いかかる。


「アイリス!マリーの目を塞いでおいてくれ!」

ロッドはアイリスにこれから起こる惨劇を見せないように頼んだ。


ーー


ロッドは〔思考加速〕を使いゆっくりとした時間の中で最初に突進してきた男の膝頭を蹴り折って顎を下から殴り飛ばす。顎を砕かれて2mぐらい吹き飛んで気絶する男。2人目は殴りかかってきた腕を取って捻り折り、前屈みになったところに踵落としを脳天に叩き込んで気絶させた。そして3人目の足を払って転ばせると両腕を踏み折り、絶叫する男の頭を死なない程度に踏み潰し気絶させる。4人目は最初の男と同じように膝頭を砕き、顎に一発入れて気絶させた。5人目は前の4人の有様を見て怯み動きが止まったが、ロッドが無理やり腕を取って両肘を叩き折り、絶叫する男の後頭部に蹴りを入れて気絶させた。


荒々しい声で溢れていた場がロッドの圧倒的な暴力によりシンと静まる。


残されたならず者のリーダーとリック、ゴードンはものの数秒で5人も倒された事に驚愕する。しかも倒された者は、皆腕か脚が異様な方向に曲がった上で意識を刈り取られていた。


「ひっ!ひいぃ!」

ならず者のリーダーは悲鳴をあげて後ずさると慌ててリックとゴードンの後ろに隠れた。


「てっ、てめえ~!」

「こっ、これは!お前は本当にFランクなのか?」

リックは恐れながらもゴードンがいるので強気でロッドを睨み、ゴードンはロッドの戦う様子を見て認識を改めた。


「くだらない逆恨みで折角軌道に乗った商売を滅茶苦茶にしやがって。たしか『手足ぶち折って再起不能にしてやるぜ!覚悟しな!』だったか。お前達こそ覚悟はいいか?」

ロッドはそう言ってゆっくりとリック達に歩み寄る。


「むう!やらせん!」

ゴードンは2人の前に出て荒々しい呼吸を繰り返すと共に全身の筋肉を何度も膨張・収縮させ始める。身体強化(フィジカルブースト)の準備に入ったのだ。この戦技(バトルアーツ)が発動すると力属性、敏捷属性、耐久属性を一時的に大きく向上させる事が出来る。


ロッドはその様子を見ると高速で隙だらけで準備中のゴードンに近づき、身体強化を使わない最大の力で鳩尾に一撃を入れた。ロッドの拳が油断していたゴードンの鳩尾にめり込み、内臓に大ダメージを与えた。


「ぐおおおおっ!げぼぉ!ごああああああ!」

ゴードンが巨体をくの字に曲げて膝を付き、その後胃の中の物をぶちまけながら苦しそうに転げ回る。


「その技は昨日見た。鎧を着てくるべきだったな。それにいつも自分の技の準備が終わるまでずっと待ってもらえると思うなよ?」

ロッドはそう言うと、転げ回るゴードンの動きを〔思考加速〕を使って丁度膝が上を向いたタイミングで力を込めて踏み抜き、ゴードンの膝を壊した。


「おおあ!俺の脚がああああ!!」

ゴードンは鳩尾の痛みが冷めやらぬうちに膝まで壊され、吐きながら激痛で叫びつつ本能的にロッドから遠ざかるよう転げ回る。


「次は腕だ。俺は散々警告したよな?支部長の言う通り弟離れしておくべきだったな」

ロッドはそう告げるとゆっくりゴードンに近付いて行く。


ここに来てようやくリックとゴードンは決して怒らせてはいけない相手に手を出してしまった事に気付いた。同時に自分達の身体が壊されて冒険者としてのキャリアはここで終わってしまうとも。


回復魔法は傷をある程度修復できるが、一般的に知られる魔法では病気や身体の部位欠損などは治せない。骨折は自然と治る怪我ではあるが、骨折の仕方によっては元のようには戻らない場合もあり、特に膝や肘などの関節部が骨折した場合は以前と同じように動かすことは難しいだろう。


「ひっ!ゆ、許してください!もう止めます。心を入れ替えますから!!」

「ひ、俺も!もう止めてくれ!謝らせてくれえ~!」

リックとゴードンはロッドに恐怖するあまり謝罪を始めた。


ロッドはそれを聞いても特に行動を変えることはなく、ゴードンの折れた脚とは異なる方の肘を砕いた。


「ぐがああああ!!」

ゴードンは片腕、片脚を破壊され、転げ回る事も出来ずに叫ぶ。

ロッドは痛みで叫ぶゴードンの頭部を蹴って意識を刈り取った。


「お前は両手足だ!2度と悪さが出来ないようにな」

ロッドは怯えて恐怖のあまり失禁しているリックに告げるのであった。


ーー


両肘、両膝を粉砕されたリックが気絶して横たわる。


ならず者のリーダーの男は逃げるつもりだったが、なぜか体が動かせず逃げる事が出来ないでいた。頼みの用心棒であるリックとリックよりも格段に強いAランク冒険者のゴードンまで簡単に倒されてしまった。それも恐らく再起不能にされてしまったようである。


男には近付いて来るロッドは死神のように見えた。


男は失禁しながらロッドに和解を持ち掛けた。

「ひ、ひっ!金!お金!壊してしまった道具の弁償金を払います!どうか、どうか勘弁してください~」


男が恐る恐る今持っている金貨2枚を差し出す。


ロッドはその金貨を受け取ると、男に命じる。

「お前達の親玉は何処にいる?そこまで案内してもらおうか」


ーー


ロッドは一旦、市場に展開していた商売道具など壊れた物も含めてストレージにしまい、気絶させたならず者やリック、ゴードンなども通行の邪魔にならないよう一か所に集め、アイリスとマリーは一旦宿屋に帰らせた。ハム美とピーちゃんも一緒にいるので大丈夫だろう。


ロッドはならず者のリーダーの男に組織の拠点まで案内させる事にした。

嘘を吐いたり逃げ出せない様に首根っこを掴み案内させる


男は何回か嘘を吐いたが接触している首から精神感応(テレパシー)で嘘がバレ、その度にロッドに殴られて顔が多少変形しながらも拠点にたどり着いた。


ーー


ドアを開けた男は観念してロッドをボスのところに案内した。


「ん?何だお前、随分顔が腫れてんな。新入りの挨拶か?」

ボスと思われる男が煙草をふかしながらリーダーに付き添われているロッドを見て尋ねた。


「いえ!そうじゃねえんです…このお人は…」

リーダーの男はボスに気まずそうに答えるが、説明できず言葉に詰まった。


「俺はコイツらに被害を受けた者だ。商売道具を壊された挙げ句、売上を全部寄こせと言われてな。ついでに連れの者も一晩貸せと言われた。お前達は日常的にこんな事をやっているのか?それを確認しにここまでコイツに案内させて来たんだ」

ロッドは事実を淡々と述べ質問した。


「何い!おい、お前は何やってたんだ?こんな奴はヤキ入れて川に放り込んで来い!お前の手下はどうした?」

ボスはロッドの話しを聞いて激昂して叫ぶように指示した。


「や、止めた方がいいです!無理なんですよ!このお人はAランク冒険者を簡単に倒しちまうんです!」

リーダーの男はボスにロッドの危険性を知らせようと叫ぶ。


「バカヤロウ!俺達は舐められたら終わりなんだよ!おい!!!野郎ども!!全員集まれ!!お前は後でヤキ入れだ!」

ボスはそう叫ぶと自分の武器である短剣を抜く。


わらわらと武器を手にして集まり、ロッドを囲むならず者達。

これなら逃げ場は無いと思いボスはニヤリと微笑む。


「謝罪の言葉も、反省するつもりも無いか…ならばまた全員手足を一本ずつといったところか」

ロッドは今にも飛びかかって来そうな包囲の中、独り言のように呟いた。


ーー


5分ぐらいした後、立っているのはボスとリーダーの男、ロッドだけであった。

30人ぐらいいた男達は皆、片腕と片脚を一本ずつ折られて気絶させられていた。


「な、なんだっ!化け物か?お前は!」

ボスは手下がやられている間は現実を受け止められずに彫像のようになっていたが、やっと現実に戻ったようであった。


「後はお前だけだ。何か言う事はあるか?」


「ひいっ!お、俺だけは見逃してくれ!金なら払う!そこの隠し金庫にあるんだ!どうかお願いします~」

ボスは短剣を放り投げて跪き、ロッドに懇願した。


「ふう。お前みたいな輩の言うことはいつも同じだな…そして俺の答えも同じだ。自分だけ助かろうという奴は両方の手足だ!」

ロッドはそう告げるとボスの両方の肘と膝を粉砕した。


ロッドが残ったリーダーの男を見ると、ボスが白状した隠し金庫にあったと思われる金が入った袋を、迷惑料として震えながら差し出して来た。


ロッドはそれを受け取ると、リーダーの男に後始末は任せたと言ってならず者達の拠点を出て行くのであった。


ーー


ロッドは帰り道、街中で瞬間移動(テレポート)するわけにもいかず、歩いて市場まで向かった。


歩きながら先ほど迷惑料として貰った袋をストレージに入れて中身を見てみると、なんと金貨50枚が入っていた。少し強盗になったような気分となったが、もしロッドに力が無かったとしたら大変な事になっていた筈だ。死んでいたかもしれない。気持を切り替えてここは有り難く貰っておく事にした。


ロッドは現在の所持金を確認した。

・護衛依頼の報酬の残金 銀貨1枚、大銅貨6枚、銅貨2枚

・市場での売上 銅貨換算2,924枚

・ならず者に貰った蹴り倒された機材の弁償金 金貨2枚

・ならず者の拠点で貰った迷惑料 金貨50枚

換算合計 金貨55枚、銀貨0枚、大銅貨8枚、銅貨6枚となった。

これは日本円で5,508,600円相当である。


期せずして大金を手に入れたロッド。これで当面必要となる金は確保出来た事になる。出来るならこの領都でマリーの落ち着き先を見つけ、ロッドがいない時はジュリアンやジョアンナに様子を見てもらうのも良いかもしれない。


ロッドが考えながらホットドッグを販売していた場所に戻ると、何人かが心配してくれていたようで、大丈夫だったか?と声を掛けてくれた。ロッドも笑顔で大丈夫だと返した。


ならず者達は先ほどと同じように市場の隅に並んで気絶していたが、何処かに運ばれたのかリックとゴードンは既にいなくなっていた。


ロッドはもう用も無いしまあ良いかと思い、アイリスとマリーがいる宿屋に戻ろうとしたところで思わぬ人達に声を掛けられた。


「ロッド様!ずっとお探ししていました!」

「ジュリアン様が大変なんです!お願いします。お力をお貸しください!」

それはこの辺境伯領まで一緒に旅をしてきた侍女達であった。



ーーーーー


■ならず者達の属性値

力属性ランクF~D(底辺~中位)

敏捷属性ランクG~F(最底辺~底辺)

耐久属性ランクF~E(底辺~下位)

知能属性ランクG~D(最底辺~中位)

魔力属性ランクG(最底辺)


■Bランク冒険者リックの属性値

力属性ランクD(中位)

敏捷属性ランクC(上位)

耐久属性ランクE(下位)

知能属性ランクE(下位)

魔力属性ランクF(底辺)


■Aランク冒険者ゴードンの属性値

力属性ランクB(一流) → 身体強化後、ランクA(超一流)

敏捷属性ランクD(中位) → 身体強化後、ランクC(上位)

耐久属性ランクC(上位) → 身体強化後、ランクB(一流)

知能属性ランクD(中位)

魔力属性ランクE(下位)


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