6.村でファンクラブ作ります?
ジョンガンが目を覚ましたのは薬草を飲ませて
2日後の事だった。
自分の足元で顔だけベットにのせて床に座りこみ、ヨダレを垂らして眠っているすずの姿を見て、ここが現実だと思い知らされる。
こんなにゆっくり寝たのは久しぶりで、随分と体がスッキリしていると感じた。
背中の傷も前ほど痛みを感じないことに安心したところで、コンコンっと扉をノックする音がして、ココがパンとチーズを手にもって部屋に入ってきた。
パンの良い香りが漂う。
「あっ起きてるー!よかった!!2日も寝てたのであまり無理しないでくださいね」
2日も寝てしまっていたことを知り、予定していたレコーディングの事などが頭を過ぎる。
しかしジョンガンもここが自分がいた世界とは違うことを朦朧とした意識の中、ココとすずの会話を聞いて勘づいていた。
ジョンガンは心を落ち着けるため
ゆっくりと深呼吸した。
ココはテーブルの上にパンとチーズを置き二人分の器を準備しながら話す
「すずがジョンガンさんのために1人で谷に薬草を取りに行ったんですよ!魔獣も平気だったみたいだし、すずって男みたいな」と言葉を続けようとしたところで頭の上にゲンコツが落とされた。
「このバカ息子がー!聖女様を呼び捨てで呼ぶのはやめろっていっただろーが!」
「イタッ だって聖女様は嫌だって、名前で呼んでって言うんだもん!」
自分が眠っている間にココとすずは随分と親しくなっているようだとジョンガンは感じた。
しかし、今の話しで思わず眉間にシワが寄る。
(すずさんが1人で谷へ?魔獣?)
ココからこの2日間の一部始終を聞いた。
その後もジョンガンが目を覚ますまでそばにいると言ってきかず、ほぼ寝ていないそうだ。
ジョンガンは足元で寝ているすずの頬に、擦り傷と手に青アザがあるのを見つけると、深い溜め息を漏らし、両手で自分の顔を覆った。
聖女様が現れたということで、王へ報告するために村の長でココの父親でもあるコルトは王都へと旅立った。
すずを助けたという灰色のローブの人間がどうも気にかかるということで、予定を早めての出発だ。
王都までは徒歩で山を2日かけており
そこから馬車で1週間くらい
(しかも天候が良くてトラブルもなくスムーズにいけて最短で1週間)
しばらくこの村で滞在することになり、のほほん生活のスタート。
すずは日々ココについて回り、パンの作り方焼き方を教えてもらったり、牧場での動物のお世話、家事手伝いを積極的にした。
ココの生活スキルの高さに驚いたが、小さい頃にお母さんが病気で亡くなってからは父コルトと2人暮らしをしているそうなので、もう尊敬の眼差しで見てしまう。
ココのお陰でいつお嫁に行っても大丈夫そうだ、とすずは感謝した。
ジョンガンはというと、目を覚ました日から
早朝ランニング→筋トレ→朝食→ランニング→洗濯物→1人でお出掛け→昼食→夕食手伝い→夕食→部屋で何かメモ書いてるor筋トレ
というルーティンを毎日繰り返していた。
ココと放牧している牛さん達を見るために歩いている時に見つけてしまったのだが、村の外れの林で歌いながらダンスの練習をしていた。
(しかも私の大好きな激しい曲調の「hack」
これがLIVEで流れるときの盛り上がりはハンパない。遠くからでも分かった)
ジョンガンにバレないように堪能させてもらった。
目に録画しました。はい。
高校生くらいだと思っていたココが13歳だと分かり、しっかりしてるなーと感心したが、一気に気が緩み何でも話せる友達になった。
「てゆーかさ、そもそも聖女様が女って決まってなくない?男でもありえるよね?」
すずの発言にココが声を出して笑った
「いや、女の人だよ(笑)お祖父さんも子供の頃に王都にいた聖女様は美しくて神々しかったって言ってたもん」
「ん〜でも湖から現れたのはジョンガンの方だし、どっちかとゆーとジョンガンの方が神々しくない?」
それには強くうんうんっと頷き、同意してくれたココ。
すっかりココはジョンガンのファンになっていたのだ。
実際に、ジョンガンが放つオーラは凄まじい
村の若い女の子から高齢の女性たちまで、やたらとココの家の周りをウロウロしている事をすずは知っていた。
目的はジョンガンだ。
この辺で黒髪、黒い瞳が珍しいのもあるかもしれないが、他の人とは違う何かにみんな惹かれている。
さすが、としか言いようがない。
この前も洗濯物を干していたマダムが、ジョギングするジョンガンの姿を干したシーツとシーンの間からジーっと熱い眼差しで見ていた。
「素敵…」と心の声まで漏れていたのだ。
(分かる!分かるよっっっ!!)
走ってるだけで皆を幸せな気持ちにするなんて…
尊すぎる。
そしてすずはコッソリとココにお願いしていた。
「ジョンガンは私がいた世界ではすっっっごい偉大な人だから、私よりもジョンガンを見守っててあげて!絶対に危険な目にあわせないように」
ココは素直に納得して「分かったよ」と返事をした。
「あと、一人でいる時間は誰も邪魔しないように村の人にもお願いしてもらえる?」
ココの素早い手配のお陰で、ジョンガンはリラックスした状態で村で過ごせているようだった。
その様子にすずはとても安堵した。
ゲームの牧場物語大好きです。