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26.告白


(…結婚かぁ…)


ライアン王子から結婚の説明をされ、すずは大きなため息をつきながら重い足取りで部屋を後にした。

とりあえず3日後には書類上で婚姻を済ませ、

2週間後に結婚式を行うらしい。

婚姻後はもちろんのこと外を自由に出歩くことは禁止され、顔や肌を極力露出しないように普段から布で隠す。そして基本的にライアン王子以外の異性と会うことも禁止ということも説明された。



(思ったより早いな…時間がない。ジョンガンにどうやって説明しよう…)


お城の長い廊下を歩いていると、窓から数名の女性達と音楽に合わせて外の園庭で舞を舞うジョンガンの姿が見えた。


この国では未婚の女性は肌の露出がかなり大胆で、既婚女性はほとんど目元くらいしか出ないような服装だった。

そしてジョンガンと舞を舞っている女性達は衣装のためもあるだろうが、胸の谷間やおヘソや太ももまで出ているかなりセクシーな服装だった。

ジョンガンもそれに合わせてか、腹筋がチラッと見える丈の素晴らしい衣装を着ていた。


(…はぁ…尊い。私の推しはいつ見ても完璧だ。)


美しい女性達の鍛錬された舞に引けを取らない艶やかな舞を舞うジョンガンを見つめる。


この舞が自分とライアン王子の結婚式で披露される事をジョンガンが知ってしまった時、どんな顔をするのか想像するだけですずは胸が痛くなった。



(結婚しちゃったら、もうジョンガンとも会ったり話したりも出来なくなるんだ…ジョンガン…)


すずは空を見上げた。






そしてその夜、突如として事件は起きた。

寝ようと思ってベットに横になっていたすずの部屋に、息を切らしながらグレンが訪ねてきて一言言った。


「王が倒れた」


長い間、国のために生力を費やし聖女を待ち続けていたラーサイン王。

聖女の祈りが成功した報告を受け安堵したのか、一人で外出したいと言い馬に乗り去り、先程そのまま森で倒れているのが発見されたそうだ。

そのまま意識が朦朧とした状態が続いているらしい。

グレンの治癒魔法も効果はなく、そういう場合は寿命を迎えるという事らしい。


グレンが口を開く。

「お前とライアン王子の婚姻が明朝になった。」


「明朝!?」

(そんな急に…)


「今からジョンガンの部屋へ連れて行くから話しをするんだ。私が他のものに気付かれないよう見張りをする」



グレンの予想外の行動に正直驚いたが、優しい思いやりを感じつつすずはグレンの後ろに着いて行った。


広い城の庭を歩き、城から離れた下働きの者達が暮らす建物へと案内された。

薄暗い廊下を進み1つの部屋の前で止まった。グレンに促され扉をノックするとジョンガンが驚いた顔して扉を開けてくれた。

そしてただならぬ二人の様子に察したのか、すずだけ部屋に入るように声をかけた。


二人は立ったまま話しを始めた。



「一体こんな夜にどうしたの?」



すずは王が倒れた事を伝えた。


「そうだったんだね…グレンの魔術でも寿命を延ばすことはできないんだね…」


少し二人の間に沈黙が流れる。

そしてすずが口を開く。


「そういえばジョンガンにお礼が言いたくてっ」


ジョンガンはすずの目を見た。


「私が祈りをしてる時、ジョンガンのピアノが聴こえてきて落ち着くことができたよ。ありがとう」


「うん。聴こえるといいなと思って演奏したんだ」


部屋はロウソクの明かりだけで薄暗く、風が吹くとゆらゆらと部屋の壁の模様を幻想的に照らした。



「それと…これからジョンガンと会えなくなりそう」

すずは呟くように話した。


ジョンガンの顔つきが変わる。

「どうして?」


重い空気の中すずは言葉を続ける。


「ライアン王子と結婚することになったんだ。形だけだけど…そうすればアーべラス王国との戦争も起きないし全部が丸く収まるんだって。」


部屋の中はとても静かで、ジョンガンはずっと無言だった。


すずは反応が怖くて壁の模様を見ながら話しを続けた。


「あっあと禁書庫も王族になるから見せてもらえるんだ。元の世界へ帰れる方法を調べ」


ドンッと言葉を遮るようにジョンガンが壁を叩く。


すずはその音にビックリしてジョンガンの顔を見た。

目を見開きこちらを凝視し、とても険しい顔をしていた。



(やばい…今まで見たことないほど怖い顔してる…かなり怒ってる…)



しばらく沈黙が続いたあとジョンガンが口を開く。


「それですずはいいの?好きでもない人と結婚するんだよ?」


その言葉を聞いてカッと頭に血がのぼる。

(嫌に決まってるじゃん!!)

しかし言い返せなかった。自分で決めてしまった事だ。ジョンガンにとっても、この世界にとっても1番良い選択をしたはずだ。

(私1人が我慢すればたくさんの人を守ることができる)

スーっと怒りは消え、すずの胸に悲しい気持ちが込み上げてくる。





「すずが好きだ」




ジョンガンが言葉にした。



すずは一瞬、何を言われたのか理解出来なくて頭が真っ白になった。しばらくしてから「え?」と呟いた。



「本当は伝える気なかったんだ。

この世界じゃ僕は何も出来ない。

守られてばかりだったから…

だけど好きでもない相手と結婚なんて許せない。

アーべラス王国まで2人で逃げよう。」



すすがジョンガンの顔を確かめるように見ると、先程までの怒りの表情は消え、不安そうな子供みたいな顔でこちらを見ていた。


ジョンガンはすずにゆっくりと近付いて背中に手を回し強く抱き締めた。


ジョンガンの胸から聞こえてくる鼓動はとても早かった。


(ジョンガンが私を好き…?

どうしよう…嬉しい…だけどッッ)



すずはこの国を移動しながら見てきたものを思い出していた。

路頭に迷う人々。たくさんの魔獣。


(本当はこの胸の中にずっといたい。

だけど現実的にこの荒廃した国を2人で逃げ切れる?魔獣と戦える?

戦争になればまた悲しい思いをする人達がどっちの国にも増えてしまう………)


すずの目いっぱいに涙が溜まる。


力強く抱き締めてくれているジョンガンの背中にすずも手を回し力を込めた。


そして仕舞い込んでいた気持ちを伝えた。


「私もジョンガンが好きだよ。

…ごめんね…好きだから守りたいの。他に方法が思いつかない…」


その言葉を聞いたジョンガンはすずの頬を両手で優しく包み込みキスをした。


すずの頬を涙が伝う。


強い風が吹き込み部屋のロウソクが消えた。



2人の唇はお互いを確かめ合うように離れては近づき、何度も優しく触れ合った。



外から扉をノックする音が響く。

「…時間だ。」



そのグレンの声に2人の動きがピタッと止まる。

すずはジョンガンの手を振りほどき扉を開け小走りで出ていった。


扉の前で待っていたグレンはすずのあとに続き歩みを進める。



暗い部屋の中で1人取り残されたジョンガンは壁にもたれ掛かり、そのまま床へずれ落ち座り込み項垂れた。















ELEVENのダンス担当 イ・ソジュン 身長180cm

リーダーのリソンとは同じ年齢でソウルメイトと公表するくらい仲が良い。練習生時代に致命的にダンスが下手くそだったリソンを助けたのがソジュンだそうだ

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