20.タタタッタ〜
その日の夜、すずは浅い眠りを繰り返しては何度も起きてしまった。
まだ日が昇らない明け方、すずはこれ以上横になっているのも辛くなり、ベットから体を起こし寝ているジョンガン達を起こさないようにそっと部屋を出て庭へ向かった。
建物の壁際に子供の椅子が並べられているのを見つけると腰を下ろした。
アーべラス王国もライガル王国も聖女を求めている。早く元の世界へジョンガンを戻してあげたい。
戦争…魔獣…
はーっと大きなため息をつきながら空を見上げた。
雲がかかり星が見えない。
深呼吸して気分転換に歌を歌ってみた。
ELEVENの日本語曲でゆったりとしたバラード曲「君の声」
「タタタッタ〜」すずは誰も聞いてないのをいい事に前奏から歌い始めた。
カラオケで友達と何十回と歌った歌なので歌詞もすべて覚えている。
曲のサビ部分に入る前に(あっジョンガンのパートだ)と気がつき感情を込めて歌い始めたすずの声に被せてジョンガンが歌い始めた。
「!?」
すずが横を見上げるとジョンガンが続きを歌いながら隣に座った。
(うぉ〜〜恥ずかしすぎるっっ
けど生歌やばいっっ!!!
うますぎる!!!)
すずは真っ赤になった頬を両手で抑えながらジョンガンの歌声に耳を傾けていた。
そして歌が終わったと同時にすずは拍手を送りながらジョンガンをジトっとした目で見てしまう。
(いつから私の歌を聞いていたんだろう…前奏からなら恥ずかしくて死ぬ…)
そんなすずの顔を見てジョンガンが笑いながら声をかける
「すず歌上手い!よくこの歌を知ってるね。デビューした頃の初めての日本語曲なのに」
すずはドキッとした。
(そういえばファンとはバレないようにしようと思ってたんだ)
「うん…友達が好きでよくカラオケで歌ってたから覚えたんだ。私この歌の歌詞が大好きでさ。」
「君の声」の歌詞の「君」はELEVENのファンとも解釈できて、ファンの声がELEVENの力や励ましになるんだ!っと思い、掛け声を一生懸命練習したのをすずは思い出した。本当に大好きな歌だった。
その言葉を聞いたジョンガンの笑っていた顔が真剣な顔に変わり、すずを見つめたのでドキッと胸が高鳴った。
「この歌は僕が歌詞を書いたんだ。大変だったけど日本語をすごく勉強して…嬉しい。」
ジョンガンのはにかんで笑う顔にすずは血圧が上昇するのを感じた。
(ダメだ…そんな顔で見つめられたら身が持たない…)
すずは話題を変えた。
「私の声がうるさくて起きちゃったかな?起こしてごめんね。」
「違うよ。昨日からずっと1日寝てばかりでそんなにたくさん寝られないよ。すずが部屋を出たのが分かったから来てみた。」
(…と、いうことは前奏から聞かれていた可能性大…恥ずかしすぎる)
すずは下を向いた。
ジョンガンが優しく声をかける。
「今日ずっと元気がなかったから気になってたんだ。だけど歌が聞こえてきたから安心した。」
ジョンガンがまた笑顔を見せたので、すずもその顔を見て気持ちが楽になってくるのを感じた。
「うん…色々と考えちゃって。心配してくれてありがとうね。」
ジョンガンは自分の事をよく見ていてくれて気にかけてくれている。素直に嬉しいと思った。
そしてすずはグレンが言っていた島国の聖女が消えた話を伝えた。
もしかしたらライガル王国で何か手掛かりが掴めるかもしれない。そんな希望もでてきた。
そして椅子に座り話し込んでいた2人を朝日が差し込み照らした。
いつもお世話になっています。作者です。
私もよく家で大きな声で歌うのですが、この季節窓を開けて歌っていると外からかなり聞こえていると知り恥ずかしい思いをしました。
ジャスティン・ビーバーのオフマイフェイスを上手に歌いたくてめちゃめちゃジャパニーズイングリッシュを読んで練習してました。




