17.夢の中の討論会
数日前にリシャール家で起きた誘拐事件について
アーべラス王国の王宮で会議が始まった。
王や国の大臣たちが集まり物々しい雰囲気だ。
側近「報告致します。森の中で馬車が発見されました。中には男性用の黒いコートと聖女様が着ていたドレスが発見されました。ドレスは袖部分が斬られ血に染まっていました。」
部屋の中がザワつく。
側近「ライガル王国との国境付近だったため、山を超えライガル王国にすでに入ったと思われます」
王は深いため息をつく。
側近「リシャール家にいた貴族、護衛、下働きの者たちに負傷者はおらず全員の無事が確認されました。」
一人の恰幅の良い男性が声を荒らげながら話しだす。
外務大臣「大勢を一気に眠らせる高度な魔法を使えるのはこの世界に1人しかいません。ライガル王国の銀狼に間違いありません!ライガル王国にすぐ使者を送ります。この国に対する侮辱だ!!」
防衛大臣「まだライガル王国と決まった訳ではありませんよ。ここは冷静に動かないと戦争になるかもしれません。」
外務大臣「元々は魔法対策の護衛を準備していなかったあなた達の責任ではないですか?平和ボケしすぎじゃないですか?」
防衛大臣「過去に聖女様の為にそこまで護衛の準備をした例はございません。今回、どこで聖女様の情報が漏れていたのか…」
側近「谷で聖女様を魔獣から助けた灰色のローブの男がいたそうです。ずっと聖女様を見張っていたと考えられます。逃走の段取りの良さといい、かなり念入りに準備されていました。」
部屋の中が静まり返る。
そして王が口を開いた。
王「今回の事は私の責任だ。誰も予期せぬ出来事だった。国民に死傷者が出なかったことが唯一救いだが、今は聖女様の無事を祈ろう。
各国へ使者を、包み隠さず、ありのままの出来事を伝えて聖女様の情報を集めるのだ。」
一同は返事をし王へ一礼をしてから各々部屋を出ていった。
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すずは眠りながら夢を見ていた。
すずの頭の中の会議室で、自分と小さくなったミニすず数名が椅子に座り討論会を開いている変な夢を。
司会ミニすず
『えー今回のテーマはグレンの「あの男は他人ではないのか?なぜそこまで守る必要がある?」
この質問に対して 「私の大切な人」
と答えたすずをみなさんはどう思いますか?』
ミニすず①「正直なところさ…もう完全に好きでしょ?」
すず本人「いやいや」
ミニすず②「てかもう完全にジョンガンも私のこと気があるのは確実やんっ」
すず本人「いやいやいや」
ミニすず①「最近のジョンガンの距離感かなり近いし、アルベルトのエスコートで一緒に歩いただけで機嫌悪くしてたもんね〜ヤキモチ?」
すず本人「もう!!だからっ違うって!!彼は韓国の人だから友達なら男女関係なく肩組んだり触れ合いが多いの!日本とは違うの!向こうは芸能人だよ!?私のこと好きになるはずないじゃん!!」
司会ミニすず「えー確認ですが、どうしてそんなに否定的なんですか?ずっと推してたアイドルに好意を持たれる、単純に嬉しいと思うのですが?」
すず本人「…」
ミニすず②「まぁ分かるわ、それが勘違いだった時に恥ずかしいし悲しい気持ちになるやんっ!それが嫌なんでしょ?」
すず本人「…うん」
ミニすず①「んーーまぁ気持ちは分かる!自分のことだもん。傷つくの怖いしダメになったときに立ち直れない気がするよね。笑」
すず本人「…うん」
ミニすず②「でもそうやって今までだって相手の好意に気がつかないふりしてスルーしてたやんっ!そんで彼氏できんやん自分」
すず本人「ゔ…」
司会ミニすず「と、いうことは?今までも好意をもってくれていた人がいたのに気がついてないフリをしていたということですか?」
ミニすず①「そうそう!職場のレントゲン技師の鈴木君と、リナの彼氏の友達の蓮君と、あと」
すず本人「ちょっと!!止めてよ!本当に怒るよ!!?」
司会ミニすず「…私達はあなたです。あなたのことを心配しているんですよ。あのルイーゼお祖母様が言っていたように、あなたはあなた自身の幸せのために行動してください。」
パチっと目を覚ましたすず。
ベットから体を起こし額の汗を拭った。
(なんて変な夢を見てたんだ…)
部屋の中は黒装束2人のイビキが響いていた。
グレンもベットで横になっていて、ジョンガンも眠っているようで寝息が聞こえる。
(あなた自身の幸せのため…か。自分よりジョンガンの方が大切だから大切な人って答えたけど…
それって好きを超えて…愛?
ゔぅーーー重い女だな…自分が重いよー)
もう一度ベットに潜り、布団にくるまってもがくすずであった。
寝てる時に頭の中を整頓してくれてるんですよね。
すずもそろそろいい加減アラサーなんだからハッキリしろよっと思っちゃいますよね。




