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15.モフモフ魔獣



灰色のローブの男に「ここで一晩過ごす」と言われて入った建物は、廃墟となった街の中心部にある塀に囲まれた軍事施設のような建物だった。

大砲のような形のもの、破損した武器であろう物が散らばり落ちていた。



ジョンガンは背中に乗せていたすずをおろし、2人は床に座り込み一息ついた。

そんな2人に近付き灰色のローブの男が話しかける



「何があっても絶対にこの建物を出るな

この辺りは魔獣が出る

小柄で素早い厄介な魔獣だ」



説明しながら灰色のローブの男はすずとジョンガンに飲み物と干し肉と木の実のような物を手渡してきた。


「食べたら眠ることだ、明日の朝すぐ出発する。

すでにここはライガル王国内、逃げようなんて考えはしないように。」



言い終えると灰色のローブの男はどこかへ立ち去り、その後ろを黒装束2人もついて出ていき広間にはすずとジョンガンだけになった。



渡された干し肉をジャーキーのようなものだと予想して食べたすずだが、少し獣臭い、そして塩辛い。

だが自分の体には血が足りてないと思い一生懸命に口を動かし食べた。

(顎が疲れる…)

そして歩いている途中で目に入った景色を思い出していた。

ここはかなり大きな街であったのだろう、3階建てのレンガの建物や商店街なども見えたが、ガラスは割れ屋根や壁に大きな穴があき、酷い匂いが漂っていた。

戦争があったのだろうか、魔獣に襲われてしまったのだろうか。



すずはジョンガンに聞いてみた



「逃げるのは無理そうだよね?」



ジョンガンも干し肉を噛みながら考えていたようだった。



「…うん。ずっと道がない所を進んでたから、きた道を戻るのも難しいと思う」



「そうだよね…魔獣も出るって言ってたし、あと私今更だけどすごい心配なことがあって…」


ジョンガンはすずに体を向け「なに?」と聞いた。



「聖女様って具体的に何したら力を発揮するのかな?」


ジョンガンは目をパチクリさせた。


「え?ココに聞いてないの?」


すずは少し困った顔で答える。

「聖女様が魔獣を浄化する力を持ってるって説明は聞いたけど、具体的に何するかは王都についたら分かるって言われただけで、知らないんだよね…

これでもし私が力を発揮できなくて聖女様じゃないってなったらどうしようって…今更だけど」



(そしたらこのライガル国は用無しになった私とジョンガンをきっとすぐに殺すだろうか)


楽観的に捉えていた今までとは違って、ジョンガンの命がかかっているこの状況に身震いがした。



ジョンガンは何も言わずにすずのすぐ横に座り直した。


すずはドキッとした。

近頃ジョンガンと触れ合う機会が多くて慣れてきてはいるものの、改めて近くにあのアイドルのジョンガンがいると意識すると緊張して落ち着きがなくなってしまう。

すずは立ち上がって床に落ちていた錆びた剣を手に持った。



「剣の練習しようかな」



試しに両手でかまえて振り上げてみるが、予想以上に重くて足元がふらついた。

素早くジョンガンは剣を持った手を掴み、すずの体を後ろから支えた。


「この剣は重くて危ないよ

まだすずは体調良くないから座ってて」


ジョンガンの言葉にすずは頷き素直に座った。

そしてジョンガンはすずが持っていた剣を構えて素振りを始めたのだ。

動きが素人ではない。



「剣道やってたの?」


「子供の頃にコムドやってた

日本の剣道みたいな感じだね」



なんとまぁ、本当にこんな完璧な人間が存在するんだとすずは思った。

ジョンガンならきっとスポーツ選手にもなれていただろうと確信したすずだった。

すずは目に焼き付けるように素振りをするジョンガンを見つめていると、上の階で物音がした。

その音はどんどん大きくなって人の声もする。



また前のときと同じ嫌な予感がして、ジョンガンとすずは階段を探し上の階へと上がる。

そこは屋上になっていた。

端っこの方で先程まで行動を一緒にしていた、黒装束の一人が手を抑えて座っている。


「どうしたんですか?」


とすずが声をかけるとジョンガンに腕を掴まれた。


「待って、何かいる」


広い屋上を見渡してみるとキラリと光る瞳がこちらを見た。

見た目は柄のないヒョウのような大きな猫のような黄色の動物が2匹。


(猫ちゃんみたい!モフモフで可愛い!)


呑気なすずが笑顔を見せると


「魔獣に近付くな!

グレン様を呼んできてくれ!」


黒装束が叫んだ。



グレン様とは灰色のローブの男の名前だろうかと予想したが、黒装束の抑えている手からは血が流れているようだった。

すずは階段を降りて助けを呼びに行ったほうがいいのか悩んでもう一度魔獣の方確認した。が、魔獣はこちらを睨んではいるが一歩も動こうとしない。


不自然に思ったすずが二匹の後ろ奥に目を凝らして見てみると、数匹の赤ちゃん魔獣がいたのが見えた。

それはもうめちゃめちゃ可愛くて小さくてモフモフでピニャーと鳴いている。

もはやただの猫だ。

すずは思わず微笑んで声に出してしまった。


「可愛い!子供を守ってるだけなんだね!」

「ごめんねー何もせずに出てくからねっ」


すずは笑顔を見せながら魔獣と目線を合わせるためしゃがみこみ、端っこで座り込んでいる黒装束を手招きしてこちらに来るように指示した。


黒装束は恐る恐るゆっくりと壁伝いに歩き

すずとジョンガンの元へとたどり着く。


「ビックリさせてごめんね」


3人が目線を合わせたままゆっくりと階段を下りる始めると、2匹もクルリと背を向け子供の方へと歩いていった。


その様子にすずは安心して黒装束に声をかける。


「あんな可愛い魔獣さんもいるですね!

手の怪我は大丈夫ですか?」


黒装束は鼻で笑いながら「変な聖女がきたもんだ」

とボソッと話した。


(変な?どこが!?)

と聞きたくなったが、階段を下り終わると3人の目の前にグレンが立っていた。


「何匹いた?始末する」


と言い、すず達をよけて階段を登ろうとしたグレンの腕をすずは掴んだ。


「ちょっと待ってください!

あの魔獣に危険はないですよ!

子供を守ろうとしてただけなんです」


「できる限り始末する事になってる」


「だから魔獣が人を襲うようになるんですよ!

こっちが何もしなければ魔獣だって何もしてこなかったですよ!

それよりもこの怪我を治してあげてください」


すずは黒装束さんの手を指さした。


グレンはまた不思議そうな顔をしたが

すずに言われるがまま光る魔術で手の傷をあっという間に治した。




ELEVENのビジュアル担当キム・ペジュン身長179センチ

美しい顔世界ランキング1位(男性部門)をとったことがあるほど彫刻で彫られたような美しい顔をしている。事務所の方針で最初はクールな性格を演じていたが、素は不思議ちゃんな性格で女性ファンが1番多い

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