14.番い
馬車が到着したのは森の奥深く
これ以上は馬も通ることが出来るか出来ないかくらい木々が生い茂っている場所だった。
用意された動きやすい服に着替え、灰色のローブの男に言われるがまま馬車を降りたジョンガンとすずは、息をつく暇もなく森を進むように命じられた。
先頭は黒装束の2人で真ん中にすずとジョンガン、その後ろを灰色のローブの男が歩く。
木々が生い茂る山道は歩きにくく、枝を避けてくぐったり、急な坂を登ったりかなりの体力を消耗した。
剣で腕を斬られた時にたくさん出血し、まだフラフラする体を気力だけで進むすずをジョンガンが肩を支えながら歩いていた。
「ジョンガン…ごめんね」
「謝らないで
ありがとうでしょ普通」
「うん…ごめんね…ありがとう」
黒装束達はどんどん道なき道を進むため、ジョンガンとすずがついて行けず遅れをとると「早く進め!」と急かされる。
しばらく進んだ先、すずは木の根に躓きガクッと膝から倒れてしまった。
ジョンガンが起こそうと手を貸すが立ち上がることが出来ない。
すずの体は限界を越えていた。
「んっ乗って」
しゃがみこみ背中に乗るように促すジョンガン
「いいの?重いよ…本当にごめんね」
首に腕を回し背中にもたれ掛かるすずを、ジョンガンは足を支えスッと立ち上がり歩き始めた。
「重いっ重いっ」
ジョンガンが笑いながら言った
「ヒドイ…けど本当にごめんね」
ジョンガンの美しい首筋に汗が流れている。
背中も汗をかいているのが分かったし、呼吸も荒いのが伝わってくる。
馬車の中でも優しく声をかけてくれ、膝枕もしてくれた。ジョンガンに沢山助けてもらって申し訳ない気持ちと自分にどんな恩返しが出来るか考えた結果、すずが提案した。
「元の世界に戻ったら、私を雇ってね
雑用でもボディーガードでも何でもやるし命がけで守るから」
ジョンガンが答える。
「今も守ってもらってるよ」
そんな2人を後ろから不思議そうな顔で見ている灰色のローブの男は
汗一滴としてかかず涼しい顔で爽やかに歩きながら話しだす
「2人は番いか?」
すずの頭にクエスチョンマークが浮かんだ。
「つがい?それって夫婦かってことですか?」
(ジョンガンと夫婦に見えたのか?
そんな…照れる…)
内心ちょっとフワフワする嬉しさが込み上げてくる。
「違う」
ジョンガンがズバッと答えた。
(…ですよね)
すずは時間が立つにつれて図々しくなっているようだ。
森を抜けると2人の目に遠くだが建物が見えた。
「あそこで今日は休む」という灰色のローブの男の言葉にジョンガンの歩くスピードも上がったが、その建物が近付くにつれ何か分かってくると、どんどん足取りが重くなる。
そこは廃墟となった街だった。
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ライガル王国の王都は元々武器や魔法具を作る職人が集まり栄えた街であった。
その高性能な武器や魔法具は他国からも評判が良く常に注文が殺到していたため国の主な収入源となっていた。
製法は密かに弟子たちによって受け継がれており、流失を防ぐため長年国交の少ない国でもあった。
しかし、時代とともに戦争も少なくなり、魔獣との共存を理解する国も多くなったため、ライガル王国の武器は需要がなくなってきていた。
ラーサイン王はそんな国の危機を救うため、ドラゴンなどの魔獣から採取できる貴重で高価な魔石を使った魔法具に重点を置き、国をあげて魔獣狩りを命令していた。
が、それが過ちだった。
凶暴化した魔獣は地方の街や人間を襲い、今ではライガル王国の人口は全盛期の半分まで減り、国は衰退していた。
そしてライガル王国の王の間で
若い青年の声が響いた。
「ラーサイン王!!お待ち下さいっ」
1人叫ぶのはこのライガル王国の第一王子ライアン。
その声を無視して部屋を出ようと歩いているのはライガル王国国王。
「お待ち下さいっ!!
お待ち下さいっ!!父上!!」
その言葉にラーサイン王は足を止める。
「他国から聖女を連れてくるなんて私は反対です!!戦争になるかもしれないのですよ!?この国はこのままじゃ」
「口を慎め。」
王の言葉にライアンは喉まで出かけていた言葉をグッと堪える。
「戦争になって滅びるか?
何もせずに滅びるか?
どんな方法だろうと私は諦めずにこの国のためだけに進む
気に入らないなら私を殺してお前が王になれば良いだけだ」
ラーサイン王は真っ直ぐ前を向いたまま話し終えると王の間を出ていった。
残されたライアンは腰に掛けていた剣を握りしめていたが、ゆっくりと手を離して自分の顔を覆った。
ブックマーク5件になってました\(◎o◎)/
読んでくれてありがとうございますm(__)m
ジブリオタクなのでジブリパークが完成するまで死ねないと思っている作者です。




