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11.ピアノ終わりと始まり



アルベルトの腕に手を添えたまま、豪華な屋敷の中を歩き会場へと向かう。


廊下の壁には人の絵がいくつも飾ってあり、ブロンドヘアの美男美女ばかりなので、まさか一族の肖像画なのか?とすずは思った。



会場の扉を開けると天井の高いホールで目の前に下る両階段があった。

キラキラと輝くシャンデリア、白い床には赤い高級そうな絨毯が敷かれている。

花なのか香水なのかぶわっと色々な香りがして酔いそうになった。


2階から見下ろしたフロアにはドレスアップした沢山の貴族たちがグラスを片手に雑談したり立食を楽しんでいるのが見えた。

すずはまるで映画のワンシーンのように大理石の階段をエスコートされゆっくりと降りる。

お客さん達の視線がこちらに集中している気がして肩に力が入った。



すずが階段を下り終わると音楽が流れ始めた。なんとピアノとバイオリンの生演奏だ。


そこからは代わる代わる色々な貴族たちがすずの元へ挨拶に訪れた。


「お会いできて光栄でございます」


「ぜひ、お見知りおきください」



愛想だけはピカイチのすずは、ずっと笑顔で対応して頬の筋肉がぷるぷると震える。

飲み物に口を付ける事も出来ないまま時間が過ぎていった。



リシャール家の現当主、アルベルトの父親アンドラス・リシャールはブロンドにグレーの髪が混ざったかなりのイケオジだった。

この世界は美形が多い、自分の顔が平々凡々すぎて嫌になる。



人の波が落ち着いてきて、ふと視界にココの姿が入る。

隅の方で椅子に座ってカップケーキを食べているのが見えて(私も食べたい)と思いつつ小さく手をヒラヒラ振ると、ココも振り返してくれた。

その後ろで大きく足を開いて椅子に座っているジョンガンが見えた。

かなり不機嫌そうに見えた。

こういう場は苦手なんだろう、本当に人見知りなんだなとすずは思った。


そんなジョンガンの周りには若い貴族のレディー数名が壁に立ち、ジョンガンの方へ熱い視線を送っている。

どこへ行ってもジョンガンはモテモテで、特に今日は色気がすごいからあんな不機嫌そうでも周りには女の子が絶えない。



この世界でもアイドルとして生きていけそうだ。

さすがだな……と心の中で拍手を送った。




そしてずっとそばにいてくれたアルベルトが、タイミングを計って祖母ルイーゼの元へと案内してくれた。

車椅子に腰掛けお付きの人が後ろに立っている。

髪と肌は真っ白でワンピースと口紅はピンクを身に着けていて、小柄で可愛らしいおばあちゃんだ。アルベルトがお行儀よく挨拶をしルイーゼの耳元で何かを話すと、それに頷いてすずの方を見ると微笑んで声をかけてくれた。


「聖女様

お会いできて嬉しく思います」


すずは深々とお辞儀を返した。


「こちらの世界の勝手な都合で召喚してしまい、聖女様の世界の家族のことを思うと心が苦しくなります」


そんな風に元の世界の家族のことを気にかけてくれる人は初めてで、驚きと嬉しさで言葉が上手く出せず、ジワっと目に来たものを堪えてそのまま耳を傾けた。


「リシャール家に嫁いだ聖女様が残した日記を読んだ事があります。リシャール家に嫁ぎ子供にも恵まれて幸せな一方で、とても苦悩に満ちた人生だったようです」


すずは聞いてみた

「苦悩とは…どうしてですか?」


ルイーゼはゆっくりと話しだす


「元の世界の両親、双子の妹、恋人に会いたいと…亡くなる最後の日まで書いてありました」


(元の世界に恋人がいたんだ…)

会いたい人に会えずに死を迎えた聖女様の事を考えると胸が痛んだ。


ルイーゼは話しを続ける

「この国は現在、幸せなことに平和で恵まれています。

あなたはあなた自身の幸せのために。

諦めないで行動してください」


すずは「はい」と力強く返事した。


ルイーゼは話し終えると「失礼します」とお付きの人に車椅子を押され自室へと帰っていった。


帰ってゆく姿を見送りつつ

(あ、聖女様の日記読ませてくれないか聞いてみればよかった…)

(あ、恋人の存在をリシャール家の旦那様は知ってたのかな?どうして結婚したんだろう?)

など、あとになって気になることが沢山出できてしまった。

すずはいつも後になって思いつくことが多くその場でチャンスを逃してしまう事が多い。


そんな後悔をしていると、部屋を出ていくジョンガンの姿が視界に入ったので、すずも後を追って部屋を出た。


長い廊下を歩いてジョンガンを探すが見当たらない。


迷わないうちに会場に戻ろうと足を止めると、ピアノの音がした。

音のする部屋の扉を開けると、薄暗い部屋の中、窓際にピアノが1台置いてあり、ジョンガンがピアノを弾いていた。


(ピアノ弾けるんだ。完璧すぎる。なんでそんなにかっこいいの?)


すずに気がつき手を止めたジョンガンは、椅子から立ち上がったが無表情で機嫌が悪そうだ。


「ピアノも弾けるんだね」

すずがそばまで歩きながら話しかけるが無言だ。


「この世界って沢山の美形がいるけど、ジョンガンが1番かっこいいよ。今日の服装も髪型も似合ってるね」


すずはお世辞抜きで本心を伝えた。


するとジョンガンは

「でしょ?」とドヤ顔をしたのだ。


その顔にすずは胸を撃ち抜かれた。

今の顔は反則でしょ…


熱くなった顔をパタパタ仰いでいると、ジョンガンが口を開く


「今日のすず、とても綺麗だよ

僕が1番に言いたかった」


ジョンガンの言葉でさらに顔が熱くなってしまったがすずはお礼を言った。

「ありがとう、嬉しい」


本当に嬉しくて顔がニヤけてしまう。

そんなすずを見て満足そうな顔のジョンガンが

お願いをしてきた。



「この世界に来てから曲を作ってたんだ

すずが1番に聞いてくれる?」


もちろんっとすずが返事をすると、ジョンガンは椅子に座りピアノを演奏し始める。



切ないメロディーのバラードだった。


まだ歌詞はついてないが、ジョンガンがハミングで歌いながら演奏している。


まるでジョンガンの今の心の声を演奏しているかのような

息が詰まりそうな

でも綺麗で儚く強さがある



(なんだろうこの気持ち

胸が締め付けられる)


ジョンガンを守ってあげたい


抱き締めてあげたい





すずの中に今までとは違う感情が芽生えたその時

遠くで悲鳴が聞こえた












ここから少しシリアスになりそうです。

ブックマークしてくれている2名様といいね押してくれた方のために

頑張りますので応援よろしくおねがいしますm(__)m


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