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10.メイクアップ



 今までの汗水垂らしての旅と大きく変わり、派手な馬車に揺られながらの優雅な旅となった。



迎えにきてくれたアルベルト・リシャールは、かなりの美青年でザ貴族という見た目だけあって、本当に気品に溢れている。


王宮からの手紙で私達一行がナータに来るのを知り、速やかに安全に合流地点であるアルタイへと送るように依頼されたそうだ。



「聖女様にお会いできて光栄でございます」

「いえいえ、こちらこそご丁寧にありがとうございます」


硬い挨拶が続く中、リシャールという聞き覚えのある名前に、すずはすぐ質問した。


「本で読んだのですが、昔の聖女様がこの世界のリシャールという貴族と結婚したと書かれていたのですが」


「はい、4世代前の祖母が聖女様であったと聞いております」


本に書かれていたことが真実だった。

他に聖女様について知っている事はないかと尋ねると、僕よりも祖母のほうが詳しいとのことだ。

アルタイのリシャール家に今も健在らしく、聖女様の歓迎パーティーを予定しているので、その時にぜひ聞いてみてくださいと言われた。




ーーーーーーーーーーーーーーー



 馬車のお陰でアルタイまで何不自由なく到着した。

長い時間揺られていたので、少しお尻が痛くなったがさすが貴族様の快適な馬車だ。


アルタイは今までとは比べ物にならない大都市だった。整備された石段の道は複数の馬車や馬に乗った人達が行き交っている。

最初にアルベルトを見たときは笑ってしまったが、この街を歩く人は身なりに気を使っていて装飾品で着飾っているお洒落な人が多い。

そして貴族と庶民の違いが一目で分かる。

すずは自分のココから借りている服とボサボサに下ろされた髪とスッピンの顔を思い出すと、出来るだけ外から見えないように窓を覗き込んでいた体と顔を引っ込めた。



リシャール家の門の前にコルトの姿があった。久しぶりの父親コルトとの対面にココはガシッとハグをした。


王宮の護衛の方々とリシャール家の護衛の方々がお屋敷に集結しているので、敷地内は物々しい雰囲気だった。



リシャール家につくなり「こちらへ」とすずだけ別室へと案内され、数人の侍女さんにされるがままお風呂に入れられ、マッサージされ、人生で初めてのコルセットを着けられた。

「うっ」と声が出るほどギュッと締められ

(これじゃ何も食べれない…)とすずは思いながら、用意されたドレスに袖を通す。

髪は上品に編み込みシニヨンにしてくれた。

そして最後にメイクが終わり、侍女さんたちに

いかがですか?と鏡の前に連れて行かれ、自分の姿を見たすずは驚いた。


もうアラサーなので、派手なのは本当に無理です。地味な上品なドレスにしてくださいっっっとお願いしといて良かった。

色はホワイトベージュで形はAライン、鎖骨はガッツリと出ているが、胸元から腕は上品なレースであしらわれ適度な透け感で超絶好みのドレスだ。

そしてこの数日間で痩せて全体的にスッキリとしている自分。

そして久しぶりにお化粧した自分の明るい顔、唇。

かなりこれは綺麗に出来上がっているのではないか?

と自画自賛してしまった。


侍女さん達にお礼を伝えたと同時に

部屋にノック音がしてココが入ってきた


「わっすず、すごく似合ってるよ!」


ココもフリルがついた白いブラウスに蒼色の長いコートと黒いタイツをお洒落に着こなして登場。

ココの瞳の色と合っていてとても似合っていた。



その後ろから登場したジョンガンを見て息を呑んだ。


白と金色のフリル付きブラウスにベストを着ていて分厚い胸板を強調している。

光沢のある黒い長いコート、ピッタリとした黒いタイツを履いて髪の毛はオールバックにまとめられ、男の色気がダダ漏れだ。

かっこ良すぎて見惚れてしまう。


部屋の隅で侍女さん達もヒソヒソとジョンガンのことを話しているのが聞こえた。


そしてジョンガンもすずをジッと見つめたまま無言だった。


すずは首を傾げて

「ジョンガンどうしたの?」と声をかけると、こちらを見つめたまま微笑んだ。

ジョンガンが何かを言いかけた時にアルベルトが部屋に入ってきた。


「とても美しいです聖女様

私にエスコートさせてください」


パーティー会場までご案内しますと言いながらすずの横に立ち、肘を曲げ脇に軽くスペースをあけて待っている。


(…ん?これどうしたらいいんだ?)


困りココに助けを求める目線を送ると、小さい声で

「手を添えて」

というので、言われたままアルベルトの腕のスペースに手を添えるとそのまま歩き始めた。


(到着していきなりパーティーなんて、マナーも分からないし不安すぎる…)


どうせならジョンガンと一緒に歩きたかったな…と思い、ジョンガンの方を振り返り見ると

コートのポケットに手をいれ仁王立ちしたまま背を向けていた。










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