9.パンデート
王宮からの指示で急だが村を出ることになった。
ここからアルタイという王都の次に栄えている街で、コルトと王宮の護衛達と合流することになったのは、やはり灰色のローブの存在がきな臭いので安全のためにという事だそうだ。
それと、一緒に湖から現れたジョンガンも同行するようにと手紙に書いてあった。
ココとジョンガンとすずは、村の屈強な男性達数名と共に山を下りはじめた。朝ごはんを食べてすぐ出発したので、お世話になった人達にしっかりと挨拶もできないまま名残惜しいが村とお別れした。
すずは灰色のローブの人がなぜそんなに危険視されるのか分からず、歩きながら屈強な男性達に質問してみた。
「魔術ってみんな使えるんですか?」
残念ながらNOの返事がきた。
生まれて持った魔力がある者しか使えず、この国でも魔力があれば王宮に仕えることになるので、今は10人もいないのではないかという事だった。
(え?そんなに少ないの?)と、正直すずは思った。
そして確かに偶然私を助けたにしてはタイミングが良すぎる。かと言って、何が狙いで私を助けたのかも分からない。すぐ姿が消えたし。
怪しい人物だと今更気がついたすずであった。
天候にも恵まれて順調に川沿いに山を下るのだが、どんどん背の高い木々が増えてきて、森という感じになってきた。
村に居たときの肌寒さはなくなり、どんどんジメッとした暑さに変わってくる。
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村を出て2日後に到着したのはナータという隣町。
モスグレーの石造りの家が多く並び、ココの村よりもだいぶ栄えた街だと感じた。
歩いているとパン屋さんや日用品を売っている店を見かけ、すずは(後で絶対に行こう!!)とルンルン観光気分だ。
そんな様子のすずにココが気を利かせて、お買い物してから宿に行こうと提案してくれた。
「すず、パン屋さん行ってみよう」
「うん!行きたい」
私の心を読んだのか!?と1番にすずに声をかけてくれたジョンガンに驚いた。
2人で店に入ると、自分たちでは作ることが出来なかったクロワッサンや中にチョコが入ったパンなど菓子パンがたくさん並んでいる。
久しぶりの甘味に夢中で選んでいると、他の客や店員から好奇の目で見られた。
やはりジョンガンと私は異質な存在なんだろうと改めて実感した。
「これあと10個は食べれそう」
と、クロワッサンを食べ歩きしながらジョンガンが言うので
「私もあと20個食べれる」と共感した。
そして今更だが、少し前を離れてココ達が歩いているが、なんだか2人で並んで街を歩くのってデートしてるみたい…
急に意識して隣を歩く背の高いジョンガンを見上げる。
(本当にいつみてもカッコいい…)
むしろ元の世界で見ていたジョンガンより自然体で、今のジョンガンが1番好みかもしれない。
そんな目線に気づいてジョンガンがすずの顔を見る、そして急に声を出して笑い始めた。
「どこでパン食べてるの?」
そう言うと、すずの髪の毛に手を伸ばしパンくずを取ってくれた。
最近のジョンガンはこんな感じに距離が近くてドキドキさせられっぱなしのすずであった。
しばらく街を散策して思ったが、お店の人や歩いている人みんなとても雰囲気が明るくて笑顔が多い。
ココの村の人達もみんな良い人だったけど、負けず劣らずこの街もとても活気があって治安の良い街だと感じた。
すず達が宿の前に到着すると、入り口の前に
ドドーンと金で装飾された派手な馬車がとまっていた。
どこの貴族様が乗るんだろうとすずが近付いて見ていると、馬車の扉が開きくるくるブロンドヘアの美青年が執事と降りてきた。
服装は白いフリッフリしたボリュームのある襟つきブラウスにお尻まで隠れるコートに半ズボン。その絵に描いたような貴族の服装に思わず笑いそうなのをグッと我慢したすず。
そんなすずを余所に
貴族様は礼儀正しく話しかけてきた
「あなたが聖女様ですね?
お迎えに参りました
アルベルト・リシャールと申します」
未熟者の作者です。
本当に読みにくい小説で申し訳ないですが、最後まで読んでくれると嬉しいです。




