2話
書けるだけ書いてます
DL待ちに冷蔵庫からアイスコーヒーを取り飲む。
ゲームをやるのは久々だ。この一年は一切触る機会がなかったし、元々ゲームは好きだった。
二年前、とある事件がキッカケで医者を目指そうとしたので、それ以来調べものや連絡以外にスマホも触っていなかった。
「ん、終わったかな。」そこそこ長いDLが終了してスマホを確認した。
ファンタジー的なBGMが流れてタイトルが表示される。
さて、一つ言おう。これに手を出した俺はバカになった。何故なら凄まじくハマってしまった。
起きてすぐ、昼食を食べながら、深夜遅くまで、風呂にまで持ち込んで と。
従来のゲームを超えるグラフィック、ストーリー、ゲーム性ありとあらゆる物が面白い。
1vs1や4vs4で戦うPVP
装備品を獲得するID
強敵と戦いレアアイテムを狙う塔
動物や野菜を育てる牧場要素
自分だけの家を作るハウジングシステム
色々な要素があった。
中でも俺は戦闘に分類するものが楽しくて起きている間はずっとスマホを手放さなかった。
PVPで負け悔しくて装備やPSを見直したり、強力な装備を求めて装備集めを行ったり、春休み中毎日やっていた。
両親は何も言わなかったが、少し嫌そうな顔をしていたのを覚えている。
そして春休みはすぐ過ぎ二年目の登校日
俺は逃げに逃げてしまった。そして憂鬱だった。挫折した問題をすべて投げ捨てスマホをずっと触っていたのだ。
医者になる夢は諦められなかったが、何よりもこの数年抑えていた欲求が全て爆発してしまったかのように熱中してしまっていた。
「涼 今日は帰りが遅いからみんなの夕飯お願いね」
「わかった。いってきます。」
母に見送られ学校へ向かった。
Aクラスを覗いてみると前いた人数が半分になっていた。そしてBクラスにその半分の生徒が入っていたようで窮屈になっていたのを横目に確認した。
この日はクラス決めのみで、明日からそれぞれのクラスとしての活動が始まる。
迷いに迷ったが、無難そうなところでDクラスを選択した。
教壇に置いてある配置希望の書類を記入し、立っている教師に提出した。
午前を過ぎれば帰宅できる事になっている。
席決めは明日なので適当な所に座って、スマホを取り出しイベリスのアイコンをタッチして起動した。
流石に音声までは出せないので、マナーモードにしているが。
色々確認しIDにでも行こうかと思っていると
「初めまして、君もイベリスやってるの?」
女子に声をかけられた。顔を上げてみたら可愛いと噂になっている校内トップの女子だった。
「こちらこそ初めまして、明日葉涼です。春休み中に始めたばかりなんだけど、面白くて」
一旦スマホを切り返事をする
そんなコミュ障でもないと思うが、去年は両親としか話さなかったので少し緊張した。
「そうなんだ、私は柊秋菜。これ面白いよね私もやってるんだ。」
ずっと一人でやっていたこともあり、すぐに話が盛り上がった。
秋ー?秋ー? 他の女子が柊さんを呼んでいる
「ごめんね明日葉君、呼ばれてるからまた今度話してっ」
そういって彼女は去って行った。
続きをやろうとスマホを取り出そうとするとまたボッチルートに入るんじゃないかと考えた、が。
どのみち知り合いもいないし、知らない奴に話せるようなコミュ力もない。
引き続きやるか。
そう独り言を言い、帰れる時間までずっとゲームをしていたのだった。
◆
鍵を開けて玄関のドアを開ける。
「ただいま」
今日は母も出勤、父も泊まりとのことで誰もいない。軽く昼食を作りまたイベリスをやっていた。
昨日はPVPで完敗してしまったので、装備をなんとかしようとID前に来ると知らないプレイヤーからPTに招待された。
招待してくれたプレイヤーネームが画面に表示される。
「沙華?誰だろいきなり誘われるのは初めてだ。」
ずっと一人でやってきたので、知らない人とやるものいいかなと入ってみた。
ちなみに俺のプレイヤーネームは野草 苗字が明日葉という野草なので適当に考え付いた名前だった。
挨拶は基本ということでチャット画面を開き入力をする。
野草:よろしくお願いします
沙華:よろしく
野草:装備狙いなんですけど、沙華さんは何を狙いに?
沙華:なんか適当に
「誘ってきたのになんか素っ気ない感じだなこの人・・・」
どんな人かと思ってこの沙華って人のプレイヤー情報を見てみるとかなりのレア装備を持っている人だった。
レア装備は中々お目にかかれない。俺も狙って何度もIDを周回してるが全然出なかった。
レアが出やすい塔 というコンテンツは一筋縄じゃいかない難易度で、前提にそれなりの装備を必要としている為まだ入れなかった。
一緒にやってみるとこの沙華さんは凄まじいくらいに強いし上手かった。
クリアに10分ほどかかるIDをこの人と一緒にやるだけで5分で終わってしまう。
俺は寄生(楽して利益を得ようとする行為)に少しなりかけているんじゃ・・・と思いつつ、やっかいなモンスターに対しては沙華さんにヘイト(敵がどのプレイヤーに対して攻撃するかを決定すること)が向かないようにして立ちまわっていたりした。
恐ろしい速度で敵を倒す姿に少し憧れた。一緒に何度か同じIDを周回していると
沙華:あんまり装備強くないけどそこそこ上手いね
野草:ありがとう、ただ沙華さんが強くて俺足手まといになってるよね・・・
沙華:まぁ誘ったのあたしだし、別にいいけど
かっこいいなこの人と思いつつ時計を見るとすでに17時を回っていた。今日は帰りが遅くなるから夕飯を作っておいてと母に頼まれていたことを思い出しチャットで伝えると、了解 お疲れ様とだけ帰ってきたのでPTを脱退しスマホを切って、急いで買い出しに行き簡単に出来る豚の生姜焼きを作った。
21時頃に母が帰ってきたので漬けていた豚を取り出しフライパンで焼いてキャベツの千切り等を載せる
「相変わらず料理上手よね。お医者さんは諦めて料理人でもやっていけるんじゃない?」
母にそういわれるがなんとも釈然としない。
料理は母と一緒に作るのが好きだったので覚えたが、洗い物が得意じゃないという欠点があった。
「冗談、まだ諦めたわけじゃないし」
一つ溜息をされると
「あなたの人生だから、口うるさくは言わないけれど・・・」
と母がつぶやきTVのリモコンを押した。
「じゃあ俺部屋戻るから」
と二階にある階段を登ろうっていると、明日から学校なんだから夜更かししすぎないようにねー
とリビングから聞こえた
母さんすまない、もう少しだけ俺に自由をくれ・・・
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