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そこですか問題点はッ!?

乙女ゲームのない世界に乙女ゲームを説明するのは面倒

「……セバス。知らないの?」

 悪役令嬢を。

 知っている前提で話をされても。


「ええ。知りません。なので教えてください」

 尋ねないと話が進まないしなと仕方ないとばかりに下手に出て尋ねると、


「仕方ないわね。教えてあげるわ!!」

 胸を張って、任せなさいとポンと叩いているが、叩いてすぐに咽てゴホゴホと咳き込んでいる。


 うん。やると思ったよ。


「悪役令嬢というのは少女向けの作品。漫画とか小説とか乙女ゲームで主人公の敵として現れるキャラクターなのよ!! テンプレだと庶民とか男爵令嬢とかそんな身分が低い主人公を王族の婚約者になっている侯爵令嬢とかが虐めて虐めて虐めまくって最後にその悪事が婚約者である王子にばれて、処刑されるという流れね」

「……………いくつか分からない単語が出てきましたけど、何で処刑されるんですか。男爵令嬢を虐めるとかですよね。処刑って罪重くありませんか?」

 言っては何だが、侯爵令嬢と身分に差がありすぎる。そこは普通虐められても何も言い出せなくてという流れではないだろうか。


「虐める理由が王子様といい関係になって嫉妬をするパターンだからね。で、王子様が愛する主人公を守るために証拠を集めて、婚約破棄を言い渡す」

 今まで虐めていたからいい気味よねと言われて散々な目にあうのよ。


「…………そのいじめの内容は」

「そうね~。鞄を隠されたり、ドレスを駄目にされたり、個室に閉じ込めたり」

「みみっちい……」

 なんだそれは。


「あとは……礼儀作法とかで主人公が失敗するとそれを大きな声で話して笑いものにしたりしていたわね。たしか」

 恥をかかせていたわよ。

 思い出し思い出し説明をしてくるが、なんというか。


 子供か。

 そんな感想しか抱けない。


 いや、そもそも。

 お嬢様の発言からするとその主人公(?)とやらが婚約者である王子といい関係になって嫉妬に駆られるという流れだと言っていたよな。


「それ王子が悪くねえ………?」

 婚約者がいるのに他の女性にちょっかいを出して蔑ろにしているんだよな。


 浮気だろう。

 政略結婚もあると言えばあるし、愛人を持つのもあるけどさ。侯爵令嬢に恥をかかせるというのはさ。侯爵家敵に回していないか。


 余程王族の権威高いんだよな。


「………もしかして政治的権力争いに負けてないか」

 嫌がらせというか虐めの内容を聞いているとそんな事で処刑されるというのはその悪役(?)令嬢とやらがいくつかいわれのない罪を押し付けられたとしか思えない。


「最終的にはその男爵令嬢とか庶民のお嬢さんは敵対勢力の権力者の養女になっているとか」

「えっ? さ、さあ…。そこまで触れられていなかったし……」

 首を傾げられて言われるが、その悪役(?)令嬢につい同情してしまう。


「…………その悪役令嬢? というのがお嬢様だと言われましたが………?」

 理解できないんだが。


「そう!! そうだったわ!!」

「…………」

 説明しているうちに忘れていたんですね。そのまま忘れさせておけばよかった。


 後悔したが、ここまで聞かないと面倒な事になるからなと溜め息を吐きながら聞く事にする。


「この世界は乙女ゲーム【シークレット・ガーデン】の世界なのか類似した世界なのか知らないけど、その乙女ゲームと同じなのよ」

 シークレット・ガーデン……。

 よくありそうな名前ですね。


「主人公は幼い頃にとある中庭に迷い込んでそこで男の子から花を貰うの。その中庭の場所が分からないけど、その近くに会った学校を覚えていたのでその学校に入るところから物語が始まるの」

「…………不法侵入ですか。警護がザルですね」

 中庭に入るまで誰も気づかなかったのか。いや、そもそもその男の子がその屋敷に住んでいるだろう。護衛は何をしていたんだ。


「で、いろんな男子生徒と親しくなって最後に運命の相手と結ばれると言うので私はそのルートのうち第一王子であるイルヴァン様と主人公の間を邪魔する悪役令嬢なのよ!!」

 あっ、思い出したら興奮してきたな。


「なんで、生まれ変わったらそんなポジションっ!! しかも、ルートによってはその手の悪役令嬢系ではお約束の処刑で殺されるパターンもあるから!! まだ、修道院送りもあるからマシだけどっ!!」

 どんっ


「修道院に行ったらお菓子が食べられないじゃない!!」

「そこですか問題点はッ!?」

 もっと大事なところがあるでしょう。


「………大事なところ」

「はい」

 目をぱちくりさせているお嬢様はしばらく考えて。


「セバスチャンに会えなくなるわね。もしかしたら私のせいで貴方やメアリにも迷惑が掛かてしまうかもしれない」

 そうだったら御免なさい。

 少しだけ視線を落として告げてくる内容に言葉が詰まる。


「…………お菓子どころか生活もだいぶ変わって不遇な身になると思いますが」

 処刑ルートもあるんですよね。それでお菓子が食べられなくなるから修道院送りルートが嫌だと喚くのもなんだろうけど。

 言葉を切る。


「私とメアリの事を案じてくださってありがとうございます」

 礼を述べて。


「ですが、メアリはともかく私はお嬢様に何かあったら共についていく所存です」

 修道院では入れないかもしれないが、下働きでも雇ってもらいますし。


(もしもの時は修道院からつれ攫って見せましょう)

 口に出さないが、そう誓う。


「処刑される場合は一緒に殺されるのも覚悟して助け出そうとしましょうか」

 地獄でも天国でもお付き合いしますよ。

 そう微笑むと。


「あ…ありがとう……」

 顔を赤らめてお礼を言われる。


「そういうのは好意を持っている女性にしなさいよ」

 私相手ではもったいないでしょう。

 そう顔を赤らめたまま告げるお嬢様に何言わないで微笑むだけ。


 …………口に出さない事で守られるものもある。


 だが、それよりも。

「その乙女ゲーム? という展開にならないように関わらなければいいのでは?」

 何らかの失態でその乙女ゲーム(?)とやらが始まる前に婚約が解消されるか。そのヒロイン(?)とやらと関わらなければ。

 思い付きを告げると。


「それよっ!!」

 びしっ

 指をさしてくるお嬢様に。


「人を指さしてはいけませんとお伝えしたはずですが」

 と注意するのであった。

処刑される設定って無理あるよね

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