8話 現実って・・痛いものなんですね・・・
遅くなりましたが、本日2話目の投稿です!
宜しくお願い致します^^)
元貴族騎士のヘンダ―ソンが薄ら笑いを浮かべて現れた。
「さあ、始めようか・・・イヒッ」
「出るんだ!」
ヘンダーソンの言葉を聞いた衛兵が牢屋の扉を開け、俺に冷めた視線を投げつける。
衛兵の言葉に素直に従い外に外に出た俺は、木で出来た手錠のような板と腰に太めの麻紐を巻き付けられヘンダーソンの後に付いていく。
「最初に言っておくが、昨日のリドルの様にはいかんぞ?あれはお人好し過ぎる!罪人など人でもあるまいに・・・昨日の夜に何を吹き込まれたか知らんが通用すると思うなよ?」
ヘンダーソンは取り調べ室に入るなり奥の椅子にドカッと座ると、横柄な態度を隠そうともせず机の上に両足を上げた。部屋には窓がない為、机に置かれたローソクがその振動で大きく揺れる。
「・・・」
俺は何も悪くないと、そんなヘンダーソンの威嚇にビビらないよう自分に言い聞かせ真っすぐに見た。
「なんだその目は!生意気な!・・ペッ」
俺の目が気に入らなかったのかあいつは俺の顔に唾を吐きかけてきた。
「何をするんですか?」
そんな事をしてくる人に出会ったこともないので、内心ビビり倒していたのだがここは負けじと出来る限りの平静を装った。
「それで?何処の国だ?」
「え?」
ヘンダーソンは昨日のシミュレーションとは違う内容を持ってきた!俺は面食らってしまった。
「何処の国だと聞いてるんだ」
「なんの話か分かりません。」
「しらばっくれるつもりか・・・もうネタは上がっているんだ!何処の国のスパイなんだと聞いているんだ!?」
バン!
汚物でも見るかのような目で俺を座ったまま見下し、口元にはニヤリと薄ら笑いを浮かべながら机を叩く仕草、あまりにも違和感のない会話の流れで何となく上等手段なのだろうと予測が出来た。だが、今の俺にはこの状況を打破できる手段はない。
「いい加減は吐くんだ!」
「がぁぁ!い・・いだい」
唐突に後ろからの衝撃にただただ痛みを感じる事しか出来なかったが、どうも俺の後ろに控えていた衛兵が俺の後頭部を掴んで机に叩きつけたようだ。
「いいから吐けよ、このままだと俺たちのサンドバッグになるだけだぞ」
「だから・・何も知らないんですって・・・」
「そうか、なら自分から吐きたくなるまでそのまま口を閉じておくんだな、どうせ奴隷落ちは決まっているがな・・・イヒヒヒヒッ」
心底腐った生き方をしてきたんだろう、言葉の使い方、声色の使い方が心の底から楽しんでいるのがありありと伝わってくる。
「お・・俺はただ石碑の前で・愛の・・・告白の練習をしてた・・だけだ・・」
俺は段々腹の底から黒い物が込み上げて来ているのがわかった。
「なんだ?今度は減らず口かぁぁぁぁ?」
「ごぉうっっっ!」
ヘンダーソンは気に入らなさそうに机から両足を降ろす。後ろの衛兵はタイミングよく俺の両脇に腕を入れ後ろから抱え上げると鳩尾に拳が刺さる。
「楽しいなぁ~~、生意気な事を言うとこういう事になるんだよ覚えておくんだな」
エズくような苦しみが連続して襲い掛かってくる、肺から空気が無理やり押し出され息が出来ない。
「なんとか言ってみたらどうだ?」
「・・・なんとか・・・・」
ヘンダーソンの歯からギリギリと音が聞こえる、額にはうっすらと血管が浮き出していた。
「ほう、余程死にたいらしいな・・俺様に立てつこうとはいい度胸じゃないか!」
それから何分たったかはわからない俺は抱え上げられたままの状態でヘンダーソンに殴る蹴るの暴行を受け続けていた。途中から痛みの感覚がドンドン消えていった。ローソクの火が壁にその模様を投影していた。
(俺・・・死ぬのかな?)
「閣下!そろそろお止めください!売り物にならなくなります!」
「お?おぉぉぉ、そうだったな。まだ若い健康な男だそれなりの額にはなるからな」
顔が腫れ、気を失っているように見えたのだろう衛兵は俺を抱えたまま後ろに下がりヘンダーソンの手や足が届かないようにした。あいつは悦に浸った表情で両の拳をフルフル振っている。
「もう気を失っているのか?」
「はい」
「明日にはバルバロに取りに来させる手筈になっている、もう一度牢屋に・・・」
バタン!
突然後ろの扉が開く。
「やっと尻尾を出しな!ヘンダーソン!」
「な!どういうことだ?」
「分かりません!誰か密通したものがいたとしか・・・」
「何をコソコソと話をしている!?」
「どういうことですかな?我々は今、取り調べ中でして・・・」
「この期に及んでまだシラを切ろうとはな!全部聞かせてもらったぞ!貴様の奴隷商との結託による犯罪奴隷の横流し、その他諸々の罪の数々、調べは全部ついているんだぞ!」
「いやいや、何かの間違いでは・・・」
「問答無用!捕らえろ!」
「「「「「はっ!」」」」」
「俺達は何も悪い事などしてはおりませんぞ!」
元々薄暗かった為か腫れ意識が薄れかけた俺の目には黒い影にしか見えなかったが、扉からの光の中鎧を着た数人の兵士達が、勢いよく開け放たれた扉から部屋になだれ込み、この異変に動く事もできずにいたヘンダーソン達は逃げる間もなく捕まえられた。
兵士たちに指示を出していた騎士のような影の人が、助け出され力の入らない体に肩を貸すように抱き上げてもらっていた俺に近寄ると声をかけてきた。
「かわいそうに・・・ここまで酷い事をしているとは誤算だった。君には大変申し訳ない事をしたね、今回の話しや弁明については後でゆっくりとさせて欲しい。許してくれ、この礼は必ずさせてもらう。今はゆっくり身体を休めたまえ・・・後は頼みましたよ?」
「分かりました、お話の通りこの少年の身元はこちらで保護させて頂きます」
「ああ、頼むよ!また近々そちらに顔を出すことにしよう!・・連行しろ!」
騎士の人達が俺をもう一人のやたらガタイの良い人に渡した辺りで俺は意識を徐々に手放していった。
「それじゃあ、俺たちも行こうか。」
「来るのが遅くなってしまい大変申し訳ありませんでした。ちゃんと癒しますからもう大丈夫ですよ」
(あれ?なんか聞いたことのある懐かしい声・・・)
(なんとか助かった??‥助かったけど、やっぱりツイてないなぁ・・・・)
今回も読んで頂きありがとうございます!
お約束は出来ませんが、12:00と26:00(2:00)頃に
投稿出来ればと思っております。
お時間がございましたらまた読んでいただければ幸いです。