2-35 日常。執事のお仕事 -激戦の爪痕-
投稿は明後日の17:00の投稿予定です。
それでは、本日もどうぞごゆっくりご覧下さい。
崩落後、三人は互いの無事を確認し、全員の記憶をすり合わせて現状の確認を行う。
やはりと言うべきか、全員の記憶の中でもマサトは崩落に巻き込まれている危険性が、かなり高い事が分かっただけだった。
それでも誰一人諦めて帰ると言う選択肢を口にする者はいなかった。
短い沈黙の後、自分達の役割を知っているかの様に全員動き出す。
シンは辺りにマサトの痕跡が残っているかを探し。
ディアは救助した繭の中の生存確認に向かい。
マリナはマサトがいた場所に一番近い瓦礫を動かしだす。
10分~20分もすると、シンもディアもマリナに合流した。
二人の結果は収穫なしだった。
シンは辺りに散らばった様々な残骸をどけ、丹念に調べていたが収穫は無く。
ディアが向かった繭の中は形は保っていたものの、息がある者は一人もいてなかった。
沈黙が辺りを包む。
音がするのは、瓦礫を崩していく音だけ。
それから1時間経ち、2時間が経った頃ディアが徐に立ち上がる。
「皆・・・一旦、引き返しましょう」
全員の手が一瞬止まる。
「嫌・・・私はまだ探す・・」
マリナは止めた手をすぐに動かしだす。
「僕もまだ・・」
シンも再び手を動かし始める。
瓦礫の山は、最初にマリナが始めた場所を中心に、扇状にかなり奥まで退け進められていた。
「これ以上はかなり危険です。これ以上進めると崩落の危険性も出てきます。ここは一旦マサト君を信じて引き返しましょう」
ディアは斜め上を見ながら促す。
ディアの視線の先には天井を支えるようにびっしりと敷き詰められた瓦礫の山が、かなり取り除かれ今にもバランスを崩してしまいそうで危なげな形になっている。
「・・・そうですね。マサトの生存を信じて引き返しましょう・・」
シンも瓦礫の山を見上げた後、ディアに賛同する形で立ち上がる。
「私は嫌。まだマサトを見つけてない・・・」
「マリナ・・・気持ちは分かるけど、ここに来る前に皆で決めた事を実行しましょう」
この洞窟に入る前に、急にマサトが立ち止まり全員で守ろうと言い出した事がある。
それは、今回の最終試験はかなり危険である事から、危ないと感じたらすぐに逃げる事。
それに、何よりもシンの命を守る事を最優先にする事。
そして・・・誰かが死んだ場合はすぐに引き返す事。
この三つを必ず遵守するように全員で取り決めたのだ。
「でも、あの時はこんな事になるなんて思ってもみなかった!マサトを置いていくなんて出来ないよ!」
今まで耐えていた気持ちが一気に溢れ出して来たのだろう。
マリナは立ち上がり、大声で叫んだ。
目には、堪えているが涙が溜まっていた。
ガラッガラガラガラッ!
「!!?マリナ!そこを退きなさい!」
ディアはマリナの叫び声が、ギリギリで保っていた瓦礫の均衡を崩した事に気づき。
マリナの傍まで走って行くと、強引にその腕を取り。
無理やりその場から離れさせる。
「ダメ!崩れる!シン様!ここから離れて下さい!」
「!?あ・・ああ!」
シンも振り返り瓦礫が崩れ出しているのを確認すると、一斉に走り出す。
洞窟はアラクネの部屋を中心に崩れ出した。
全員はその崩落に飲み込まれそうになりながらも、命からがら元来た道を走り抜け。
なんとか入り口から脱出する事が出来た。
「「「はぁ・・はぁ・・はぁ・・はぁ」
全員は息を切らせ、自分達がなんとか助かった事を知ると、一気に力が抜けたようにその場にへたり込んだ。
「マリナ・・・」
マリナはそんな中でもまだ、洞窟を見続けている。
「マサト・・マサト~・・・・」
マリナは力なく、もう入る事も出来なくなってしまった洞窟を見つめ。
子供の様に泣きじゃくり出してしまう。
「マリナ・・・!」
ディアはゆっくりと傍に近寄ると、自身の感情も溢れ出させるようにマリナを抱きしめた。
「お姉ちゃ~ん!・・・マサトが・・・マサトがぁ~」
「うん。うん・・・・」
二人の姉妹は互いにしがみつくように、お互いの気持ちを吐き出す。
「・・・・・・・」
シンも、離れた所で声を押し殺し。
一人涙を流していた。
誰一人として、日が沈むまでその場を離れる事は無かった。
日が沈むと、シンがやはり無言で二人に近づき肩に手を置く。
マリナもディアも、シンが伝えたい事が分かったように力なく立ち上がると。
3人は一旦ベースである小屋まで戻った。
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