2-34 日常。執事のお仕事 -アラクネ討伐!-
投稿は明後日の17:00の投稿予定です。
それでは、本日もどうぞごゆっくりご覧下さい。
「【ゲート・第1開放・ムラダラ】!」
目を見開くと同時に身体の奥底から熱い物が溢れ出す。
それを俺は自分の身体と精神で外に出ようと無尽蔵に湧き出る物を無理やり留める。
黒髪は少し薄まり濃い紫色に変色。髪が下から風を受けたように絶えず揺れ続けている。
俺の本領発揮だ!
まず俺は、アラクネに向かって走っていく。
余りに急なスピード変化に、俺の残像がその場に残ったままになっている。
俺はそのままスピードを上げて行き、トップスピードのままアラクネを通り過ぎる。
アラクネも変貌を遂げステータスがかなり上昇したようだが。
俺の上昇には付いて来れないようで、刀を持っている反対の手で捕まえようと伸ばしてきたが、その手は空を切り空振りに終わった。
俺は迫って来る壁を蹴って反動を付け、またアラクネに向かってスピードを上げて行く。
何度も同じことを繰り返し、その度に上がっていくスピード。
目の前を通り過ぎる度に、捕まえようと躍起になるアラクネ。
トップスピードに近づいた辺りでマサトは徐々にその形を変え、円形にアラクネの周りを回る。
トップスピードで円を描くその内外には風が巻き起こり、ヘリのプロペラの様にマサトの残像がいくつも姿を現す。
「今だ!」
「「【ファイアーボール】」」
シンとマリナがLV10まで上げた、直径2m程の炎の塊をディアさんに向けて放つ。
ディアさんは俺と二人との間に位置取り、淡く光る魔剣で空中に簡単な魔方陣を描き出すと、その場を離れる。
二つの炎は魔方陣の中を通り過ぎると速度を増し、混ざり合うように渦を巻いていく。
炎はマサトの作る渦に到達すると、マサトは自身の剣を使いそれを渦の中へと進むように跳ね返す。
アラクネに当たらないように跳ね返し、円の中で炎を使って五芒星を描く。
最後の点でアラクネに向かって炎を跳ね返すと、当然のように自分に向けられる事を予見していたアラクネは防御の姿勢を取っている。
そして五芒星が完成し、炎がアラクネに当たる瞬間。
五芒星が炎と呼応するように光り、2mの炎の塊が爆発するように燃え広がり。
マサトが描いていた円まで、炎の柱が全てを燃え尽くす業火となって燃え広がる・・・予定だったのだろう。
炎の柱は円で留まる事無く、全てを燃やし尽くす荒れ狂う炎の波と化し。
一番近くに居たマサトを飲み込もうと迫る。
「くっそぉぉぉぉ!失敗だ!!皆逃げろ!【レイ―――!】」
飲み込まれる寸前に、全員に炎が迫らないようにマサトが光魔法の光線を使って天井を崩落させる。
生存を確認する暇も、声を上げる事も出来ずに崩れ落ちる天井。
崩落に飲み込まれる3人。
もう既に炎に飲み込まれているであろうマサト。
全員が意識を手放し、辺りが暗闇に包まれた。
・
・
・
それから何時間経ったのだろう。
崩落した天井から一定の間隔で雫が滴り落ちる。
「・・・・ん・・」
辺りは静寂のまま。
普段なら聞こえない程の小さな雫の音だけが反響し大きく聞こえる。
「・ん・・・マサト・・」
雫が落ちる先は地面ではなく、少女の頬の上。
「いや・・マサト!・・・お姉ちゃん!マサトが!」
うなされている少女に落ちた雫が、その様子と相まって涙を流している様に見える。
いや、もしかしたら本当に涙を流していたのかもしれない。
「いやぁぁぁぁ!・・・あれ?・・夢?」
マリナは空を掴むように手を伸ばすと、その目を開いた。
「あれ・・・夢?・・・暗い?」
マリナが辺りを見回すと冥闇の中で目を覚ましたように思われたが、目が慣れて来るとうっすら明かりがある事に気づく。今いる部屋の入口から明かりが漏れている、よく見るとこの部屋自体も弱くはあるが所々光っている個所もある。
「そうだ!皆は!」
脳の覚醒と共にハッと自分の今の状況を思い出す。
薄暗い中、全員の姿を探す。
「お姉ちゃん!」
自分より少し離れた所に姉であるディアがうつ伏せの状態で気を失っている。
そしてその近くでシンも同じように気を失っている姿に気づく。
マリナはまずはディアに駆け寄り、息がある事を確認すると肩に手を置き、揺する。
「・・・マリナ?・・マリナ!?無事だったんですか?」
ディアはマリナよりも目覚めが良く、すぐに今の状況を把握していた。
「うん、私は大丈夫。それよりもシン様も無事か確認しないと」
マリナはそう言うと、シンに近づきディアの時と同じ様に揺すり起こす。
シンが起き上がり、全員の無事を確認すると三人は再度現状を把握する為に話し合い。
自分達の認識が一致するかの確認を取った。
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