2-33 日常。執事のお仕事 -アラクネ討伐戦!-
投稿は明後日の17:00の投稿予定です。
それでは、本日もどうぞごゆっくりご覧下さい。
まだ片足は捕まれたままで逆さ吊り状態のまま。
その上、さっきの攻撃で初めて逆上したアラクネが俺を自分の顔の前まで持ち上げ、目があったまま怒り狂っている。
・・・どうしよう・・・
ギャギャァァァァァ!
アラクネの目は真っ赤に血走り。
怒り心頭の勢いのまま、もう片方の手の爪を振り上げる。
ギャッ!
アラクネの怒り狂ったエネルギーが、攻撃と言う形で俺に届こうとした時だった!
急に俺の捕縛された片足は開放され、身体が急降下しだす。
身体を捻って回転し・・・とはいかず。
「ガハッ!アッ!アウッ!」
背中から綺麗に落ち、衝撃に肺の空気を全部持っていかれた俺はもんどりうつ!
そして、俺は訳も分からないまま。
誰かに足を持たれて引き摺られていく。
視界が止まるのを確認すると、すかさず起き上がり現状の確認をする。
「マサト、大丈夫!?」
俺のすぐ隣にマリナの姿がある。
そしてその先には、弓矢で攻撃をし続けているディアさんの姿。
二人は指示通りの作業が終わり、合流してくれていた。
辺りは既に火の海と化し、その状況を見たアラクネが激怒し。
ディアさんから繰り出される怒涛の攻撃を防御している。
糸の焼却作業が終わったのか、シンが走って近づいてきているのが見える。
「皆揃ったな!仕切り直しだ!」
俺達はいつもの陣形を取る。
「マサト!火の手が回るのが思ったより早いよ?」
マリナが少し不安そうな顔で聞いてくる。
「ああ、そこまでのダメージは与えれてないかもしれないが多少はイケてると思う!時間も無い事だし、一気に畳み掛けよう!」
「「「了解!」」」
「相手の速さは尋常じゃないから、俺とマリナで前衛!シンは魔法で中衛とサポート、ディアさんは弓矢で後衛とサポートをお願い!一発目はいつも通りの連携攻撃で、後は乱戦になるから頼んだよ!」
「「「了解」」」
アラクネは、『一人が四人になったからと言ってどうとう言う事は無い』とでも言うように、不気味な笑みを再度こちらに向けて来る。
「今度こそ吠え面掻かせてやる!【フラッシュ!】」
俺は、本日3度目のフラッシュを唱える。
アラクネに向けて先程と同じように光球が迫っていく。
アラクネは片手で目を隠し、直ぐに攻撃できるよう身構える。
光球はアラクネの前で弾けると、先程のように辺り一帯を眩い光で覆いつくす。
その様子を見届けた俺とマリナは、一気に走り出す。
そして第一の攻撃!
ヒュン!と言う音と共に何かがアラクネに接近する。
アラクネは目は防いだが、光がまだ止まない間の攻撃には音と気配で反応する。
先程のマサトの攻撃と同じものが来る。と高を括っていたアラクネは先ほどの攻撃を空けていた手で繰り出す!
ギャァァァァァ!
予想とは反して、激痛が肩に走る!
数舜後、光が止むと。
大きな炎の塊が、すぐ目の前まで近づいている事に気づく。
ドゴォ―――ン!
自分の素早さのお陰で、何とか両手で受け止め切る事が出来た。
だが、もう油断する事は出来ない!
予想を間髪入れずの斬撃か再びの弓矢の攻撃に備え、両手の爪を縦横無尽に振り回す。
ギャァァァ!
再度、肩の同じ場所に激痛が走る。
予想は良かった・・・
次の手も弓矢が来た・・・
だが、相手が高レベル・高ランクの冒険者だとは知らなかった。
アラクネは、相手の力量を見誤ったのだ。
100m離れた所からでも、針の穴を通すほどの精密さを持った相手とは思ってもみなかった。
そもそも、これまでにこの洞窟に近づいて来た冒険者は、あまりにも取るに足りない相手だった。
そして、先程の剣士らしき男も今までの相手とは格段に違ったが、それでも大した相手とは思えなかった。
全てはアラクネに油断をさせる為の布石になってしまっていた。
ギャァァァァァァァァ!
背中が熱い!肩に激痛が走って一瞬にも満たない時間。
完璧に取れた連携は、アラクネの背中にクロスに引き裂かれた斬撃の痕を残した。
連携が終わったのか一旦バラバラの位置に戻って行く人間達。
この間に体制を整えようとアラクネは防御姿勢を取った。
ズシャァ――!
そう簡単に休ませて貰える訳がなかった。
救いは防御の姿勢を取っていた事。
防いでいた両腕を縫う様に水の塊が物凄い勢いで通り抜け、体全体にぶち当たる。
アラクネはその衝撃に耐えきる事が出来ず、壁に叩きつけられる。
「今だ!」
マサトの号令と共に剣士二人が飛び掛かる。
ガキィ―――ン!
金属と金属が触れ合い、火花を散らせる音が辺りに響き渡る。
剣士二人は今の現状に驚き、一旦アラクネから距離を取る。
二人が退いた後には、目を赤くし、髪を逆立て、筋肉が隆起し、何処から出して来たのか。
湾曲している刀。
『シャムシール』を手にしたアラクネの姿があった。
アラクネは立ち上がり、剣を構える。
もう、先程のような不気味な笑顔は消え失せ、代わりに憤怒の表情がそこにあった。
それからは、二人が再度互い違いに攻撃を繰り出すも、子供をあしらうように通じる事も無く。
アラクネの本当の力を見せつけられる。
「マリナ!ディアさんと交代してくれ!アレを使う!」
「わかった!姉さん!」
「了解です!」
マリナが前線を離脱し、後方に居たディアが前線に入って来る。
「ディアさん、練習なんてしたことありませんでしたが。以前に話していた通りにお願いします」
「分かりました!」
「皆!サポート頼んだ!」
「「「了解」」」
「【ゲート・第1開放・ムラダラ】!」
目を見開くと同時に身体の奥底から熱い物が溢れ出す。
それを俺は自分の身体と精神で外に出ようと無尽蔵に湧き出る物を無理やり留める。
黒髪は少し薄まり濃い紫色に変色。髪が下から風を受けたように絶えず揺れ続けている。
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