2-29 日常。執事のお仕事 -シド先生の地獄の猛特訓-
明日も17:00の投稿予定です。
それでは、本日もどうぞごゆっくりご覧下さい。
「先生、深くは追及しません。やってくれますね?」
「・・・・・・分かりました・・・」
それからは早い物だった。
先生は、やや不貞腐れ気味に踵を返すと。
「今後の作戦を考えないといけませんので、今日の所は失礼しましょう」
と、言いさっさと移動しだしてしまった。
「「え?!」」
と、二人の精霊王様は声を揃えて困惑している。
「すいません!また、倒したら戻ってきますから!」
俺は困惑する二人を置いて、先生の後を追った。
先生は妖精族の案内はいらなかったようで、村を出た所でステッキを振ると、あっさりと元居た森の中に戻って来た。
「マサト・・・明日からは魔の森を探索するんでしたね?」
「はい!その予定です」
俺達は久しぶりに二人で夜道を歩く。
メンバーが増えたのも、つい最近の事なのに。
二人で歩くのはずいぶんと久しぶりに感じる。
「では、予定を少し変えましょう。ただ探索するだけも面白くないので、久しぶりに私が稽古をつけてあげましょう!ですが。正体の件に関しては分かっていますね?」
「はい!その辺は大丈夫です!」
そんな話をしているうちに、小屋まで戻ってきていた。
焚火の火はもう燻っており、時間がいつの間にか立っていたことが分かる。
東の空から朝日が昇り、夜が明ける。
そろそろ皆が起きてきだす頃だろう。
夜が明け、皆が起きてきだして来たので。
朝飯を食べながら、昨日会った事は伏せて今日からの予定をざっくりと伝える。
皆は引き続き俺のカリキュラムの一環だと思っている。
全員を見渡すが、異論がある者はいないようだ。
そして、久しぶりの先生の修行が始まった。
俺はてっきりレベル上げを行って。
アラクネを倒しに行くものとばかり思っていたのだが、どうも様子が違う。
先生は何処か目的地を目指して進んでいるようにも思える。
2時間程進んだ所で辺りが急に霧で囲まれてくる。
それでも関係なく進み続けると、湿地帯が現れた。
先生は立ち止まる。
そして、こちらを振り向かずに、俺だけに聞こえる小声で話しかける。
「ここで、私が良いと言うまでこの辺りの魔物を狩り続けて下さい。この辺りの魔物は今の貴方達よりレベルが数段上の魔物ですので、気を引き締めて戦わないと誰か死ぬことになりますから」
ああ~~~!これこれ!前回の修行の時も何度この言葉を浴びせ掛けられ放置された事か!
なんだか懐かしい気持ちでいっぱいになる。
俺は先生との取り決めで、無言で肯定すると。
先生は何も言わずに飛び去ってしまった。
「今日はここで狩りをして行きます!しかし!この辺りの魔物は俺達より数段レベルが上だから気を抜かないように!さっそくお出ましだ!」
と全員に話している最中に霧で見えにくくなった視界で気づかなかったが、近くまで魔物の接近を許してしまった。
キシャァァァァァァァァァァァァァァァァ!
「スワンプスネーク!です!猛毒を持っているので、皆さん気を付けて下さい!」
「ぐわぁっ」
ディアさんが魔物の姿を見つけた時に叫んで知らせてくれたが。
時すでに遅しで、素早い動きで噛みついてきたスワンプスネークの牙を、俺は右手に掠った程度だが受けてしまった。
「マサト!」
マリナが駆け寄って来てくれる。
「私達は足止めしましょう!」
「はい!」
ディアさんとシンがすかさず攻撃を仕掛けて、スワンプスネークを後退させ俺から引き離してくれる。
そうこうしている内に毒の周りが早く。
俺の右腕は濃い紫色に変色し、パンパンに腫れてくる。
「マサト!大丈夫?!」
「ああ、大丈夫、大丈夫。・・・キュア!」
マリナさんが特徴を先に教えてくれていたので、浄化魔法であるキュアを自分で自分の右腕に掛ける。
右腕を淡い光が包み込むと、パンパンに腫れあがっていた右腕がみるみる元の形と色に戻って行く。
「よかったぁ~、こんな事になったの初めてだから焦ったよ」
マリナがホッと胸をなでおろす。
「ディアさんのお陰で、何をしたら良いか判断が早く出来たから助かったぁ!それじゃあ、今度はこっちの番だな!マリナ、行くぞ!」
「ええ!」
俺とマリナが離れていた戦線に復帰する!
スワンプスネークの体長は大きく5m程。
動きも素早く。牙、尻尾、巻きつき、毒液飛ばし。
これをランダムに手数多く繰り出して来た。
それはもう、今まで相手にしていた魔物とはLVだけの強さじゃなく、戦い方の質までも格段に強い相手だった。
戦線に復帰したは良かったが、なかなか攻撃も通らない。
俺達はパーティとしての今までの連携が、全然甘かった事を知らしめられた。
スワンプスネークとの戦いだけでもそれから30分以上は続き、何とか終わった時には全員が辛勝と言った具合に疲れていた。
それからの俺達は苦戦続きだった。
毎回のように毒を持った魔物が現れ、レベルも高いだけに。
毎回誰かが毒に掛かる。
毒だけならまだ良かったのだが、中には麻痺を持っている魔物も現れ。
今までのように簡単に戦闘を終える事が出来なかった。
この辺りの魔物の毒は回るのが早く、誰かが受けてしまうと必ずセットでマサトも治療の為に抜けなければならず。残ったもので、足止め。
この繰り返しで思うような戦闘をさせて貰えない。
しかも、シンはレベルが上がったとは言えど、俺達にはまだまだ及ばない程のレベル差があり。
陣形を変えてでもシンの安全を最優先にせざるを得なかった。
だが、苦戦に継ぐ苦戦を強いられた分の跳ね返りも大きく。
今日一日だけでもLVの上りが今までの数倍になっていた。
魔の森はその名前がつくのも頷けるほどの魔物の量と質でLVも様々だったが。
魔物も多種多様で、特に特殊能力を持った魔物が多かった。
毒を持ったスワンプスネーク。
硬化粘液を飛ばして来るスワンプリザード。
麻痺毒を鋭い顎に持っているパラライズアント。
超音波で攪乱してくるソニックバット。
他にまだまだ魔物が多く、こいつらが一緒に襲って来る時は乱戦にもつれ込むことも当たり前にあった。
一日が終わると、翌日にはLVが上がった分だけ強い魔物がいる場所へと連れて行かれ、一日目と同じ状況になる事も多かった。
やっぱり先生の稽古は地獄だ・・・
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