2-27 日常。執事のお仕事 -闇の精霊王シェイド-
明日も17:00の投稿予定です。
それでは、本日もどうぞごゆっくりご覧下さい。
「いつまで話しているつもりだい?」
その場が井戸端会議の様になりそうになった時、全員の脳に声が響き渡る。
「おおぉぉぉ!申し訳ありませんじゃ。すぐにご案内致しますじゃ」
村長はそう言うと踵を返し、村人全員を引き連れて俺達を案内するように歩き出す。
「やっと出てきましたか」
「この声は・・・ウィル様?!」
「ささ、こうしてはおれませぬ。ご案内致しますじゃ」
ウィル様の声が聞こえてくると、急に焦り出す村長。
辺りを見回してみても、以前のような光の玉はなかった。
「何をキョロキョロしているんですか?ウィルはここにはいませんよ」
周りを見ると先生だけじゃなく、全員が当たり前の事の様に受け入れている。
その上、先生が恥ずかしそうに俺を見て来る。
「だって!声が聞こえるのに、姿はないんですよ?」
「それは、当たり前の事ですよ。貴方は誰を相手の話しをしているんですか?」
「それは・・・ウィル様ですが・・・」
「違います。相手は光の精霊王です」
「それはそうですが。これは魔法なのでしょうか?」
「そんな事ですか。これは精霊王、特有の能力ですね。この世界には人の目には見えないだけで、精霊がそこら中に居てます。魔法とはその精霊達から力を借りて具現化したものです。この能力は精霊王が自分の精霊を介して私達に直接声を届けているんです。」
「凄いです!世界の仕組みもそうですが、精霊王様も凄い力を持ってるんですね!」
先生は俺の言葉で気を良くしたのか、いつもより饒舌に話をしてくれる。
「それだけではありません。精霊王はこの力を使う事で、世界中の何処に居ても自分の能力の一端を行使する事が出来ます。ただ、眷属を使っているので。使える力に制限は掛かりますが」
「そうなんですね!遠隔同士での戦争も出来るかと心配しました」
「理解が早いとは思っていましたが。やはり分かるんですね。現代の向こうの文明はこんな荒唐無稽な話が理解できてしまうぐらい進んでいるんですか?」
「はい。向こうの文明は今のこちらからするとこちらが原始時代に見えてしまう程進んでいます」
「話しには聞いていましたが、それ程とは・・・あ、着いたようですね」
「また、ゆっくりお話ししますよ」
「ええ、また・・・ゆっくりとね」
そんな話を二人でしていると、いつの間にか村の門が見えて来た。
村は相変わらずの感じで、魔物の襲撃があったようには見えない。
俺が危惧していたことは、杞憂で終わったようでほっとした。
全員で村の中央の広場まで進む。
そこには光の玉であるウィル様が既に待っていたのだが、その隣にはもう一つの真黒く中心に向けて渦を巻いている、ブラックホールのような闇の塊があった。
「お待たせしてしまい、申し訳ありませんでしたじゃ。只今お連れ致しました」
「良いよ。皆が長年待ち続けていたのも知っているから」
「久しぶりですね。ウィル、シェイド」
「久しぶりだね!シド」
「久方ぶりだな・・・シド。そのお子か此度の伝承者は・・・」
シェイドと言われたのは闇の塊だった。
「そうです。ウィルはもう会っていたんでしたね。シェイド、今代の私の不肖の弟子のカガミ マサトです。マサト挨拶を・・・」
「初めまして!シド先生の弟子のカガミ マサトです。宜しくお願い致します」
俺は一歩前に出ると闇の塊であるシェイド様に挨拶をする。
「マサト。こちらは闇の精霊王シェイドです。くれぐれも失礼の無いようにするんですよ?」
「・・・シェイドだ。よろしく・・・」
シェイドは声に抑揚をつける事も無く、地を這うような重低音な声で脳に直接話しかけて来た。
「挨拶も済んだことですし。久しぶりにも関わらず、呼び出したんです。何があったんですか?」
「そう言う所、相変わらずだね。久しぶりなのにゆっくり昔話や近況報告とか、しようと思わない?」
「そんな事、あなた方は大体見て知っているじゃありませんか。それに昔話をした事など一度もありませんが?」
「・・・ウィル・・・シドには無駄だ・・・」
「そうかい?せっかく久しぶりにちょっとぐらい話しでもしようと思ったんだけど・・・」
「シェイドの言う通りですよ。私の性格は良く知っているでしょう?」
「はぁ・・・感慨も何もあったもんじゃないね。じゃあ、シェイド進めて」
「そうか・・・某が話すのか・・・しょうがない・・・。シドよ・・・今のこの森が荒れておるのは知っておるな?」
「ああ。知っていますよ」
「その理由は?」
「知っていますよ」
「その、お子は知っているのか?」
「いや、マサトは知りません」
「某は話すのは苦手だ。説明してやってくれないだろうか?」
「・・・分かりました」
その内容とは。
今、森が荒れているのは、前回のワイバーンがいなくなった事が原因だそうで。
なんでも、ワイバーンは古くから山の麓に住んでいたらしいのだが。
狩りの場所を広げようと、この前盗賊のアジト跡に巣を作り直そうとしたらしいのだが。
俺達が全滅させたが故に、元々巣があった場所に新たに自分の巣を作ろうとする魔物が現れたらしい。
ここまで話すと先生は話すのを止める。
「・・・そして、その場所に巣を新たに作ろうとしたのが・・・我が眷属であるアラウネである。」
「アラウネはこの森にワイバーンがいなくなった事で新たに自分たちの狩場にしようと移住してきました」
何故、急に先生とシェイド様が交代で話し出したんだろう。
「そこまではよくある事だが・・・我が眷属は・・・魔王軍の手に落ちてしまった」
「そもそも、各精霊にも眷属がいているのですが。魔物を眷属としているのが、シェイドなのです」
あれ?交代って続くものなの?
「そう・・・元は従順な眷属であったのだ・・・」
「シェイドは自分の眷属が魔王の手に落ち、おかしくなってしまった事を嘆いています」
んん?!訳?先生がシェイド様の言葉を訳しだしてない?
「アラクネ・・・」
「この森がおかしくなっているのも、アラクネがおかしくなっから、他の魔物が逃げて来ているせいだと申しております」
申しております?!やっぱ訳してるよね?!しかもシェイド様、アラクネ・・・しか言ってないし!
「アラクネ・・・」
「シドのお子よ・・・我は今、訳あって手が出せぬ!なんとかしては貰えぬだろうか?」
・・・あれ?今度は先生がシェイドさんの言葉を話してない?
「ツッコんでも良いんだよ?」
「アラクネ・・・」
「最悪、あの子がこのまま苦しむようだったら殺してしまっても構わない。頼まれてはくれないだろうか?」
ダメだ。ウィル様まで入っての三つ巴だ。これは止められない。
「分かりました!不肖ではありますが。シド先生と共にそのお話、受けさせて頂きます!」
「え?!」
どうにもならなさそうだったので。普通にスルーした。そして、そのままの流れで先生を巻き込んでみた!
「おお!それは珍しい!」
「・・・シドが・・・それは頼もしい・・・」
「い、いや。マサト?」
俺の機転を利かせた作戦は、見事に功を奏したようだ。
「今回は僕達だけでは無理があります。しかもこれは先生に頼るしか・・・」
「いや、吾輩は今回正体がバレてはいけないのだよ・・・」
「誰にですか?」
「いや、それは・・・」
先生が珍しく口ごもっている!
「先生、深くは追及しません。やってくれますね?」
「・・・・・・分かりました・・・」
よっしゃぁぁぁぁ!初めて先生をやり込めてやったぞ!ざまぁ!・・・?になるのかなぁ?
それと、この世界の力ある人達はどうも、ダメな人?が多いようだ・・・
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