2-22 日常。初めてのクエストボード・・・伯爵邸で執事のお仕事!?ー其の7-
明日も17:00の投稿予定です。
それでは、本日もどうぞごゆっくりご覧下さい。
「も・・申し訳ございません」
え?エドモンドさんの言う事は聞いちゃうの?
「まだ納得出来てはいないようだね?」
「はい。やはり納得出来ません」
なんかここまで嫌われてると、ちょっと傷つくなぁ・・・
「なぜカガミがヴァチェラーだとダメなのかね?」
「それは、先程も申しました通り。貴族の出でもない平民風情が、伯爵様のお屋敷でのお勤めでこのような短期間にこれ程までの昇進が納得出来かねます」
うわぁ~、とうとうはっきり言ったよ・・・
「そうか、それは一理あるかも知れんな」
「そうでございます!やはりーー!」
「皆も実力も分らない者では、そう思うのも頷ける」
「いえ!そうではーー!」
「ならば、実力を見せて貰おうじゃないか!なぁ!エドモンド?」
「はい。それならば皆も納得できると思われます。ねえ、皆さん?」
俺は予想外過ぎるこの展開に完全に付いて行けず。
ただ黙っている事しか出来ず。
周りの使用人からは「はい!」とか「それは見てみたいですなぁ」等、賛同の声が上がり出した。
「では、皆の声も聞こえて来た事だし。当家きっての最強の護衛と戦って実力を見せて貰う事としよう!」
伯爵のその言葉を聞いた使用人達は、それが誰か分かっているのだろう。
急に興奮しだす者や歓喜の声を上げる者まで現れた。
「当家の私専属の護衛兼家令であるエドモンド。頼めるか?」
「え!?」
余りの驚きに俺が振り向く速度は光速に近づけたのではないだろうか?
「畏まりました。喜んでお相手させて頂きます」
「カガミもそれで良いかね?」
「え?!あ、あ、はいぃ~!」
俺は、今までエドモンドさんが戦える想像なんてしていないし、こんな事になるとも思っていなかったので。
咄嗟にでた声はかなり素っ頓狂な物になってしまった。
「ロッテンマイヤー」
「はい」
「これで納得できるね?」
「・・・・・・はい・・・」
「それでは一時間後に裏庭にて。エドモンドとカガミの試合を執り行う事とする!各自準備を済ませ集合するように。今日の仕事は全員一時間後に一時停止し観戦する事を許可する。ロッテンマイヤー、エドモンドは準備があるので、全員の仕事を一段落出来るように指示をしてやってくれ」
「え?!・・・畏まりました」
この時のロッテンマイヤーさんの悔しさが滲み出る表情は胸がすくものがあった。
今回は完全に伯爵に嵌められた訳だから、相当悔しい物があったのだろう。
伯爵から言われた後も少しの間は遠くからでも分かるぐらい俺の事を睨み続けていた。
それから一時間後に準備を終えた俺とエドモンドさんは、裏庭で刃引きされた剣と簡単な防具を装備した状態で対峙していた。
俺達の準備と言っても自分がやっていた途中の仕事を片付けたり、簡単なウォーミングアップをしたりするぐらいしかなかったのだが。
「エドモンドさん・・・戦えたんですね?」
「はい。ただし、普段は特殊な契約魔法により。力の制限が掛けられておりますので、襲撃の時は手出し出来ませんでした。」
「魔法って、そんな事も出来るんですね・・・」
「はい、当家の家令は代々当主への絶対服従の為に、その契約を受ける事が絶対の条件となっております」
「そ、そうだったんですね・・・エドモンドさん・・・実はめちゃくちゃ強かったりして?」
「腕に多少の覚えはございますが、いかがでしょう?」
俺としてはちょっとお道化たつもりだったんだが、いたって真面目な答えが返って来た。
緊張を少しでも解すつもりが、逆効果だった。
「・・・お手柔らかにお願いします」
一瞬だけ光った眼光に・・・ビビりました。
そんなやり取りをしていると伯爵様が近づいて来た。
「二人とも、分かっていると思うが。実力を見せて貰う為とはいえ、手を抜かれても皆は納得しない。ちゃんとヒーラーも連れて来てある。存分に戦ってくれたまえ!」
「畏まりました」
「はい!」
伯爵様は、そうは言ってもこういうのがお好きなのだろう、お顔から楽しみにしている感じがぬぐい切れていない。
いつの間にか大怪我してもいけるようにしてあるし・・・
「それではこれより、エドモンド VS カガミ の模擬試合を執り行う!」
「「「「「「おおぉぉぉぉーーーーー!!」」」」」」
娯楽の少ないこの時代だ。
観客の使用人達は、男も女も皆いつもと違う雰囲気に、まるでコロッセオにでも来ているかのように興奮している。
皆、口々に「いいぞ~!」やら「エドモンド様~♡」等の声援が辺りを埋め尽くしている。
そのほぼがエドモンドさんへあてられた物だったのだが。
「マサト頑張れ~!」とか「負けたら先生のお仕置きが待ってるらしいよぉ~!」等うっすら俺への声援も聞こえる。仲間ってありがたい!
「それでは、相手を殺してしまうような事だけは無いように・・・始め!」
「「「「「「おおぉぉぉぉ!」」」」」」
両者互いに距離を・・・と言いたい所なのだが、開始と同時に俺からの先生攻撃だ!
身体能力は勝っているのだろうが。
経験がまったくと言っていい程無い俺は、まずは奇襲を仕掛ける事で力量を見ようと思った。
「なかなか良い太刀筋ですね!」
「ありがとうございます」
腹部を狙った一撃は簡単に躱される。
やはりかなりの手練れみたいだ。
俺は躱されたとみるや距離を取る。・・・と、その場から飛び退いたつもりっだったのだが、そのまま密着するように付いてこられ、着地するとともに腹部への鋭い突きを見舞われる。
ガキィン!
「「「「「「おおぉぉぉぉ!」」」」」」
俺はそれを反射だけでなんとか凌いだが、エドモンドさんの強さは一目瞭然だった。もう一度距離取ろうと後方へジャンプするがこれは一旦見逃してくれたようだ。
「ほぉ。これを防ぎますか。だが、まだまだ粗削りですね」
「やっぱり、滅茶苦茶に強いじゃありませんか!」
「さっきの一撃を防いだ貴方に言われたくありません。あれを防がれたのは現役以来初めてです」
「このままじゃまずいんで、本気で行きますよ!【ブースト】!」
「そうこなくては!【ブースト】」
「!?ブーストまで使えるんですか?」
「もちろんです」
俺はブーストされたスピードで攪乱し、体力を徐々に削っていくしかないと思い。
ステップで動きまわってみても、さっきと同じように右に飛べば右に、後ろに飛べば後ろにとエドモンドさんは余裕の表情でぴったりと張り付くように同じ動作を取って来る。
「でも、これではどうでしょう?」
「面白いですね。まだスピードが上がっていくとは・・」
俺は小手調べを止めて、ドンドンスピードを上げて行く。
こうなってしまえば、どちらがどこまで身体強化のLVを上げているかの勝負だ!
この数手で分かったが、やはり経験や技術ではエドモンドさんの方が遥かに上だブースト等のスキルに関しては手練れの冒険者でもLVは5ぐらいまでと聞いたことがある。
LV6以上は特殊な条件があるらしくなかなかいていないらしい。
「僕には、あなたに勝る物がこれ以外にありません。今出来る全てをぶつけます!」
「良いですねぇ!久しぶりに楽しめそうです!」
あれだけ冷静沈着な様相で常にいたエドモンドさんも、俺の意気込みに呼応するように興奮している!
そのままの勢いでドンドンスピードを上げながら攻撃と防御を重ねていく。それでもやはりエドモンドさんの防御は固く一撃すら通る事がない!
「面白い!本当に現役の頃を思い出すようだ!今度はこちらからも行きましょう!」
今度は攻守交替するように、エドモンドさんがスピードを上げて行く。
突いては離れ、防御しては突く。
剣と剣が何度も合わさり、昼間なのに見える程の火花がそこかしこで散る。
攻撃の通らないエドモンドさん。経験の差で少だが攻撃が通ってしまう俺。
ギャラリーも最初は五月蠅く騒いでいたのだが、普通ではそう簡単に見られない程のスピードに達したあたりから、固唾を飲んで見守るようになっていた。
何分間その攻防が続いただろうか?
「な?!急にスピードが上がった?」
そう、俺は最後の賭けに出たのだ。
このままいけばこちらのジリ貧で決着がついてしまう。
ならば、今出来る限界まで一気にスピードを上げ、付いてこられれば負け。
付いてこれなければ隙が出来る筈!
「まだです!一気に行きます!」
攻撃、防御、移動。
全ての速度を一気に上げると、途中でエドモンドさんのスピードが追い付いて来なくなった。
「これ程までに早いとは・・・くっ!」
攻撃が少しだけ通った!
エドモンドさんもこれには驚いたようで、いったん俺から離れ距離を取る。
「カガミ君・・・まさかここまでの身体強化だったとは驚きました。LV6ですか?」
「はい、先日なったばかりですが。エドモンドさんこのままやっててもジリ貧です。次の一撃に全力をぶつけても良いですか?」
「そうですね。まさかLV6とは思いませんでした。お受けいたしましょう!」
この言葉を最後に、お互い最後の一撃を放つタイミングを計る。一瞬の気の迷いが勝敗を決する。緊張感が辺りを急速に支配して行く。
まるで、時が止まった様に思える一瞬の短い時間。
お互いの息遣いが聞こえてくる。
そしてその息遣いが止まった。
今回も読んで頂き、ありがとうございましたm(_ _)m
そして!もしよろしければ、少しでも読み続けて行こう!
と思って頂けましたら。↓にある(☆☆☆☆☆)を是非ポチっとして頂けると、
今後も本作を書いていくモチベーションとなります。
『評価(下にスクロールすると評価ボタン(☆☆☆☆☆)があります』
どんな事でも構いません。同時に感想もお待ちしております。少しでもコミュニケーションを取れればと
思っております。
感想を下さった方、評価を下さった方。ブックマークして下さった方。本当にありがとうございます!




