2-18 日常。初めてのクエストボード・・・伯爵邸で執事のお仕事!?ー其の3ー
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『38話 日常。初めてのクエストボード・・・伯爵邸で執事のお仕事!?ー其の3ー』
ごゆっくりどうぞ!
俺達はシンに押し切られる形とはいえ、友人としての握手を交わした。
「カガミさん!」
今の現状としては、一番見られてはいけない場面を一番見られてはいけない人に見つかってしまった。
これは俺の経験上、シンの前では何事も無く納めて、後で気の済むまで怒られるパターンのヤツだろう。
「貴方!その方が何方かご存知ですの!?」
ロッテンマイヤーさんだ。俺はシンと握り合った手を引っ込めて何事も無かったように取り繕う。
「はい、シン様ですよね?」
「そんな事を聞いているのではありません!貴方は自分の主にそんな態度をとって良いのか?と聞いているんです!」
「ああ!それは・・・」
「良いよ」
「「え?」」
ロッテンマイヤーさんも俺も、思いもよらない援護射撃にハモってしまう程驚いた。
「シン様。その者は今日入ったばかりの下人でございます。シン様のようなお方が関わって良いような相手ではございません!私の監督不行き届きでお目に入れてしまい、申し訳ありません」
「そんな事はないよ!聞けば臨時の使用人として数日間だけの下働きだろう?それならば主従など無いに等しいじゃないか」
「そうではございますが、下働きは下働き。このようになされている所をお父様がご覧になられたら、きっとお怒りになります」
「そう?僕にはそうは思えないけどなぁ」
「何にしましても私としましてもこのような事は許容出来かねます」
「シン様、もったいなきお言葉痛み入ります。今回の事はシン様のお優しきご温情ゆえの事。思い出深き出来事として私の中に大切にしまっておきます。ありがとうございました」
俺はこのやり取りはいつまで経っても終わらない上に俺への風当たりが酷くなるであろう事が予想出来たので、シンに片目でウインクして引いてくれるよう促した。
「そう?・・・ロッテンマイヤーがそこまで言うならしょうがないね」
シンはウインクをし返して伝わった事を返してくれた。
「分かって頂けて何よりです。この度はご迷惑をお掛けしてしまいまして、申し訳ございませんでした。それではこの者も仕事が御座いますので失礼致します」
「失礼致します」
シンはこの後の事が分かっているのだろう。少し心配をした表情で踵を返したロッテンマイヤーさんの後ろに付き従う俺を見ていた。
そんな様子のシンに俺は、ロッテンマイヤーさんに気づかれないように腰辺りでピースサインっを作って見せた。
その後は俺の予想通り、使用人控室に連れて行かれてこってりと絞られた。
時間にして2~3時間。
あの人は怒らせると、先生とは違う意味で面倒な事になるのが分かった。
まあ、俺にとってはただ長いだけで先生のお説教の方が遥かに怖かった訳なのだが・・
それからの風当たりは酷い物があった。
「それでは、薪割りからやって頂きましょうか」
「はい!」
「ここに置いてある薪を全部、割って頂けますか?」
「え!?この量全部ですか?」
「え!?とは何ですか!え!?とは!これはお仕事ですよ!普段冒険者をやっているなら、これ位当たり前に出来る量でしょう?」
説教の後に俺が連れて行かれたのは裏庭だった。そこには越冬用に用意されていたであろう非常用の丸太が、広大な建物の壁面にびっしりと隙間なく積まれていた。
その山を指差しながら挑発的な目で俺を威嚇してくる。
「・・・はい。畏まりました」
日本に居た時のトラウマなのだろう、俺はこの手のいびり方をしてくる人が一番苦手だ。
どうもこういう人のいう事は、強制力のような物が働いている様に思えて、聞かないといけない気分にさせられるし。
何かを言い返そうにも、言い返したら言い返したで何倍にもなって返って来て閉口せざるを得ない状況に持っていかれるし、何か負け犬根性みたいなのが自分の中に染みついて離れない感覚がある。
こうなってしまうと、何故か普段の思考力なんてなんの意味もなさなくなる。何も考えられなくなって、結局出来たは筈の事も出来なくなってまた怒られて、立場だけ悪くなるのループに入る。
思えば牢屋に入れられた時もギルドで喧嘩を売られた時もこれが原因で酷い目に会うハメになったのだろう。
「それでは後で身に参りますので、それまでには終わらせておくように」
そう言うと彼女は勝ち誇ったように踵を返すと、カツカツと鳴らさなくても良いヒールの音をわざとのように鳴らしながら去って行った。
「さて、始めるか!でも、これ・・・何日かかったら終わるんだろう?」
丸太を割ろうと近くにあった斧を持ち振り下ろす。
ゴン!
「ん?・・・ええ!?手が込んでるなぁ~。これもわざわざ用意したのか・・・」
丸太は普通に割れたのは割れたのだが、音の鳴り方がおかしい気がしたので刃を手で触ると。
なまくらもなまくら、なんならわざわざ潰してあるようにも見える箇所まであった。
「これ、俺以外にもちょこちょこやってんなぁ・・・」
周りを見回しても、砥石らしきものは見当たらない。
犯人確定で常習犯。陰湿だ。
「ほう、これはなかなか陰湿ですねぇ」
急に後ろから声を掛けられる。
「先生!見て下さいよ!これ!」
「見てましたよ?最初から」
「え゛ぇ゛!?」
「貴方、まだ悪い癖が抜けてないのですね~」
先生は俺の情けない姿を思い出すように、はぁ~とため息をつく。
「はい・・・」
「貴方はもう、色んな状況を打破出来うるだけの力は持ってるんですよ?それをあんなババ・・あ、失礼。あんな淑女ぶった女性の言った事一つ出来ないなんて、私は情けなくて涙が出てきそうですよ」
「・・・すいません」
「あなたはこれを30分以内で片づける能力を全て持ってますよ」
先生がニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
あ、先生もあのババアが嫌いなんだ。
「あ!そうか!そうでした!」
「わかったんならよろしい!では、私は用があるのでしっかり頑張るのですよ?」
と、先生は飛び立とうとする。
「先生!」
俺は先生と話し始めてから気になっていた事があったので、呼び止めた。
「はい、まだ何か?」
「その執事の服装はどうしたんですか?」
似たような燕尾服ではあったのだが、所々の違いがわざと分かるように作り変えられている。
「いいでしょう!僕の分も用意してありました!」
「そんな事ある訳ないでしょうが!・・・あつらえましたね?」
「面白味の無い子ですねぇ~。でも、似合っているでしょう?」
「先生ばっかりズルいです」
「ズルとは心外ですね。そう思うのだったらあなたも自分の力でつかみ取れば良いではないですか?」
「そんな事言ったって、あのババアですよ?」
クシュン!
何処からともなく誰か女の人の声でクシャミが聞こえて来た。
「そんな事、ちゃんと頭を使えば出来ますよ」
「また、そんな事言ってぇ~」
「では、こうしましょう。貴方は今回のクエストの最中に執事見習いまでなる事」
表情に暗い影が差していき、またもニヤリと不気味に笑う先生
「これが出来なければきつ~いお仕置きを用意しておきます。修行の時など比較にならないようなね」
「え゛!?それは勘弁してください!あの地獄以上は耐えられません!」
「なら、頑張って執事見習いになる事ですね。では私はこれで」
いつものパターン。
これ以上は聞く気がない時の先生の行動だ。
言うだけ言って去る。
「あ!・・・はぁ~、またかぁ。でも、先生は待ってくれる優しさは持ち合わせてない。・・・やるしかないか」
俺は項垂れながらも、斧を持ち上げる。
「・・・まずはこれから終わらせるか!」
まだどうすれば良いかは分かっていないが、先ずは出来る事から終わらせていく事に決めた。
「【ブースト】!!」
先生のお陰でロッテンマイヤーさんのマインドバーストから立ち直った俺は、何をどうすれば良いか分かっていた。
そして30分も掛かる事無く薪割り完了!!
「でも、今回は相手が悪い!昔の俺ならやられるだけの良い獲物だったんだろうが。今回はそう簡単にはいかせない!」
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