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前略、心と過去と

「ごめん、やっぱりわからないや」


「……そうですか」


 考えた、あたしは賢い方ではないが考えてみた。

 それでも答えはでなかった。やはりあたしは、セツナでしかないのだ。

 

「ごめんね、分からないことばっかりでさ」


「いえ、仕方のないことです」


 そう言ってリリアンは目を閉じた、なにか言葉を探すように。


「リリアンはさ、何だと思う?あたしを」


 しばらく待ってもリリアンは何も喋らなかった。ならばと思いあたしから聞いてみた。

 これまで隣を歩いてくれたもう一人の憧れに、自分が何なのか問いかけてみた。


 リリアンはまだ考え込んでいる。我ながら理不尽な質問だ、自分ですら分からない事を聞いている。


「あたし、実は記憶が薄れてるんだよね。多分エセ天使の仕業でさ」


 原因が分からないので、天使のせいにする。

 ネオスティアを知れば知るほど、馴染めば馴染むほど、なぜだか元の世界を思い出せない。クラスメイトの名前すら忘れてしまった。


 それでも大切な事は覚えてる。過去の自分と、変わった自分と、その原因になった憧れを。

 リリアンは何も答えなかった。


「さっきも言ったけどさ、昔は人間嫌いだったんだよ」


 人間嫌いというか、人と関わるのが怖かった。

 別に何かしらの原因やトラウマがあったわけじゃない、あたしは、昔のあたしはそんなつまらない人間だったのだ。

 リリアンは何も答えなかった。


「自分からできるだけ人を遠ざけてさ、その方が周りの為になるって、本気で信じてたんだ」


 だってそれならお互いに無傷でいられる。

 強い言葉も使った。差し出された手も振り払った。今思えば本当にくだらない。

 リリアンは何も答えなかった。


「今から3年くらい前かな、知らない先輩に話しかけられたんだ」


 本当に突然、面識のない先輩に関わることになった。その後部活に誘われた、迷惑な話だと思って断った。

 ふと思ったのだが、先輩という概念はあるのだろうか、ありそうだ、こんな世界だ。

 リリアンは何も答えなかった。


「その人がまたしつこくてさ、突き放しても突き放しても毎日来るんだよ」


 その後いろいろあって、結果的にはあたしが折れて陸上部に渋々入部したんだ。

 リリアンは何も答えなかった。


「毎日その人を見たんだ。その人の周りにはいつも大勢の人がいて、みんな笑っててさ。あたしもそんな風になりたいなって、太陽の様に温かく生きたいって思ったんだ」


 それがあたしの憧れで、目標で、夢で、道標で。

 だからその背中を追った、少しづつでも近づきたかった。

 リリアンは何も答えなかった。


「……遠くに行っちゃって、もう会えないんだけどさ」


「会いに行けばいいじゃないですか、きっとその人もあなたに会いたがっています」


 リリアンは答えた。嬉しい言葉だ、先輩がそう思ってくれたらいいな。

 

「うん、だといいな。でも凄く遠いんだ、それにどこにあるかも分からない場所に行っちゃって」


 天国はどこにあるんだろう、今度天使にでも聞いてみようか。

 あたしの世界とネオスティアの天国が、同じかは分からないけど。


「なら頑張るしかありませんね、次に会った時に胸を張れるように」


「そうだね、頑張るよ」


 リリアンは少しづつ、あたしの言葉に答えてくれた。ならもう1度聞いてみよう。

 理不尽で無責任な質問を。


「ねぇ、リリアン。あたしは何なんだろう」


 降ってくるような星空は、その輝きであたしたちを照らしている。

 今は舞台から逃げ出さない為の光ではなく、まるであたしたちを見守るような曇りない空模様だった。

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