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前略、心と楽しいと

「その後……その後かぁ……」


「自覚はありませんか?」


 正直なところ分からない。あたしは立ち直り、もとに戻ったはずだから。


「ここに来てから怒りやすくなった自覚はあるよ。でもさ、リリアンの言うその後が分からないんだよ」


 なんだか分からないことづくしだ。真剣な話だし、正直に話そう。


「あなたは基本的に前向きな人間です」


「あー、うん、ありがとう?」


 褒められた……のかな?

 前向き、というのは褒め言葉に分類されるだろう。言われて嫌な顔をする人は少ないはず。

 あたしもそうだ。たとえ自分の本質とは違っても、憧れに近づけてる証拠だ。


「少々考え無しに見えるところもありますが。あなたなりに考えてる事も最近は分かりました」


 ……なんだろう、普通に褒められてる。その後の話じゃなかったっけ?


「それを踏まえて、あんなに短絡的な行動をとるでしょうか」


「あんな短絡的な……?」


 どれの事をさしているんだろう……

 いや、ある、あった、とびきりのが。


「…………道具屋の襲撃?」


「はい、それと要塞の爆破です」


 思い返すと少しだけおかしい。あの時は浮かれていた、騒ぎを起こすのが楽しかった、そうすることが楽しいと思っていた。

 普段のあたしなら、もう少しだけ冷静に動くだろう。


「そうです、あなたは『テンカ』を異常なまでに楽しんでいました」


「……いい街だったんだよ、間違っていたけど」


 今になって心を見透かされるのが怖くなった、きっとこの不安も伝わっているのだろう。


「そうですね、他の人とも仲良くしていました。ですがそれを差し引いても、あなたは戦う事を楽しみますか?」


「…………」


 言葉が何も出てこない、そうだ……

 ギンやラヴさん、それとアニキさんと戦ったのは…………楽しかった。 


「間違いを正すことよりも、自分が楽しむ為に剣を振るってるように感じました。いえ、見えました」


 心が見えるリリアンが言うなら事実だろう。あたし自身、その自覚がある。

 むしろ、なぜ指摘されるまで気づけなかったのだろう。

 あたしは今まで、それが自分だと思っていた。違和感を感じることができなかった。


「……そうだね、あの時は楽しかったよ」


 確かに、少しづつ戦えるようになり、命がかかってなければ、戦いというのはコミニケーションになるかも知れない、という考えもでてきた。

 ただいくら身体的に、技術的に成長してもあたしは弱い、楽しむ余裕など持つべきではない。


「あの街でのあなたは短絡的で、戦いを楽しみ、誰かではなく自分の為に生きていました」


 ハッキリと告げられる、その言葉の意味は、あたしがあたしじゃなかったということで、憧れから遠いものだった。


「別にそれが悪いとは言いません。少しづつではなく、急激に変わった事が不思議なんです」


 会話の一つ一つが心に影を落とす。ここから逃げ出したい、素直な気持ちだった。


「……逃げ出したい、そんな心の形です」


「凄いね、大正解だよ」


 きっとあたしらしくない、そんな心の形なんだろう。


「もう止めましょう。私はあなたを傷つけたいわけではありません」


 リリアンは言う。これ以上あたしの心に悪い影響を出さないように。

 別に傷つけられたつもりはない、それにこれは必要な会話だ。


「大丈夫だよ、続けようか」


 いつの間にか、月と星空は雲を払い、その輝きを完全に取り戻していた。

 まるでこの舞台からあたしが逃げないように。

 それならあたしは逃げ出さない。自分と、リリアンと向き合おう。


 願わくば、この決意がリリアンの瞳に強く映ることを祈って。

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