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前略、心と色と

「あなたは……何なんですか?」


 なぜだか不安そうに問いかけるリリアン。

 その質問は何度目だろうか、3回くらいは聞かれた気がする。

 なんとも答えずらい質問だ。自分が何なのか、それをすぐさま答えられる人の方が少ないだろう。


 もちろんあたしもそうだ。何なんですか?と聞かれれば、あたしはあたしであるとしか答えられない。

 つまるところ選択肢は1つしかないのだ、今日も自己紹介で誤魔化させてもらおう。


「名前は……」


 誤魔化させてもらおう……と思ったんだけど、その不安そうな表情がそれをさせない。

 なんでだろう、なんで聞いてきたリリアンの方がそんな顔をするんだろう。


「えーっとぉ、何が聞きたいのかな?」


 どう答えればいいのかが分からない。ならば本人に聞き直すのがいいだろう。


 リリアンは答えない。何なんですか、広い意味を持つ言葉だ。だがそこまで聞きづらいことだろうか?

 どちらかというと、なぜその質問をそんなに重要視しているのかが分からない。


「私は……」


 やがてゆっくりと口を開く。

 いつの間にか雲は月を、空を覆い、光と音を飲み込んでいた。


「私は、人の夢が覗けます」


 それは前にも聞いた。不思議な話だが、そんなことは今更だ。

 そもそも異世界自体がありえない事だし、そんな技術があってもそこまで驚きはない。

 

「もしかして、友達がいない事を心配してくれるのかな?」


 普段は夢を見ないあたしだが、少し前に夢を見た。夢というか過去の映像を。

 その際に、リリアンに友達がいないと誤解されたのだ。


「いえ、違います」


 まぁ分かってたよ、ちょっとでも空気を和らげたかっただけだ。

 その不安そうな顔が、少しでも笑ってくれたらなって。


「私は、人の心が見えます」


「…………はい?」


 なんだか変な声がでた。ちょっと待ってほしい、なんて言った、心が見える?


 …………それはマズい!そりゃ言いにくいわ!

 確かに心を読まれていい顔をする人の方が少ないだろう。

 あたしもそうだ。普段考えてることならまだいいが、あまり褒められた過去を送ってない。

 

「心が読める。のではなく、見えるんです。なんとなく色とか形で」


 あまりに衝撃的なカミングアウトになんと返せばいいのか。あたふたしている内にリリアンが話を続けた。

 読める。じゃなくて、見える?よく分からないな……


「じゃあ、あたしは何色なの?」


 よく分からないので、聞いてみた。

 心の色か、それだけ聞くとファンタジーな感じがして嫌いじゃないんだけど。


「…………怖くないんですか?」


「いや、そりゃあ怖いよ。でも読まれてるわけじゃないし、色が見えるくらいなら別に気にする事じゃないかなって」


 リリアンは間を開けて、驚いたように聞いてきた。

 うん、普通に怖い。人は当たり前ではないものに恐怖を抱くものだ。


「それにリリアンが、それで悪さをするようには見えないからね」


 一緒に歩いてきたあたしが保証するよ!そう伝えると、少しだけ嬉しそうに、白です。と先程の質問に答えてくれた。


「白……白かぁ、あんまり自分ではイメージないなぁ」


 あまり自分に白いイメージはない。でも白はいい色だ、他の色の為の色だと思う。

 灰色とか黒じゃなくて本当によかった。 


 んん?でもあんまり関係ない気がするぞ?


「ねぇリリアン。なんで心の色が、何なんですか、になるの?」


 そうだ、リリアンは何なんですか。とは何を聞きたいのか、というあたしの質問についてこの話をした。


 もう1度風が吹いて、今度は空を、月を覆う雲をはらしていく。

 少しだけ光が差して、もうちょっとだけ話を続けることにした。

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