前略、頭突きとニの太刀と
「ちくしょう!とっとと倒れろよ!」
「こっちのセリフ!早く倒れなよ!」
お互いにボロボロなのになかなか倒れない。
それでも強力なのを一撃でももらったらどちらも倒れるだろう。牽制のような打ち合いが続く。
単純な腕力の差で、受けても押される。
あたしは速さで、スキをみて打ち込む。
また木刀同士がぶつかり、強めの衝突。2人で距離をとる、1度立て直そう。
「地味な戦いだな!もっと派手にいこうぜ!」
ブンブンと木刀を振り回し叫ぶギン。派手にいこう、それには同感だ。
だけどね、今日の『セツナドライブ』は品切れなんだよね。
「地味で結構!でもね、あたしの必殺技は安くないんだよ!」
「んだとぉ!」
本当は使えないだけなんだけど、挑発。
また飛び込む、あたしの木刀は軋むけど、そんなことはどうでもいい。
受け損なって、一撃もらう、問題ない。
倒れ込むふりをして足払い、転ばせる。
「もらったぁぁぁぁああ!!!」
「マジかぁぁあ!!!」
倒れたギンに、思いっきり木刀を振り下ろす!
どう見ても主人公じゃなくて、悪役の攻撃だけど、今はどうでもいい!
「ぐぁぁぁああ!」
白刃取りをしようとしたギンの両手をすり抜けて、あたしの木刀はギンを打ち抜く。
……やりすぎたかもしれない
「よし、勝った勝った」
あたしは振り返らずに歩く、憐れな金髪の死体は放っておく。
……いや、やりすぎたね、ごめんなさい。
ジャリ、と地面を擦る音に振り返る。まさか……
「おいおい、どこ行くんだよ、まだまだいけるぜ?」
「わーお……」
ギンが立ち上がっていた、仕返しのように挑発的な笑みを浮かべて。
なんだこの金髪は、あたしも頭は固いほう(物理的に)だけど今のをくらって立てるのは異常だ。
「じゃあ続けるか!」
「りょーかい、まだまだいこう!」
あぁもう!なんか楽しい!
「そんじゃあいっちょいきますかー!」
ギンが叫ぶ、あたしの掛け声を。
そろそろ終わらせよう、もうフラフラだ。
「『The・シルバーファースト』!」
ギンは最高に格好いい名前と共に飛び上がる、そのまま全力で木刀を振り下ろす!
「いや、『気合バースト』じゃん!?」
この野郎!名前だけ変えやがった!
せっかくの格好いい名前が雑な必殺技で台無しだ!
「仕方ない!」
あたしは迎えうつ。残念ながら潜った死線が違う、着地を半歩下がって躱し、打つ!
「今度こそ!もらったぁぁああ!」
完璧な回避、そしてブーストした振り下ろし!これは決まった!
「ニの太刀!」
強い意志を感じるギンの声。振り下ろした木刀の向きを反転させて、あたしに襲いかかる!
これはマズい!!!
なんとか、上がってくる木刀を防ぐ。
その結果、あたしの木刀だけが、遠くに吹き飛ばされる。
「あー……一応女の子ですよ?」
丸腰のあたしと、木刀を持つギン。絶体絶命だ。
「今更かぁぁぁああ!」
「だよね!!!」
仕方ない、あたしも気合と根性を見せようか!
幸い何度か打ち込んだ、そろそろいけるだろう。
振り下ろされる木刀。
このままくらえば負ける。だが武器はない……まともな武器は、しかしまともじゃない武器なら!
目を凝らす、【山賊の目】に映る、打ち込み続けた場所に!
「あたしの最後の武器!」
頭突き。リリアンから逃れ、アニキさんを倒した必殺技。今、再び絶望を打ち砕く!
渾身の頭突きはギンの木刀をへし折る!
「嘘だろお前!?」
めちゃくちゃ痛い!でも!まだ!まだ!
肩を掴む、離さない、絶対に!
「あたしの勝ち!」
最後の力を振り絞った頭突き、あたしの全力は今度こそギンの意識を奪った。
「勝ったけど……フラフラだぁ……」
あたしも背中から倒れ込む。あぁ、地面が痛そうだ……
「んん?」
地面にぶつからない、ふわりと誰かに支えられる。
「相変わらず、美しくない勝ち方ですね」
「こんなもんだよ、あたしの戦いなんてさ」
リリアンだ。見慣れたメイド服で、いつもの喋り方で、あたしを支えてくれている。鎖があたってちょっと痛いけど、その優しさが嬉しい。
「酷い戦いでした」
「お互いにボロボロから始めたからだよ、全快ならスマートに勝つ」
もちろんあたしが。
リリアンからみたら泥臭く、美しくない戦いでも。あたしたちには青春だった。
「いえ、技の名前が、どちらも酷いセンスです」
なんだそっちか、リリアンとは、ネーミングセンスでわかり合えない。
反論したいけどそろそろ限界、あたしはリリアンに支えられながら、意識を手放す事にした。




