表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/256

前略、リベンジと改と

「結構満喫させてもらいましたよ、この街を」


 長かった……なんだか、今までのどの出来事よりも長かった気がする。

 

 そりゃあそうだ、あたしの覚醒イベントまであったんだ。

 まぁそれを差し引いても、普通に1番長く滞在してたんだけどさ。


「でも……」


 やっぱりあたしは変わらない。

 この街は気に入らない、だからここまできた。


「もう1度聞きます」


 あたしはゆっくり、その冷たい目を見つめて。


「あたしたちは戦っちゃだめですか?」


 そんなことはない。自分の戦いだ。


「欲しいもの、やりたいことの為に生きちゃだめですか?」


 そんなことはない。自分の生き方だ。


「危険があったって、その足で世界を見たらだめですか?」


 そんなことはない。自分の世界だ。


「弱いあたしたちは、いろんな事を諦めなくちゃだめですか?」


 そんなことはない、あるはずない。だって自分の物語だ。


 アニキさんはそれを聞いてため息を1つ。


「だめだ、それは私が決めたことだ」


「だめじゃないです、それはあたしが決めたことだ」


 やっぱり、お互いにもう1度、ぶつかり合わなくちゃいけない。


「ぶつかり合おうか」


「上等です!」


 変なジンクス、あたしは人と戦って勝ったことがない。

 リリアンも言っていた、でもそれはとっくに払拭してきた。

 さぁ、譲れないものの為にもう1度戦おう。


「ちょっと待って!拳が飛んでくるよ!?」


 開戦してから数分、いや数秒。

 あたしは逃げていた、相変わらず締まらない。


「拳圧が飛んでくるなんて聞いてないよ!」


 そもそも飛び道具は卑怯だ!こっちには剣しかないのに届くはずがない!!!


「『セツナドライブ』……いや……」


 懐に飛び込めばいけるかな?そんな考えにリッカからカウンターをもらった記憶が蘇る。

 でも今の『セツナドライブ』なら……


「うぅ……無駄使いが悔やまれる……」


 試してみることすらできない。

 そうだ。職員室(仮)を爆破する際に使ってしまった、こんなところでブーツの力に頼っていたツケが回ってきた。

 結局のところ1日2回の回数制限は消えないのだ。


「逃げてばかりか?」


「作戦の内です!」


 さて、実際どうしようかな?ジリ貧、ピンチ、絶体絶命だ。


「やれやれ、いい加減に諦めてくれ。事実は変わらない、私は強く速い、君は鈍く弱い」


 諦める?そんな言葉はあたしの辞書にはない。

 1度は表れたけど、とっくに消した。

 この先も何度も表れるだろうけど、少し迷ってまた消せばいい。


「……そんなこと言われたら火がついちゃいますね!」

 

 ぶっつけ本番、それもいいか!

 きっと気分がいいだろう、相手を弱いと決めつけた人の鼻を明かすのは!


「今度は本当の刹那をお見せしますよ!」


「興味深いな、それが本当なら」


 アニキさんは前と全く同じセリフで返す、前と違うのはあたしだけ。

 いや、今から変わる。


 助走距離、本当は必要ないんだけど、ルーティーンだ。

 いつもの必殺技に最速の踏み込みを足す。


「きっとあたしはもっと飛べる!」


 1歩、2歩──まだちょっと

 3歩、4歩──もうちょっと!

 5歩、そんじゃあいっちょいきますかー!


「『セツナドライブ・改』!!!」


 普通に踏み込んでも世界の加速に例えるあたしの必殺技は、最速の踏み込みを経て生まれ変わる。

 より速く、ただ速く。


 その成長に、いつかはブーツに頼らなくてもいい日がくるのかと考えてはみたけれど。

 すぐに答えがでなかったので、今はこの刹那に身を委ねることにした。


「どうですか?あたしの必殺技は」


「……確かに刹那と呼ぶに相応しい出来だ」


 寸止め。あたしの剣はアニキさんに当たる直前で動きを止める、いや止めた。だって……


「前に見せたあれが、『セツナドライブ』だと思われたら困ります。あたしの必殺技はスゴイんですよ」


 その証明です。付け加えて笑ってみる。

 

「なるほどな、ならもう飛び道具はやめだ」


 アニキさんもこころなしか楽しそうだ、これでようやく戦いが始まる。


「そういえば……」


 ん?なんだろう、アニキさんから無駄話とは珍しい。


「なんなんだ?『セツナドライブ』とは」


「『セツナドライブ』は『セツナドライブ』です。あたしの必殺技です」


 こんな時につまらない事を聞かないでほしい。


「君の名前は……」


「セツナです」


「酷い名前だ」


 なんてことを言うんだ!今言うことじゃない!

 それにその言い方だと、あたしの名前をバカにしてるみたいだぞ!


「そもそもなぜ自分の名前をつけたんだ?ありえない、そこがわからない。なぜ自ら知能の低いアピールをするんだ?」


「言い過ぎだよ!いい加減にして!!あたしのメンタルはボコボコだよ!!!」


 ここまで言われた事はない、言い過ぎである。

 自分は漢字ばっかりなクセに!


「アニキさんの速い拳はなんて言うんですか?」


 内心の苛立ちを悟られないように語りかける、優しく優しく。


「特に名前はない、教えてくれた人は『神速』と呼んでいたが、名前を叫ぶこと自体が無駄だ」


 そんなことはない、大事な儀式だ。それをわからせてやる。


「……えて下さい」


「なにか言ったか?」


「あたしが勝ったら『すぴーどぱんち』に変えて下さい」


「………………」


 アニキさん、唖然。


「じゃあ、そういうことで!」


 間抜けた理由だが、負けられない理由がもう一つできた。

 それじゃあ第2幕といこう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ