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前略、恐怖と信念と

「あった!ここが倉庫だね!」


 少しだけ時間がかかったけど、あたしたちは隅の方に『倉庫』と書かれた扉をみつけた。


「さすがに追っ手がきてますね。袋小路です」


 仕方ありません。リリアンは1人振り返って。


「私が追っ手を振り払いましょう、あなたは装備の奪取を」


 格好良すぎる。何から何まで、本当に頼りになるメイドだった。


「了解、やりすぎないでね?」


「えぇ、手加減しますよ」


「また地上で!」


 二手に分かれる、さぁ行こう!

 あたしはあたしで、倉庫へ突入。


「さて、あたしの剣はどこかな……」


 キョロキョロと見渡す。う〜ん木刀しかない。

 あたしは不良じゃないので分からないが、こんなに必要なものなのだろうか、木刀とは。


「おう、嬢ちゃん。久しぶりだな」


「チュウテツさん……」


 倉庫の奥に、鍛冶師のチュウテツさんがいた。まるであたしを待ち構えるように。


「ごめんね、チュウテツさん。あたし、嘘ついたよ。武器を直して欲しかったのは、戦う力が欲しかったからなんだ」


 1度謝ったけど、もう1度謝る。人の為ならまだしも、自分の為の嘘はあまり褒められたものではないだろう。


「あぁ、嘘はいけねぇよ、嘘は」


 だよね、あたしもそう思う。

 それでも必要なものだったのだ。


「なぁ嬢ちゃん。俺等はアニキの理想が正しいと信じてるんだ。それなのに、そんなにこの街が気に入らねぇか?」

 

 みんなやっぱり自分が正しいと信じて動いてる。ならばあたしも言葉を取り繕うのは失礼だろう。

 

「はい、気に入らないです」


 そして……


「アニキさんに言ってやりたいことがあるんです」


 だから……


「あたしの武器は返してもらいます。その為に必要なものだから」


 チュウテツさんの後ろにあたしの剣がある。なぜだか全ての武器が、きっと修理を頼もうとしたからだろう。

 あたしは立て掛けてある木刀を握る。

 いつものような使いこなしてる感覚はない。どうやら、木刀は片手剣のスキルでは扱えないらしい。


「仕方ねぇか……」


 チュウテツさんも渋々木刀……ではなくハンマーを取り出した。いや鎚かな?

 いやいや、それよりも……


「あれ?『テンカ』の男は、みんな木刀なんじゃないの?」


「嬢ちゃん、そんなわけないだろう」


「あの金髪!騙したな!」


 やっぱり嘘じゃん!だと思ったよ!この場にいない金髪にツッコミ。

 ぶんぶん、と木刀を振る、ギンがそこにいると仮定して。


「商売道具で戦っていいんですか!」


「戦いもトイレもハンマーを手放さないのが鍛冶師ってもんよ」


 あたしの必死の揺さぶりも効かない。仕方がない、構えよう。

 

「あれ……」

 

 構えた瞬間、悪寒が走る。どうしようもなく寒い、震える、視界も揺れて……怖い。


「なんで……」


 戦う意識を決め、構えた時。どうしようもない恐怖に襲われる。

 どうして!どうして!どうして!どうして!


 また呼吸が乱れ、構えが乱れ、歩法が、心が、乱れて乱れて……

 

「強くなったんでしょ!?なら今、頑張ってよ!」


 いくしかない、身体に喝をいれる。

 本当に、あたしはどうしてしまったのか、自分がわからないけど、逃げ出す選択肢がないのはわかる。

 明日は前にしかないんだから!


 勝負は一瞬だった。自分の信念の為に戦ってるチュウテツさんと、今頃になって怖がってるあたし。

 結果は語るまでもない、あたしはほんの一太刀も報いることができずに負けた。


「負けちゃ……だめでしょ……負けちゃ……」


 リリアンと地上で、って約束したのに……

 みんながあたしの為にしてくれた事も、また無駄にしてしまった。ごめんね……


「やっぱり、アニキは間違ってねぇ……こんな娘に武器なんて持たしちゃいけねぇよ……」


 あたしが間違っていないことは証明できないままに、意識は薄れていって……


「ん?この嬢ちゃんの剣………」


 意識を失う前にチュウテツさんはあたしの剣をみて何かを言ってたけど、その言葉を聞き取るよりも意識の消失の方が早かった。

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