第7部
大山のぶ美は命からがら帰ってきた。3人の妹を無事に保護(捕獲)して。
ようやく、5人で我が家の居間でカレーライスを食べた。
しかし妹3人はまだ元気を持て余しているようで、家の居間で、遊べ遊べときりがなかった。
のぶ美はすっかり疲れてしまい、ジュノに妹たちをなんとか疲れさせて欲しいと頼んだ。
ジュノはさっそくAI幻覚の能力を使い、妖怪ポッケモンモンのホニャロンちゃんを実体化させてリアル3D世界で妖怪ワールドを再現した。
AIキャラたちと妹たちは3時間は遊び続け、妹たちは、ようやく疲れ果てて眠りについた。
このまま、目覚めれば、我が家が妖怪城になって妖怪ポッケモンモンの住み家になっていたのは夢だと思ってくれるだろう。
大山のぶ美はジュノに言った。「この子たちが二度とあんな危険な時代に行かない様になんとかあの穴をふさいでほしいな ジュノちゃんならできる?」
ジュノが答えて「あれは自然現象だから私ではどうにもできないよ。未来の次元時空監察監査機関ケイヴにご主人様から連絡してもらってワームホールを消滅させてもらわない限りね。」
「なにそれ?」「数億年未来の、まあ治安組織ね」「へえ……数億年の未来でも犯罪ってあるんだ……」「……」
「それよりも、あそこのコンクリートの穴を自治体に連絡して塞いでもらった方がいいんじゃない?」とジュノ。
「その手があった」
大山のぶ美はすぐに市役所の市民サービス課に電話した。
「それはほんとにほんとにご連絡ありがとうございます」市役所の職員さんはていねいにお礼を言ってくれた。
即、市役所の職員がとんできて『壕空防』の穴をきれいに新しいコンクリートで塞いだ。
大山のぶ美は、妹たちが居間のあちこちで眠っているのを踏まない様に気を付けながら一人づつに毛布をかけて行った。もしだっこして移動させて目覚めさせたら元の木阿弥である。
最近、外遊びが増えて良く日に焼けた妹の顔をのぞきこみながら、大山のぶ美はそれでも言った。「妹たちにはあそこは、たのしくあそべる夢の花園だったんだね。」
「あの誰も近づかないおそろしい廃棄物のゴミ捨て場は昔はうつくしい野草の咲き誇る自然の美しい花園だったんだね。」
のぶ美は残念そうにいった「二度とあの野原はもどらないんだね」
「お望みなら、もとどおりにしようか?」
「えええええーー!!そんなことできるの?できるならおねがい」「OK」
「じゃあ、時間を止めて今から行こう」とジュノ
ジュノは時間を止めた。いきなりすべての音が止んだ。「さあ、あのゴミ捨て場へ行こう」
時間が止まってても、大山のぶ美はきちんと家に鍵をかけ、戸締りを確認すると「さあ、行こう」とジュノに言った。ふたりはすぐにつぶれたスーパーの廃墟の裏のゴミ捨て場についた。
ジュノは『きけん ここであそんではいけません 立ち入り禁止』の看板のとこでのぶ美に待っているように言って、少し前に進んだ。廃棄物置き場の中心に何か大きな半透明なドームのようなものが現れた。
ジュノの足元から、それはゴミ捨て場をぎりぎりまでの空間を包み、半円のドームの中は、なにか異様な異空間のような雰囲気になった。そしてしばらくして、ジュノが気軽に言った。「さあ、5万年たったから放射性物質は半減期×2で放射能は人体に無害になったわ」「え!ごごごごごごまんねんんん?!」
「この廃棄物場は、ほ、ほ、ほ、ほんとに放射性物質があったの?」「うん、まあ法律が整備されて禁止されるまえに使われてた時計の文字盤に塗るラジウムの塗料液とかが捨てられてたね」「げえ!!」
あの半円ドームで覆われた場所だけが5万年たったらしい。積み上げられていた捨てられた電気製品や冷蔵庫なんかももう劣化して砂になっていた。その場所をジュノは数か所を自分の指で触れてなにか調べている感じだった。少しして「黒土が十分にもどってる。じゃあ、種を蒔くね」「なんの種?」「過去のあの美しい野原の野草から取ってきた種だよ」「すごいね、信じられないほど抜け目ないねえ、見かけによらずジュノちゃんてさぁ」「あはははは、そう?」
ジュノは黒土になったゴミ捨て場だった場所に日本の野草の種を蒔いた。
水を与えて、時間のドームでまた包んだ。ほんの数秒で、目の前にはまるで魔法の様に、あの過去の世界で見た3人の妹が「きれいな公園だね」と言った自然の花園の様な美しい野原が、現れた。
それは過去で見た、あの野原と瓜二つであった。
まるで魔法の様に、潰れたスーパーの廃墟の裏に、広い自然の日本の野原がよみがえった。
ジュノは止めていた時間をもとに戻した。
大山のぶ美の耳に、あらゆる音がよみがえった。
母からのぶ美にメールが来ていた。
ーーパパの盲腸炎は化膿してなかったのでもう入院の必要はなくなりました、このまますぐパパと帰れます。あなたの担任の先生と舟木寮監さんには話してあるから、今夜は泊まってかえりなさい。
お友達もよければ。
カレーを作ってくれてると思うけど、お友達の分も含めてお弁当買って帰ります。ママより-ー
ママは、ママが大奮発したエビフライ定食のお弁当7人前とパパの大好きなバナナを大量に買い込んで、タクシーでパパを連れて帰ってきた。
大山家の家族とジュノは、ささやかな楽しい夕食タイムをみんなで過ごした。
パパの盲腸炎がたいしたことなかったことへのみんなの「パパ、よかったね」の言葉と安堵とともに、
次の日の朝早く、パパの運転する愛すべきポンコツ軽自動車で大山のぶ美とジュノはフォローレンス学園の女子寮へと帰った。