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第6部  挿絵あり

挿絵。藤堂自然13歳中学2年生 大山のぶ美12歳中学1年生

挿絵(By みてみん)



 二人は潰れたスーパーの廃墟を越してその向こうの昔の、今はもう使われていない広大な廃棄物処分場の埋め立て地へと走った。


『きけん あそんではいけません 立ち入り禁止』と黄色と黒の大きな看板があり赤い字でそう書かれていた。

 サッカー場4面位取れそうな広い土地はあらゆるゴミが捨てられていた。水たまりでは地面からボコボコと黒いガスのような気体が発生し、鼻が曲がりそうな臭気がした。

 3人の幼い女の子の姿はどこにもなかった。

 何の廃墟かわからないような建物の奥に『壕空防』と書かれたボロボロになったコンクリートの洞窟の様なものがあり、その入り口はコンクリートで塞がれていたが、雨風にさらされて劣化したため子供が通れそうなくらいの穴がぽっかり口を開けていた。そこの前のぬかるみに妹たちの靴のキャラ絵のゴム底の足跡があった。…その穴へ

 大山のぶ美は痩せていたのでギリギリ通れた。ジュノも何とか通れた。

 中はかび臭く真っ暗だった。

 二人は手探りで奥へ奥へ進んだ。目の前に光が差し込んでようやく外へ出た。

 外は……信じられないようなきれいな野原だった。

 そうして妹たち3人が遊んでいる声が聞こえてきた。

 蜘蛛の巣やあちこちひっかき傷だらけの二人は、信じられないほどすがすがしい空気を吸った。太陽はまぶしく野原はきれいな野草がいっぱい咲いていて何か別世界の様であった。

 その野原で3人の妹たちは鬼ごっこして遊んでいた。

「こらーーあんたたたち!」

「なんだ、お姉ちゃんたちか」「一緒に遊ぼうよ」「ここすごく良い公園なんだよ」

 二人は周りの景色を見回して驚いた。

 藁屋根や木造家屋ばっかりだった。

 遠くに見えるはずの港にそびえるいくつかの超高層ビルはどこにも見えなかった。


 ジュノは周りを見回して言った。「ここは過去の時間のようです」

 ジュノが言った。「自然現象におけるワープホールが開いていたようですね。銀河系の中心にある超巨大ブラックホールの重力場の影響で10の1兆乗のまた1兆乗分の1の確率で起きると予想されてます。」のぶ美「??」


 大山のぶ美は野原の美しさにぼうっとしてつぶやいた。「これは過去の世界なの?それならいつ頃? お姫さまのいる時代ならいいなぁ」

 その時、遠くの方で「ウ~~ウ~~~~ウ~~~ゥ!!」というけたたましいサイレンの様な音がまわりに響き渡った。

 大勢の人がいきなり現れて、大山のぶ美がさっき出て来たばかりの『壕空防』とかかれたトンネルに飛び込んでいった。モンペをはいたおばさんが「あなたたち、はやく一緒にお入りなさい」と強引に3人の妹たちの手をひいてコンクリートの洞窟の中へ連れ込んだ。兵隊のような恰好をしたおじさんが二人の手を引いて「はやく中へ入らないと機銃掃射で殺されるぞっ!」と叫んで二人を力ずくでひっぱった。

 と思う間もなく、空の雲の中から1機の戦闘機が低空飛行して、地面に向けて機関銃を撃つて来た。

「ぎゃあああああーーーー!!」大山のぶ美は絶叫して腰をぬかした。ジュノはすばやく大山のぶ美をかかえて洞窟の中へ入れた。

 おじさんは言った。「ここなら大丈夫だよ。敵機がいなくなるまでの辛抱だ」

 ジュノはいきなり人間とは思えない速度で外へ出た。

 いきなり、ジャンプして……100メートルは平気でジャンプした。

 そして機関銃を連射し続ける戦闘機に向かって、空中をまるで、自由にジグザクに移動し瞬時でグラマンの胴体部分を素手でなぐり破壊した。機関銃は壊れた。

 乗っているパイロットの顔が歪んだ。空中のジュノを風防ガラス越しに、恐怖の目で見た後、憎悪の形相をした。ジュノは無表情でクルリと身体を回転させ、男の顔を見た。男は19歳位の少年だった。

 ジュノは少年の憎悪の表情を無表情でスルーすると、戦闘機は一瞬で消えた。

 戦闘機は、グラマンは発進した空母の甲板上に破損した箇所も無く少年のパイロットは愛機の横に無傷で立っていた。何が起きたかわからず呆然としていた。

 ジュノは防空壕の前に立っていた。

 防空壕をめざす若い母親が赤ん坊を抱いて必死で向こうから逃げてくる様子が見えた。周りに数人の老婆や老人が必死でこちらに向かって逃げてきた。

 そのあとを追ってグラマンが機銃掃射をあびせてきた。ジュノは瞬時でその場へ行き、その人々の周りの空中に炭素ナノスクリーンを張った。鋼鉄の200倍の強度のナノスクリーンは軽く機関銃の玉をすべてはじき返した。ジュノが戦闘機を見つめるとその戦闘機も瞬時で消えた。

 その戦闘機も瞬時で発進した空母の甲板上にもどっていた。パイロットは何がおこったのか呆然とした。


 戦闘機は飛び去りしずかになった。空襲は終わったようだ。

 町のあちこちから黒い煙が立ち上っていた

 機関銃に撃たれて動かなくなった人にすがって泣き崩れる人に

 人々は温かい言葉をかけながら手慣れた様子で死体を運び去り

 町は30分後には日常を取り戻していた

 防空壕に潜んでいた人々はまるで何事も無かったかのように

 それぞれに自分の日常に戻っていった


 大山のぶ美と3人の幼い女の子達だけが、まるで異世界から来たように

 凍り付いたまま、今見た光景が信じられず動かなかった、いや動けなかった。


 ジュノはそんな大山のぶ美に声をかけた

「かえろ」



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