第37部
のぶ美は飛行機に初めて乗った。しかもとの子の横でビジネスクラス。
「藤堂君がいないよ?」「先に行ってるわ」
廻ってくる機内サービスをすべて食い尽くすのぶ美にとの子は赤くなり渋い顔。
ジュノは機内サービスの音楽に聞き入っている。
ラプランド共和国の首都プッチーニに着いた。
すぐにラビットハニーの1号店に行く。
のぶ美はトンラ君の衣装を着せられて、大食いイベントに望む。
ジュノはトンラ君の恋人のノッポッポくん役
20人のウサギの衣装を着た若い女性の吹くトランペットのファンファーレ
ラピッドハニーのマスコットキャラ トンラ君の登場に割れんばかりの大拍手
のぶ美はいつもよりハイペースでラビットハニーのふわふわの砂糖菓子を
大皿10個盛りを、たった10分で20皿完食した。 新記録!
「おおぉーー!!」「すごいなぁー!」「すげぇー!」と招待客や見物客から歓声が上がる。
満腹になったのぶ美はつぎに演技でストーリに参加して、殺陣を演じなければならない。
だいたいこのストーリがとの子の書いた話でめちゃくちゃだ
トンラ君はお花兎という種族の女の子、トンラちゃんだった 大食い女の子
あるときノッポッポくんというピエロの男の子を好きになる
でもノッポッポくんは男の子しか愛さないBLだった
女の子には興味ないのだ 悲しい恋
トンラちゃんは男装して男の子トンラ君になり、ノッポッポくんに自己紹介をする
男の子の振りをする。「ぼく トンラ君だよ♪」
ノッポッポくんもトンラ君を好きになり、トンラちゃんは男の子トンラ君としてノッポッポくんに愛される 二人はラブラブで、ピノット村で楽しく暮らす。
所があるとき、事件が起きて、そのとき、トンラ君は女の子だとノッポッポくんにバレた
ノッポッポくんは愛が覚め、トンラ君を呪う
「男の振りをしてよくも僕を騙していたな。女なんか大嫌いだ」
トンラ君は ノッポッポくんに「男子しか愛せない様になれ!」と呪いをかけた魔女ワシリーサを倒しに行く
しかし魔女ワシリーサには歯が立たず、やられて泣きながら死んでいく
というお話。
「なにこれ!? ひどい話っ!」とのぶ美
演技のストーリが進んで、魔女ワシリーサが出てきた
180センチ以上あるでかい女だが美しい魔女だ
……あ、まさか、あの魔女……藤堂君?!
トンラ君は魔女ワシリーサにやられて泣きながら死んでいく……
寸劇が終わり、フィナーレ
出場者全員が、お店の外の仮設舞台で笑顔で挨拶をする
振り袖姿の欧井戸との子が出てきて、挨拶をして締めくくる
魔女姿の藤堂君はとても綺麗だ。でかいけど……
「あちゃ~!! ジロジロ見んなよ。うぜーっ」とのぶ美に見られるのが嫌そうだ
ジュノは寸劇が楽しかったようで身体を音楽に合わせて踊って手を振っている
「ごくろうさまでしたわ。よく働いてくれましたわね。オーホホホホ」
ホテルの部屋へ帰って、ヤレヤレと寛いでいるジュノとのぶ美と藤堂に上から目線で雇用者としてとの子がねぎらった。2回の公演は終わり、ようやく、ホテルで、との子と同じテーブルで、ジュノ、藤堂君、のぶ美はラプランド共和国の取れたてのすばらしい山海の珍味を、遠慮なくご馳走になった。
のぶ美にとっては、藤堂君も横にいて、最高の天国だ。
次の日から、ラプランド共和国の観光に行く。
との子がチャーターした観光用の荷馬車に乗り、ガイドの案内をとの子が通訳してくれる
が、との子はめんどいとこははしょる。あまり宛にならない。
荷馬車を返して、徒歩で行くコースになる。
険しい岩場と深い海 美しい北欧の風景が広がる。物寂しい海がたまらない。
ひなびた村があり、そこでお茶にする。ドーナツとハーブティが美味しい。
畑で働いている、農夫の夫婦が丁寧に外国人である四人に挨拶してくる。
人情のある素朴な人懐こい人々の村である
この国は古来よりククール教という宗教でみな信心深い人々である
辺りは岩場である
村を出て少し歩いた先に捨てられた崩れた灯台があり、その先にククール教の古い教会があった。
みんなで、そこで携帯電話で写真を撮りまくっていると、いきなり空が曇り、まだ夏なのに大きな雹が降り始めた。雷が鳴り、すごい嵐になった。これはこの国の地方の、ここらの夏の気候の特徴である。
あわてて四人はククール教の古い教会の中に逃げ込んだ。
礼拝堂に人の気配はなかったが
雹の降る嵐は止まず、夕方になってますます嵐はひどくなってきた。
のぶ美は「お腹空いたなあ」と言った




