第33部
ここは藤堂の母親ととの子の母親の姉妹が所有する別荘
のある姫琴島。
ーーこの島は虹神港から水中翼船で1時間ほどの島でリゾート別荘地で透き通った海とどこまでも続く美しい砂浜で知られ有名な海水浴場もある。
この海水浴場にラビットハニーの新店ができた。
この店はーー女の子の女の子による女の子のためのスイーツのお店ーーというコンセプトで欧井戸ファンドの出店であり、社長の欧井戸壮大氏が娘のとの子に意見を聞いた企画である。
店のすべてがピンク色であり、男性には入りづらい店である。
との子はのぶ美とジュノをその店に誘った。
「良かったら、女の子の感性で意見を言ってちょうだい。テスターのつもりで辛口でよくってよ」
めずらしく上機嫌で、との子はのぶ美とジュノに声をかけたが、藤堂には声をかけない。
「きょうの午後はそれぞれ自由行動にしない?」ととの子は別荘で昼食を食べた後、言った。
藤堂とジュノとのぶ美は同意した。
そして、との子は女の子二人だけ誘うと「じゃあ、あなたは自由行動でどうぞっ」と藤堂にあっちけと言わんばかりに手で追い払う仕草をした。
藤堂も、「じゃ俺、自由行動な」と言うと、のぶ美に目配せして「社会勉強してくるわ」と言ってどっかへ行ってしまった。
姫琴島は、都会に近いリゾート地として最近、雑誌でも取り上げられ『女の子のスイーツの聖地』と地元の町が売り出していて、ブテックなんかも多く、のぶ美も一度来てみたいと思っていた町である。
三人は色々なお店を見て回り、最後に、ラビットハニーのお店に辿り着いた。
一方、藤堂君は、別荘から歩いて数分の姫琴島の海水浴場のある姫琴浜へ行った。
そこはほどほどに混んでいた。
藤堂君は櫛を取り出して、髪をセットしなおし、サングラスをかけると、この砂浜で一番カッコいいと彼が思った女の子の二人連れに声をかけた。
この二人は、姫琴浜バイコーンズと仲間内じゃ有名な男泣かせの、18歳と19歳の二人連れだった。
「へい、彼女たち、俺と付き合わねえ?」
「ちょっとめちゃイケメンじゃん、あいつ」
「イケメンというより美少年だね。採点いくらぐらいいく?」
「150点かも。美少年完全体て感じだね」
「いいね」「いいね」と二人は即、OK
「で、どこいくの?」「どこ行きたい?」「ラビットハニーのお店がいいなっ」「じゃあ、そこへ案内してくれよ」
という訳で、藤堂君が、女の子二人連れて、ラビットハニーのお店に先に来ていた。
このお店は、30分以内に大皿1皿スイーツ10個盛りで×10皿食べたら、無料というキャンペーンをやっていた。
二人の女の子は店に入ると、すごい勢いでスイーツを食べだした。
藤堂君は眼をぱちくりしていたが、自分も大皿を持って行き、めぼしいものを盛って、席に戻って食べてみると、これが美味しい。
大いに気に入り、初めてのナンパ師だったことも忘れ、ただの13歳のガキの胃袋で、カッコつけるのも忘れて中坊に戻り、ものすごい勢いで食べだした。
女の子も、眼をパチクリ「ようし、大食いデスマッチといく?」「のぞむむところよ!」
三人の食べっぷりがあまりに物凄く、周りに人だかりができた。
そこへ、との子がやってきた。
サングラスをかけてるのが藤堂だとすぐ気づいたが、知らんぷり。
のぶ美が気づかないように離れた席に、二人を座らせて、この店のシステムを説明し、自分のおごりだから、好きなだけ食べて、後で意見を聞かせてね、とのぶ美に言った。
ジュノはもちろん藤堂に気づいている。
三人娘は大皿をそれぞれ取ると
のぶ美は物凄い勢いで食べだした。ついさっき、との子の作った素麺を大きなガラス鉢に山盛り三杯完食したのに……
のぶ美たちの周りにも人だかりができた。
猛烈な食いっぷり。
ジュノも真似できない。
との子も眼を見張る。
「これは宣伝効果抜群ね」ととの子は言った。
のぶ美は30分で大皿を20皿完食した。
「げっぷ」
との子はのぶ美の食いっぷりに上機嫌。
20代後半の美人女性店長が、との子に気づき、急いで挨拶に駆け付けた。
「お嬢様が今日、直接お越し下さるとは思いませんでした。有難うございます」と深々と頭を下げる。
むこうで少し、騒ぎが持ち上がっていた。
三人とも、30分で大皿の10皿を完食できなかったのだ。それでお勘定をとなったが、なんと藤堂君は所持金0円。
おととい、ついゲーセンでクレーンゲームに熱くなり、小遣い使い切り0円まですったのを忘れていた藤堂君であった。
「無銭飲食で警察に通報しますよ」とおどす女の子の定員たちに、生徒手帳を取り上げられた。
姫琴バイコーンズは、「自分たちで払うわ」「ほんと、さいてー男ね。何が17歳よ。生徒手帳見たら中学生の13歳じゃない。馬鹿にすんじゃねえよっ。中坊の分際で、あたしらを舐めんなよっ」と散々怒って、女の子二人組は店から出ていった。
藤堂君は無銭飲食で通報されかけたが、藤堂君本人が目ざとく、他人の振りをしている欧井戸との子に気づき、「あいつ俺のいとこだよ」と暴露され、との子は、顔から火の出る思いをする羽目になった。
満腹の大山のぶ美が藤堂君に気づくことは無かった。
そして、そのあと、少女3人と少年1人は別々に別荘に帰った。
その夜は、みんなで海岸で花火をして遊んだ。
打ち上げ花火は大いに夏の気分を持りあげた。
との子が藤堂に聞いた「あなたのぶ美のどこが気に入ったの?」
俺様な藤堂君がのぶ美を見ながら、笑顔で言った
「チャウチャウやパグが可愛いからのぶ美も可愛い」
「はぁ、そういうククリなわけ」ととの子
ーー言葉の意味はよくわからんがとにかくすごい破格の可愛がられ方だ♪ーー
ーーこれでいいのか? のぶ美? ジュノ?--