第2部 挿絵あり
挿絵は藤堂と村上
月曜日の5,6時限目は美術の時間だった。
校庭で風景や建物の写生となった。
大山のぶ美はジュノや他の友人たちと、被写体を探してワイワイ校舎の中を移動していた。
みんな、それぞれに被写体を決めていき、最後に大山のぶ美とジュノだけになった。
のぶ美はジュノに言った。
「ん~~~こんないい天気なのに、ちんたら写生してるなんてさいてー」
「うふふふ。どうしたいの?」
「パパっと写生を終わらせて残り時間は、スポーツ万能でしかも超イケメンの藤堂君の体育の授業を見学したいなぁ」
「藤堂君? それは誰?」
のぶ美の視線の先には、中学二年生ですでに180センチ越えの日に焼けた細マッチョの美少年が野太い声を掛け合って汗を輝かして走っていた。
のぶ美は照れながら「ほら、2年生の男子部は5,6時限目ぶちぬきのサッカー対抗戦やってるのよ」
男子部の方の校庭では男子生徒の大きな歓声が上がっている。
大山のぶ美はさっきからチラチラとそちらの方ばかり気になるようだ。
サッカーの2年生のクラス対抗戦が開かれている。
ジュノが言った。「いいよ、願いを叶えてあげるわ。でも被写体は決めないとね」
「ああ、じゃあ、てきとーにそこの飼育小屋のある花壇にする」
「OK,じゃあ、時間を止めよう」
「……?!……」
いきなり、時間が止まったようだ。
大山のぶ美とジュノの周りのすべてがピクリとも動かなくなった。
「これで写生済ませましょう」「とんでもないことするなぁ」
二人はちゃちゃっと鉛筆で写生していざ、色を塗ろうとしたら、大山のぶ美は絵の具を忘れていた。
ジュノがしかたないなぁという顔をして、自分の絵具箱を貸してくれた。
実際、ジュノが来てから、忘れん坊女大将だった大山のぶ美は、忘れたものを全部ジュノに借りれるので、それだけでも数億年の未来からジュノが来てくれた価値はあるな、と思った。
大山のぶ美の席の隣のジュノはいつも苦笑している。
大山のぶ美は十分に時間をかけて自分の写生の作品を仕上げた。絵具の彩色もおわり、やれやれと顔をあげた。ジュノはさっさと数分で終わらせていた。
作品を提出場所である美術室の中央にある教卓の上に置くと、ジュノが言った。
「時間を戻すわね」「OK」
瞬間、周りのあらゆるものが再び動き始めた。
大山のぶ美はそのまま、運動場へ行き、男子部との境界のフェンスに顔を押し付け、生唾飲みながら、あこがれの藤堂君の、さわやかなプレーを5,6時限目ぞんぶんに見学したのだった。
校則でフェンス側へ向かって声を上げてはいけないので、男子部で怒涛の歓声があがっても「きゃーー」と叫びたい気持ちを必死でこらえる大山のぶ美であった。
その日、放課後のぶ美は、ジュノに付いて来てもらい、男子部二年の下駄箱置き場に侵入すると憧れの藤堂自然君宛に18通目のラブレターを入れようとしたが、靴ロッカーの扉を開けるなり、どささささと無理やり詰め込まれている女子のラブレターが雪崩を起こしてのぶ美は膝まで埋まってしまった。
それでも、ジュノの協力で、なんとか自分のラブレター含め、藤堂君の下駄箱に押し込んだ大山のぶ美である。
「なんでも戻すの? 他のラブレターは捨てればいいのに?」とジュノ
ーーそんなことしたら、入れた他の女子から袋叩きになるよっ!--
ーーふうん……そういうもんなの?--
ーーそうなのっ! お互いの淑女道よっーー